延長戦までもつれこんだ今年のゼロックスは、天皇杯覇者のヴィッセルがリーグ覇者のマリノスに勝利して、今年最初のタイトルを手にした。90分間の戦いでは、スコアは3-3。計6つのゴールが生まれたエンタテインメント溢れる熱戦で、観ている人たちは存分に楽しめたんじゃないかな。

 ドウグラスのゴールで幸先良く先制したヴィッセルは、その後も常にリードする内容で試合を有利に進めていた。追いつかれても、突き放す。チームの充実ぶりがうかがえたね。

 イニエスタも期待通りのパフォーマンスを披露。正確無比なパスを何本も通していたけど、僕が見た感じでは、まだ6割ぐらいの力しか出していないと思う。それでも、あれだけのプレーを見せられるんだから、やっぱり格が違うよ。

 とにかく、イニエスタはフリーになるポジショニングが抜群に上手い。たとえば自分とは逆サイドにボールがある時、敵味方がそっちの方向に“矢印”を向けている時を見逃さない。その瞬間、スッとフリーになれる場所に入り込んでスタンバイ。だから、ヴィッセルがマイボールにすれば、すぐにパスを受けられる。そこからの展開もスピーディなのは、パスを受ける前に次の展開をイメージできているからなのだろう。

 イニエスタが怪我なくシーズンを通して戦えれば、ヴィッセルのリーグ制覇も十分に可能性がある。そう思わせる活躍ぶりだった。

 次に目を引いたのが、アンカーのサンペールだ。昨季に比べて、ボールの出し入れがスムーズになっている印象がある。加えて、相手をしっかりと潰せる守備力も上がっているように感じる。中盤の軸が強固になれば、チーム全体がより締まってくる。今季のヴィッセルは勢いだけでなく、安定感のある戦いで着実に勝点を積み重ねそうだね。

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 一方のマリノスは、前半はやや劣勢を強いられていたけど、後半は持ち前の攻撃力を随所に発揮して盛り返してみせた。

 前半の不出来は、右ウイングの仲川がかなり警戒されていて、思うようなプレーを見せられなかったところに大きな要因があると思う。それを解消したのが、後半のスタートから途中出場した左ウイングの遠藤だ。

 遠藤の積極果敢な仕掛けで、同サイドの西を押し下げると、トップ下のマルコスが左サイドで自由にプレーに関与する頻度が増す。これを抑えようとアンカーのサンペールが引き出されると、ヴィッセル陣内の中央がやや手薄になる。そのスペースを、マリノスの右SBの松原やボランチの喜田あるいは扇原が狙い出す。

 彼らへの対応に追われるヴィッセル側の守備陣形にズレが生じ始めて、逆サイドにいる仲川のマークが緩くなる。前半に比べてフリーの状態でボールを受けられる場面が増えた仲川は、ゴールこそ奪えなかったけど、単独突破や近くにいる味方とのワンツーで局面を打開するなど多くのビッグチャンスに絡んでみせた。

 前半のマリノスは、CFに新戦力のオナイウを抜擢して、左ウイングに昨季のCFのレギュラーであるエリキを起用していたけど、後半のように、左ウイングに遠藤、CFは従来通りにエリキという形が今のところは最もフィットしていると思う。

 それぞれ3つの失点を喫したとはいえ、ヴィッセルの飯倉、マリノスの朴はいくつかのビッグセーブを見せるなど、PK戦も含めて両チームのGKの奮闘もあった。攻守両面で見どころが多かったゼロックスを戦った2チームが、いよいよ今日、ACLの初戦を迎える。ともに攻撃的なサッカーが特長のヴィッセルとマリノスが、アジアの舞台でも相手を圧倒するような戦いで勝利を掴むことを期待したいね。