先のU-23アジア選手権はグループリーグ敗退に終わり、U-23日本代表もファンも大きな失望を味わった。まさに日本サッカー界を意気消沈させる結果で、半年後に控えた東京五輪への楽観的なムードはどこかへ消え去り、チームは新たな戦力の発掘など、狙っていた収穫も得られなかった。

 当然、ファンからもメディアからも森保一監督の資質を問う声が上がっている。はたして現体制のままで競争力を高められるのかと。一方で、選手たちはどこかモチベーションを見失っているように感じられた。実際のところ彼ら候補選手たちは五輪本番のピッチに立ちたいと切望はしているだろうが、そこに向けた気概はあまり伝わってこなかった。そもそもチームとして機能していないのだから、それも難しかったか。指揮官が負うべき責である。

 チーム作りにおいては長期的視野に立って考察するのが肝要だが、同時に結果を得るのも不可欠な要素だ。森保監督は2019年の上半期で期待を抱かせるに十分な戦績を誇ったが、いまや彼の職務はボーダーラインのぎりぎりのところに差し掛かっている。この半年間、短期的なゴールをひとつも決められていないからだ。

 では、森保監督は日本代表チームそのものから去るべきか。あるいは五輪代表チームだけ他の指揮官に任せて、フル代表の指揮は継続すべきか。わたしは、五輪終了まではどちらのチームの指揮も担うべきだと考える。かならずしもポジティブな理由ではなく、条件付きで、なのだが。

 五輪本番に向けて、ベストチームを形成するうえで選手選考はきわめて重要なタスクであり、最大の焦点が当てられなければならない。もはやタイで我々が目撃したような「実験の失敗」などしている余裕はないし、必要もない。

 
 絶対的に欠落しているのは、確固たるダイレクションだ。かつてフィリップ・トルシエがフル代表と五輪代表の監督を兼務していたとき、彼は同じフォーメーションと戦術を選手たちに叩き込み、どんな批判を受けようがそれを徹底させた。両チームを行き来する選手たちが多かったが、彼らはその統一ルールのもとでスムーズにプレーしていただろう。2000年のシドニー五輪を戦ったチームは、2002年の日韓ワールドカップを戦ったチームの基盤となったのである。

 ひるがえって森保ジャパンの場合はどうか。フォーメーションはふたつのチームで異なり、コロコロと変わる。しかも五輪本大会を6か月後に控えたタイミングで、数多くの選手をその状況下でテストしている。これではチームの骨格は一向に固まらない。明らかに是正すべきポイントだ。
 昨年夏のトゥーロン国際大会で日本はイングランド、チリ、メキシコを破り、決勝のブラジル戦も負けはしたが、PK戦での敗北だった。先ごろタイで戦ったチームはあのフランスでの成功からなにを学び、継承し、チーム力の向上につなげたのか。まるで別のチームのようだった。短期的な強化指針がボヤけていれば、より良い長期的な計画など描けるはずもない。

 日本はアジアで勝たなければいけない、というちょっとした強迫観念が、昨今の日本代表チームには常に付きまとう。もはやアジアで日本が勝つのは、決して簡単ではない時代に入ったと認識すべきだろう。それはフル代表のみならずユースレベルも同様で、年々その傾向が強まっている。“負け”ることだってある。

 とはいえ、だ。アジアの大会でグループリーグを突破できなかったのは、いったいどれくらいぶりだろうか。この10年近くなかったはずだ。トゥーロン国際でのあの勢いはどこへ行ってしまったのか。選手たちはその事実をどれだけ重く受け止めているのか。彼らのフットボールキャリアにおいて、U-23アジア選手権はワーストな記憶として刻まれるはずだ。

 ではなぜ、現時点で森保監督は続投すべき、とわたしは考えるのか。

 ひとつめの理由は、「プランB」が存在しないからだ。2018年のロシア・ワールドカップを前に、日本サッカー協会はフル代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督を更迭した。実に勇敢だが、きわめて異例な決断である。あのとき、日本の外から新たな指揮官を招聘する時間的猶予はなく、それは効率性も欠いていた。内部で事に対処できると踏んだがゆえの更迭で、手綱は西野朗監督に託された。

 しかし今回、森保監督は日本協会が主導で選んだ、オリジナルの内部スタッフである。すべてをJFAによってデザインされたチームが、森保ジャパンなのだ。よって内部に代役などはおらず、すなわちプランBも存在しない。

 
 2番目の理由は、お粗末だったU-23アジア選手権を教訓とできるかもしれないと考えるからだ。いわば逆転の発想で、ネガティブな結果は得てして、有意義に活用できる。

 今回の結果を受けて、あらためて海外ベースの選手たちの重要性が浮き彫りとなり、オーバーエイジを活用すべきかどうかの議論も活発になって然りだ。常識的に考えて、今回のチームから五輪本番のメンバーに残りそうなのは、橋岡大樹や相馬勇紀らひと握りだけだろう。森保監督はほとんど海外組のキープレーヤーを呼んでおらず、客観的に見れば、タイでの失敗がかならずしも東京五輪代表チームの失敗には直結していない。

 ハードなJリーグのシーズンとE-1東アジア選手権が終わったあとで、疲労困憊のBチームが時間のないなかで練習をこなし、結果を出せなかった。単純にそう割り切ることもできる。森保監督のマネジメントや用兵とは別次元の話だ。
 最終的な主要メンバーを並べてみよう。冨安健洋、堂安律、安部裕葵、板倉滉、三好康児、前田大然、中山雄太、久保建英といった逸材たちで、彼らに厳選されたオーバーエイジの3選手らが加わる。現時点でチームの連携面や意思疎通、戦術の相互理解などが未知数だとしても、やはり期待せずにはいられない。

 大事なのは主力のほかにどんな控えメンバーを選ぶかではない(本大会の登録はわずか18名)。ベストメンバーをいかに適切な起用法でチームに溶け込ませ、限られた時間のなかで機能させられるかどうかだ。決して容易いことではなく、力量に不満があるにしても、現時点で指揮官を交代させて間に合うとはとうてい思えない。

 五輪代表チームは3月に、アフリカ勢との2連戦を戦う(3月27日に南アフリカ戦、同30日にコートジボワール戦)。そこでようやく選ばれるのが真の五輪代表チームだろう。同じ時期にフル代表はカタール・ワールドカップ予選を消化するが、森保監督は五輪代表の強化に専念すべきと考える。そして本番直前にはふたたびトゥーロン国際に臨み、直前キャンプで戦術を練り込んでいくことになるか。いずれにせよベストメンバーが揃い踏みとなる期間は限定的で短く、ここでのガイダンスに間違いは許されない。森保監督も心中期するところがあるはずだ。

 U-23アジア選手権は失望に終わった? それは疑いがない。

 森保監督は失敗した? 明らかにイエス。

 では、彼はチームを去るべきか? いや、それはまだだ。東京五輪が終わってからの判断でいい。

 
 サンフレッチェ広島時代の森保監督を思い起こしてほしい。ミハイロ・ペトロビッチ監督の後を受けて指揮官となり、チームにJリーグのタイトルを3度ももたらしたが、政権末期には主力選手の流出などで低迷を余儀なくされた。素晴らしい成功を収めた一方で、悪しき流れを変える斬新なアイデアや新機軸を打ち出せなかったのが退陣の原因だ。

 いま、五輪代表チームに求められているのはまさにその刺激だ。同じ轍を踏まずに、東京五輪でチームを正しい方向へと導けるか。指導者である彼にとって、まさに試金石の半年となるだろう。

【画像】東京五輪世代のベストメンバーは?
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著者プロフィール
マイケル・プラストウ/1959年、英国のサセックス州出身。80年に初来日。91年に英国の老舗サッカー専門誌『ワールドサッカー』の日本担当となり、現在に至る。日本代表やJリーグのみならず、アジアカップやACLも精力的に取材し、アジアを幅広くカバー。常に第一線で活躍してきた名物記者だ。ケンブリッジ大学卒。