マドリー出身のストライカーはなぜ活躍できるのか?【小宮良之の日本サッカー兵法書】

マドリー出身のストライカーはなぜ活躍できるのか?【小宮良之の日本サッカー兵法書】


 ストライカーは育てられない。素養を鍛えることはできても、才能を植え付けることや発生させることはできないものだ。

 しかしながら、「生まれる気風」というのはある。

 世界王者レアル・マドリーの下部組織は、多くのストライカーを生み出してきた。まずは、才能を見破るスカウティングが優れているのだろう。技術、戦術、体力的なものだけでなく、パーソナリティーも含め、生来的なストライカーの資質を見抜ける。

 そしてなにより、ストライカーをはぐくむ土壌がある。自らの得点でチームを勝たせる、そこが徹底されている。重圧の中でも得点する逞しさを身につけるのだ。

 過去、マドリーの気風を味方にしたストライカーとしては、エミリオ・ブトラゲーニョ、ラウール・ゴンサレスの二人が代表格か。どちらも、スペインを象徴するストライカーとして長く活躍。マドリーのストライカーの系譜をつないできた。

 そもそも、王者マドリーで定位置をつかむのは、生来的ストライカーでも容易ではない。
 例えば、マドリーで育ったドミニカ共和国代表FWマリアーノ・ディアスは一昨シーズン、リーグ・アンのリヨンに移籍して得点ランクはネイマールに次ぐ5位(18点)だった。そこで2018-19シーズン、買い戻されたわけだが、復帰したマドリーではたった2得点。ほとんど出場機会が与えられていない。

 同じく昨シーズン、ラージョ・バジェカーノに貸し出されたラウール・デ・トマスも、14得点でランキング9位と実力を顕示した。しかし24歳と若く有望にもかかわらず、復帰は果たせなかった。ポルトガルの強豪ベンフィカに、移籍金2000万ユーロ(約25億円)で売却されてしまったのである。

 彼らのほかにも、多くのマドリー下部組織出身ストライカーが、他クラブでゴールを量産している。マドリーで育った若手FWは、いずれ劣らぬ実力者ばかりで引く手あまただ。

 ロドリゴ(バレンシア)、アルバロ・モラタ(アトレティコ・マドリー)の二人のストライカーは筆頭格だろうか。ロベルト・ソルダード(グラナダ)、へセ・ロドリゲス(ベティス)もスペイン代表として過去に欧州のビッグクラブでプレーし、ボルハ・マジョラル(レバンテ)、ルーベン・ソブリーノ(バレンシア)もリーガ1部のクラブに所属し、飛躍が期待されている。

 はたして、どのクラブがこれだけのゴールゲッターを生み出せるだろうか?

「マドリーで薫陶を受けたストライカーは、どこでも生きていける。それだけの矜持を身につけられるからね。あそこで生き残るだけでも、簡単ではなかった。だから、いつもマドリーの一員だった誇りは持っているよ」

 エスパニョールでスペイン代表にまでなったFWルイス・ガルシアはそう洩らしていた。マドリーの下部組織出身で、トップでは活躍できなかったものの、居場所を勝ち取った。

 強い伝統の中で揉まれたストライカーは精強だ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。
 


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