鹿島内定の尚志高エースが刺激を受けた上田綺世からの一言。福島の雄は今冬こそ4強の壁を乗り越えられるか?

鹿島内定の尚志高エースが刺激を受けた上田綺世からの一言。福島の雄は今冬こそ4強の壁を乗り越えられるか?


 昨冬の選手権ではベスト4入りを果たした尚志。PK負けを喫した準決勝では優勝した青森山田と激闘を繰り広げ、大きなインパクトを残した。とりわけ、染野唯月(3年・鹿島入団内定)は全国王者相手にハットトリックを達成。その名を轟かせたのは記憶に新しい。


 誰もが認める昨年度の躍進。今季は8年ぶりに2種年代最高峰のプレミアリーグに参戦し、さらなる飛躍が期待されていたのは言うまでもない。現在、Jリーグの育成組織や高体連の強豪が集まるEASTでは苦戦を強いられ、4勝3分7敗の8位。だが、6位のジュビロ磐田U-18とは同勝点で、5位の流経大柏とも5ポイントしか離れていない。残留の権利を勝ち取るポジションに立っているだけなく、上位に食い込む可能性も残している。また、高体連の戦いに目を移しても、今夏のインターハイでは準決勝まで勝ち上がった。着実に結果を積み上げており、高体連の中でも有数の力を持っているのは間違いない。
 
 そこで気になるのは、悲願の選手権初優勝に向けたチームの現在地だろう。10月中旬から地区予選がスタートする。コンディションはどうなのか。夏のインターハイ以降にどのような道を歩んできたのか。9月22日のプレミアリーグ・14節では市立船橋に0−3で敗れたものの、現状は悪くない。とりわけ、明るい材料はコンディションが整っていなかった染野の復活だろう。

 鹿島入りが内定している世代屈指のストライカーは、インターハイ前に負った左膝負傷の影響で夏の全国舞台は不完全燃焼。1回戦はベンチから戦況を見守り、2回戦から準々決勝までは後半からの登場となった。満を持して準決勝の富山一戦ではスタートからピッチに立ったが、手負いのエースはチームを勝利に導けず終戦。昨冬と同様にベスト4で終わり、染野自身も無得点で大会を去った。

「怪我もあって、インターハイでは無得点。1点も取れなかった悔しさがあったし、自分が万全な状態でも調子が悪くても、もっとゲーム中にコントロールができたと思うので、自分がどうであれ、もっとやれていれば全国制覇できていた」
 
 悔しさを抱えながら、以降は治療に励んで回復。「インターハイが終わってからスタメンに戻って、だんだんフル出場できるようになってきた。その過程はうまく調整できた。怪我もありますけど、チームのために今後もうまくやっていきたい」と、本人も手応えを感じている。市立船橋戦では接触プレーで同じ箇所を痛めたため、大事を取って途中交代となったのは気掛かりだが、状態は上がってきた。実際に前節の鹿島アントラーズユース戦ではチームを勝利に導く2ゴールを奪取。身体のキレも上がり、ゴールへの欲も以前よりも増した。その背景には8月中旬に鹿島の練習に参加し、上田綺世から刺激を受けた点が大きい。

「昨年の選手権で自分が準決勝でハットトリックをしたけど、負けてしまった。その場面について話をして、『あそこで自分が4点取れていれば勝てた』と言われたんです。実際にその通りだなと思ったし、自分が4点取れていれば、尚志が勝てていたと思うのでそこが自分と違う」

 一足早くJの舞台で活躍する点取り屋の言葉は染野の心をくすぐった。

「アントラーズの練習に参加した時も、綺世君が点を取っているのを見て、もっと自分も取らないといけないというのを感じた。そこは競争の世界なので、自分ももっとアピールしないといけない。それは尚志でも変わらないので、心掛けています」

 いかにチームを勝たせられるか――。上田の貪欲な姿勢は染野を一回り逞しくさせた。
 
 また、染野という選手の影響力は単純にピッチ上だけにとどまらない。あとに続く、下級生の成長に繋がっているからだ。その代表格が2年生FWの阿部要門。185センチの体躯を生かしたボールキープとパンチの効いたシュートが持ち味の有望株は、今夏のインターハイを通じて急成長を遂げた。6試合で3得点を奪い、一気にレギュラー争いに食い込むだけではなく、今ではJクラブの練習に参加するまでになった。そうした活躍は染野なくして語れない。普段のトレーニングから学び、エースの怪我で巡ってきた出番を確実に生かしたからだ。

「唯月君はすべてにおいて違う。身体も強いし、ゴールに対する意欲やシュートセンス、決定力もあって、ヘディングも打点が高い。参考にしないといけないし、身近にいることが自分の成長に大きくつながっている。自分はたまにしかできていないけど、唯月君は相手をブロックして前に入られないようにして懐で収める。そこは参考にしている」(阿部)
 
 右肩上がりで成長を続ける阿部に対し、仲村浩二監督も太鼓判を押す。

「前は機械みたいに動いていたけど、今はしっかりとボールが止まる。普段から彼は染野を見ていて、真似をしている。シュートに関しても横から来たボールにすごく良いものを打てるようになったし、ヘディングの入り方や飛び込み方も染野を参考にして、入っていけるようになった。ちょっと楽しみな2年生ですよね」

 まさに怪我の功名だ。エースの負傷がプラスに働き、前線は充実の一途を辿る。他のポジションに目を移しても、ボランチと最終ラインを兼務する渡邉光陽(2年)、左利きの長身CB中川路功多(3年)、決定力のある10番で主将の山内大空(3年)など脇を固めるタレントにも事欠かない。チームは夏と比較してもスケールアップを果たしつつある。

「(チームは)成長していると思います。元々は下手で人間的にも未熟だったけど、今はみんな頑張っている」とは仲村監督の言葉だ。役者が揃った尚志。昨冬の忘れ物を取りに行く準備は整っている。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)


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