大敗に涙、長時間ミーティングで激論も…冬の選手権へ市立船橋に強さは甦るか?

大敗に涙、長時間ミーティングで激論も…冬の選手権へ市立船橋に強さは甦るか?


 夏を終え、高校サッカーもシーズンの終盤に差し掛かってきた。10月の第2週でプレミアリーグが中断されると、一気に“冬の選手権”モードに突入する。

 10月下旬から地区予選決勝が各地で開催されるなかで、今年も注目は千葉だろう。昨年度まで2年連続で全国準優勝を果たしている流経大柏、3年ぶりに冬の全国切符を狙う市立船橋に加え、この二強を撃破して夏のインターハイに出場した日体大柏も虎視眈々と出場権を狙っている。まさに群雄割拠。どこが制しても不思議ではない。

 各チームが憧れの舞台を目指すなかで復権を期す市立船橋が、最後の冬に向けて準備を進めている。

 今季、市立船橋はチームの転換期を迎えた。朝岡隆蔵前監督(現ジェフ千葉U−18監督)が昨季をもって退任。波多秀吾監督の下で新たなスタートを切った。

 選手権1度、インターハイを3度制した前任者の下でコーチを務めていた新参の将が、どのような采配を見せるのか。攻撃を牽引するプロ注目の鈴木唯人(3年)と賀澤陽友(3年)、ボランチのキャプテン・町田雄亮(3年)、湘南入団内定でU-17代表の畑大雅(3年)やU-18代表の植松建斗(3年)の両SBといったタレントたちがいかなる戦いを見せるのか。注目を集める中で、“千葉の雄”は序盤から苦しんだ。

「先に点が取れていればとか、失点していなければとかが多い。本当にギリギリの勝負どころで勝ち切れない。勝負の分かれ目で、簡単にいかせてもらえなかった」(波多監督)

 朝岡前監督から受け継いだ戦う姿勢や球際の攻防で競り負けないスタイルをベースにするも、精神的に未熟な選手が多く、イージーなミスから“らしくない失点”を喫する場面が散見。また、春先から主軸を揃えられなかった点もマイナスに働いた。

 鈴木は代表活動でチームを留守にする機会が多く、町田は春先に負った怪我でリーグ戦の出場は3試合のみ。大黒柱の不在が大きく響き、プレミアリーグでは下位に低迷した。そして、迎えた6月のインターハイ予選。準決勝で日体大柏に0−1で敗れ、9年ぶりに夏の全国行きを逃してしまった。

 試合後には長時間のミーティングを行ない、球際で戦えずに安易な失点を喫した自分たちの戦い方を猛省。7月中旬の堺遠征、8月上旬の金沢遠征では課題と向き合った。そして、同中旬に行なった毎年恒例の福島合宿ではフィジカルトレーニングで追い込み、一から心身を鍛え上げた。

 効果は徐々に現われる。プレミアリーグ再開後は得点力不足で勝ち切れなかったものの、課題だった守備陣がタフな守りを披露。2試合で1失点と堅守を見せ、本来の姿を取り戻しつつあった。しかし……。
 
 だが、9月15日のプレミアリーグEAST13節の柏レイソルU-18戦。市立船橋は、1-4でまさかの大敗を喫してしまったのだ。

 内容は悪くなかった。「入りは悪くなく、前半は思った通りにいかないところもあったけど適応できていた」(植松)。序盤から戦う姿勢を前面に押し出し、鋭いショートカウンターで好機を演出。0−0で折り返し、後半に期待が持てる戦いぶりだった。しかし、チームは一瞬の隙から55分にPKで先制点を献上。一気にトーンダウンすると、57分にこぼれ球を寄せ切れずに柏の中島舜(2年)に強烈なミドルシュートを叩き込まれた。

 連続失点後に1点を返したものの、一度失ったリズムは簡単には取り返せない。気持ちが切れ、さらに2失点。またしても市立船橋は後半戦初勝利を掴めず、リーグ戦の順位も最下位となった。

 試合後、チームには重苦しい雰囲気が漂った。ボランチの佐久間賢飛とCBの主軸を務める石田侑資の2年生コンビが号泣し、リーグ戦後では異例となる1時間半のミーティングがグラウンド上で行なわれた。

 様々な意見が飛び交った中で、多く聞かれたのが声の部分だったという。今年は冒頭でも触れた通り、主軸不在の試合が多い。この柏戦で町田が約3か月ぶりにベンチ入りを果たしたものの、ピッチ上でリーダーシップを取れる上級生はいなかった。柏戦でもっとも声を出していたのは2年生の石田。最後まで下を向かずに先輩に対しても臆さずに檄を飛ばした。

 現状とどう向き合うのか。何度も訪れる危機に、3年生たちは危機感を抱いている。

「キャプテンの町田がいない中で、日頃から石田がやってくれている。助けられている部分も正直あって、あれを越えないといけない。あいつの頑張りに応えないといけないし、それを超えてやることがあるべき姿。守備陣で石田だけが孤立している状況を作っているので、問題が多いと思いました」(植松)

「何回も負けた後にこうなって、これだけ(ミーティングが)長くなったことはなかったけど、この負けを良い形にしていかないといけない。そこの意識を切らさずに自分が強く言う立場になってやらないといけない」(鈴木)

 選手権予選まで約3か月。今年はU-17ワールドカップに畑が出場する可能性があるため、変則的な日程で準決勝からの登場となった。いきなり強豪校と戦うのは難しいし、3年間選手権から遠ざかっているプレッシャーもある。そうした状況でいかに3年生がチームをまとめられるか。次節から町田が戻ってくるなど、明るい材料もある。

 同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。この苦しみの時期が大きな“ジャンプ”への“ホップ、ステップ”と捉えるのであれば、残された時間で十分に変われるはずだ。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)


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