【セルジオ越後】平成の日本サッカーには大きな欠陥があったのではないか

【セルジオ越後】平成の日本サッカーには大きな欠陥があったのではないか


 年号が変わる前に平成の出来事を振り返ると、日本サッカーは良かったと言い切れないね。

 歴史を遡る上でまず触れておきたいのは、Jリーグ発足の功労者だ。前身の日本サッカーリーグからプロ化へ尽力した中心人物は、森(健兒)さんと木之本(興三)さん。すでに韓国が1983年にプロリーグを創設し、1986年に2度目のワールドカップ出場で結果を残していた見本もあって、「このままではワールドカップに出られない」という危機感でJリーグ創設に奔走してくれた。こうしてJリーグがあるのも、必死になって活動してくれたふたりのおかげだ。心から感謝したい。

 採算をとれるか懸念もあったなか、読売クラブや日産自動車などはプロ化に積極的だった。2チームの存在もあって、なんとか1993年にJリーグが開幕。この頃の勢いは凄かったと、素直に認めたい。

 Jリーグが始まり、当時はまだバブル景気だった影響もあって、開幕の演出も豪華だったね。選手の年俸も高額で、民放も全試合を中継してチケットもほとんどのゲームで完売。アントラーズがブラジルのジーコ、ジェフがドイツのリトバルスキーといった世界的なスターを獲得した。おかげで海外からも注目され、スポーツはアマチュアばかりだった日本で、Jリーグが革命を起こしたと言ってもいい。

 プロ化で競争力が上がって日本代表の強化につながり、しっかり結果もついてきた。ワールドカップは1994年アメリカ大会の出場を逃したけど、1998年のフランス大会以降は継続して出場権を獲得している。2002年には韓国との共催でワールドカップの招致に成功し、サッカー人気も加速したね。フランス大会から本大会の出場国数が24から32に増えたおかげもあるけど、Jリーグ発足の目的であるワールドカップ出場は達成された。

 サッカー人気が高まった相乗効果で、Jリーグも成長した。初期の10チームから、今ではJ1からJ3までカテゴリーが設けられ、全国各地に55クラブができた。着実に日本サッカーは発展した。でも、本当に評価していいのだろうか。
 
 なぜなら、日本サッカーはいまだに企業に支えられたスポーツだと思うからだ。Jリーグ開幕からほどなくしてバブル景気が崩壊し、経済不況は徐々にサッカー界にも影響が及んだ。

 象徴的なクラブがヴェルディだ。1993年にJリーグ初代チャンピオンに輝き、翌年もリーグ連覇。カズやラモスを中心に黄金期を謳歌したチームは、本当に強かった。ただ、1998年に読売グループが経営から撤退し、経費削減のためにカズなどを放出すると、チームの成績も伸び悩んだ。2008年のJ2降格以降は、J1に戻れていない。

 また、フリューゲルスは、出資会社の佐藤工業が本業の経営不振によりチーム運営から退き、横浜マリノスと合併している。事実上、クラブは消滅してしまった。

 平成が終わる前には、昔なら鹿島のジーコに匹敵する大物、イニエスタが神戸に加入した。おかげで、観客動員数は増えているようだけど、親会社が楽天だからこそ海外スター獲得が実現できただけだろう。

 企業に支えられたおかげであって、日本人選手の活躍でサッカー人気が上がったと思えないんだ。下の世代から継続してスターが生まれてこないし、海外組も所属クラブで出番を得られていない選手が多い。ここ最近で言えば、ドイツにいる宇佐美や浅野は伸び悩んでいる印象だ。一方で高校サッカーで好パフォーマンスを見せたヒーローも、Jリーグですぐに活躍できる選手は数える程度しか出てこなくなった。結局、今でも騒がれるのは、52歳のカズが先発したという話題ばかり。たしかに偉大な選手ではあるけど、いつまでもベテランが目立つようではダメだよ。
 
 若手不作の影響は今の日本代表にも及んでいる。ロシア・ワールドカップではベスト16だけど、アジアカップで準優勝に終わった現実を受け止めないといけない。日本はアジアでも勝てなくなってきているんだ。

 スター不在で日本代表の結果も出なければ、当然ながらサッカー人気も低下する。ワールドカップを自国開催した2002年のピーク時と比べれば、テレビの視聴率も落ちたよね。民放やスカパーでの中継が格段に減り、ダ・ゾーン中心の放送形態になった変化からも、サッカー人気が低下したことがよく分かる。
 
 そうなった原因は、企業によってJリーグの興行的価値ばかりが重視されていたからだ。初期の頃は表面上では華やかに見えたけど、例えば若手育成などに力を入れていたのか。そのツケは平成の終わり頃に回ってきて、今は日本人スターが不足している。イニエスタやF・トーレスなどが日本に来たけど、同じ轍を踏んではいけない。過去の反省を次につなげたいね。
 新元号の令和では、サッカー人気が他のスポーツに負けてほしくない。

 もしかしたら、敵になるのはeスポーツ(コンピュータゲームをスポーツの競技として捉える際の名称/ウイニングイレブンなど)かもね。昔のJリーグと同じくらいの人気があるし、夢はJリーガーじゃなくてプログラマーと言う子どもも多い。他には卓球がテレビで生中継されているし、フィギュアスケートの羽生結弦が結果を残してメディアでスターのように扱われている。今は個人競技の勢いが凄いんだ。

 そういう面では東京五輪で、サッカーが他の競技と比べてどれくらい集客できるか注目だ。他のスポーツより劣るようなことは避けたい。そのためには、減少傾向になりつつある少年サッカーの競技人口を増やすことに力を注いでほしい。
 
 鍵となるのは、Jリーグの理念にある「地域密着」。選手たちが所属クラブのある地域の子どもたちと触れ合い、サッカーの普及に尽力するホームタウン活動が行なわれているね。すごく良い活動だと思う。そうしてサッカーをプレーする、もしくはスタジアムに足を運ぶ子どもが増えていけば、理想的だ。

 正直に言えば、昔は「地域密着」ではなかった。もし、上手く推進していれば、人口が多い大きな町を本拠地にするチームは、クラブ規模が大きくなっているはず。でも、結果的には、札幌のコンサドーレ、仙台のベガルタ、福岡のアビスパなどは、田舎の鹿島にあるアントラーズより、クラブ規模が小さい。

 なんとしてでもプロ化させる意地でJリーグが始まり、クラブ数は10から55にまで増えた。しかし、ベースができあがっているように見えるけど、若手が育っていない現実を受け止めるべきだ。まだまだ土台が安定していると勘違いしてはいけない。

 創世記のJリーグは企業の資金で発展した側面があるけど、ホームタウン活動のような地道な努力はきっと未来につながるはずだ。これからも頑張ってもらいたいね。


関連記事

SOCCER DIGEST Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る 動画一覧を見る

記事検索