ヘディングの達人、秋田豊が戦慄を覚えた「5大エアバトラー」は誰だ!?

ヘディングの達人、秋田豊が戦慄を覚えた「5大エアバトラー」は誰だ!?


 元日本代表の秋田豊と訊けば、サッカーファンはどんなイメージを抱くだろうか。
 
 鹿島アントラーズで栄華を極め、キャリアの終盤は名古屋グランパス、京都サンガでプレー。日本代表としてはあの「ジョホールバルの歓喜」のピッチに立ち、2度のワールドカップ出場を果たした。日本サッカーの歴史にその名を残す守備者の代名詞は、やはりヘディングだろう。現役時代に何度もJリーグや代表ゲームで取材したが、ほとんど打ち負かされたシーンを見たことがない。

 
 そんなレジェンドが、渾身のDVDを完成させた。タイトルはずばり、『実践ヘディング 上達メソッド』。日本初となるヘディングに特化したトレーニングDVDで、対象はなんと小学校低学年からプロ選手まで。あらゆるカテゴリーのフットボーラーに向けて“名手”が極意を伝授してくれるのだ。相変わらず屈強なボディーを維持する男は、「現在の日本サッカーの一番の弱点はヘディング。ワールドカップでも親善試合でもクロスからの失点が多く、クロスからの得点が少ないと感じています。だからこのDVDを作ったんです」と、想いを明かしてくれた。
 
 となるとぜひ訊きたいのが、秋田豊にとっての「空のライバルたち」だ。Jリーグや国際試合で筋金入りのエアバトラーと対峙してきた。はたして無敵を誇った支配者が圧倒されたストライカー、あるいは戦慄を覚えたターゲットマンはいたのか──。
 
 開口一番、飛び出した名前が「アリ・ダエイ」だった。「本当にきつかった」と苦笑しながら、こう言葉を続ける。
 
「いちばんはあの圧倒的な高さ。ただでさえ190センチちょっとくらいあるのに、加えてジャンプ力が凄いときている。で、身体も強いもんだから、普通に真っ向からヘディングの勝負をしたらそうとうに厳しかった」
 
 こちらは180センチ。だから、知恵を働かせた。「ダエイのジャンプ力を利用して、身体の上に乗っかってヘディングをしてる感じ」と、跳躍のタイミングや身体の巧みな使い方でフィジカルの差をカバーしたのだ。好きにはさせなかったが、イラン代表と雌雄を決したジョホールバルでは逆転ヘッドをねじ込まれた。マーカーは秋田だった。
 
「ああやって斜めうしろから来られると、どうしても届きにくい。DVDの中でも説明しているんですけど、競り合いにおけるポイント。いまの日本代表の弱点でもあります」
 
 
 次に挙げたのが、セレッソ大阪や柏レイソルでもプレーした韓国代表の大砲、ファン・ソンホン(黄善洪)だ。
 
「ファン・ソンホンはとにかく“外す”のが抜群に巧かった。駆け引きのところですね。消える動きとか、瞬間的にさっと出てくる動きが冴えていました。サイズ(183センチ)は大きいほうだったけどすごく俊敏で、韓国の選手はああいうところの駆け引きが本当に巧い。セレッソの時にけっこうやられたなってイメージが強いですね。競り合いでは負けてなかったんだけど、ここぞの局面での勝負強さが流石でした」
 
 秋田より3つ歳上の高木琢也(現V・ファーレン長崎監督)も手強かったという。
 
「もうフィジカルが圧倒的で、身体自体がすごく強い。常にプレーエリアを確保されていた印象ですね。自分の空間をしっかり持っていて、それを活用されていた。対峙した日本人選手の中では、ヘディングが一番強かったんじゃないですかね」
 
 同じく日本代表で僚友だった“ゴン”中山雅史には、違った意味で怖さを感じていたようだ。
 
「ゴンさんはご存知の通り、倒れても倒れてもまた立ち上がってくる。不屈の魂というか、そこで絶対に折れないんですよ。で、最終的には1点取るという。ディフェンダーとして、あれは堪えるものなんです。アントラーズとジュビロで覇権を争っていた時期がいちばん凄かったけど、本当に掴みどころがなかったですね」
 
 そして最後に挙げたのがかなり意外な外国籍FWだった。1995、96年の2シーズンだけガンバ大阪に所属していたオランダ代表のアタッカー、ハンス・ヒルハウスである。身長は175センチとさほど上背があるわけではなく、肉弾戦で強みを発揮するタイプでもない。だが秋田の言葉を借りれば、ああいった“バネ男”がもっとも厄介なのだという。
 
「もうね、本当に対戦するのが嫌だった(笑)。ああいうバネが凄い選手の対応ってのが実はいちばん難しくて、僕がダエイと戦った時に彼のパワーを利用したように、ヒルハウスは上手くタイミングを合わせて乗っかってくるんですよ。それこそ凄い瞬発力とバネでね。結果的に競らせてもらえないというか、届かない。そこのセンスは抜群でした。意外? いやいやいや、知るひとぞ知るストライカーですよ」
 5大エアバトラーとは別に、今後に期待を寄せている次代の名手をひとり挙げてもらった。秋田が指名したのは鹿島の後輩であり、ロシア・ワールドカップでの日本代表メンバー入りを狙う植田直通だ。
 
「もともとの持ってるポテンシャルがすごく高いんです。絶対的な高さと身体能力があって、フィジカルも強い。そこはほかの日本人選手にはなかなかないもので、世界でも通用するところかなと思っています。セットプレーから点を取れるようにもなってきたし、面白くなってきました。今後の成長がとても楽しみですね」
 
 現在の秋田はサッカー解説の仕事に従事しながら、みずから会社を立ち上げ、フィジカルトレーニングの普及活動を展開中。とりわけヘディングの伝道師として、後進の指導にも精力的だ。高校や大学チームなどさまざまなアマチュアチームで臨時コーチを務め、昨年は流経大柏高校の選手たちに極意を授けて、夏のインターハイ制覇に小さくない貢献を果たした。
 
 近い将来、ヘディングのすべてを知る男の薫陶を受け、世界に通じる「和製エアバトラー」が誕生するかもしれない。

取材・文●川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

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