「ストライカーは育てるのではない。生まれるものだ」

 それはサッカー界では、もはや真理の一つだろう。持っているか、持っていないか。それしかない。

 ゴールに臨んだ時に、冷静に打ち込めるか。それより前に、相手のGKの状態を視野に入れ、それを欺けるか。あるいはそれより前に、相手のDFの動きの逆を取って、ポジション的優位か。一連の動きを、自然に迅速にできる。それは肉食獣が草食獣を捕獲するのにも似て、天性に近いだろう。

「優れたゴールゲッターは、ゴールに貪欲なのに、シュートを打つときは、惚れ惚れするほど冷静だ」

 ヴィッセル神戸を率いたファン・マヌエル・リージョ監督が話していたことがあった。その落ち着きは、スペイン語で「Instinto(生来的な)」と訳される素質である。トレーニングによって、鍛えることはできるし、鍛えなければならない。

 しかし、あるか、ないか、なのだ。

 優れたゴールゲッターは、頭の中がシンプルに整理されている。いかに簡単にゴールできるか。その点、制約に囚われない。
 
 例えば、ワントラップでシュートという指示の練習がある。ルールを守るべきだろう。しかし、彼らはワントラップで入る確率が低いなら、2タッチで撃つ。ダイレクトでベストのシュートができるなら、躊躇なくそれを選択する。練習から、ほとんど無意識にそれが判断できるのだ。

 そして彼らのほとんどが楽観的である。シュートを外せば、その方向を親の仇がいるようににらみつける。激しく感情が揺れるように映る。しかし、決して悲観的にならない。次は必ず入れる、というコンピュータを起動させ、より高い精度でシュートを打てるのだ。

 感情的に見えて、とても冷めている。生来的な素質である。

 それ故、ゴールゲッターを育成するには発掘、スカウティングが一番重要になる。

 レアル・マドリーは、そのスペシャリストだろう。過去にも、エミリオ・ブトラゲーニョ、アルフォンソ・ペレス、ラウール・ゴンサレスなどを輩出。現在も、ロベルト・ソルダード(グラナダ)、アルバロ・モラタ(アトレティコ)、へセ・ロドリゲス(スポルティング・リスボン)、ホセ・マリア・カジェホン(ナポリ)、ロドリゴ(バレンシア)、ラウール・デ・トマス(エスパニョール)、ボルハ・マジョラル(レバンテ)など下部組織出身FWが活躍している。

 カスティージャ(マドリーのBチーム)の各シーズンのストライカーがそのまま、トップリーグで活躍する現状で、トップチームで出番がないマリアーノ・ディアスも引く手あまただ。
 
 単純な身体能力だけではない。一連のゴールの動き。その自然さが問われるという。その後は、ゴールの動きを単純に繰り返し、より精度を上げる。実戦で、鍛えさせる。

 ストライカーは教えられない。

 日本では、そういう選手が必ずしもゴールに近いポジションを与えられないのが問題か。サイドで起用されることが多かった大久保嘉人や南野拓実は典型だろう。ゴールの匂いが漂わせる選手はいるのだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。