御年76歳というベテランのイスラエル人エージェントが、ピニ・ザハビだ。
 
 直接的に選手と契約を交わすのではなく、仲介人として振舞ってクラブから高額のコミッションを(しばしば「テーブルの下で」)受け取るというビジネススタイルの先駆者的な存在だ。
 
 1990年代にイングランドでウェストハム、マンチェスター・U(リオ・ファーディナンドやファン・セバスティアン・ベロンなどの移籍交渉を担う)などに影響力を及ぼし、03年には同じユダヤ系のロマン・アブラモビッチのチェルシー買収を仲介した。
 
 06年にはキア・ジョーラブシャンが南米に設立した投資ファンド『MSI』が保有権を持っていたカルロス・テベスとハビエル・マスチェラーノのウェストハム移籍に関わるなど、移籍の仲介だけでなく選手の保有権そのものも手中に収めるという、新しいビジネスモデルにも手を広げた。
 
 FIFAが2015年に選手の第三者保有(TPO)を禁止して以来、この手法は使えなくなったが、ザハビはムスクロン(ベルギー)の実質的なオーナーになるなど、間接的な手法を使って選手の保有権を扱い続けている。
 
 その影響力は近年も衰えておらず、17年にはネイマールのパリSG移籍を取り仕切り、18年にはロベルト・レバンドフスキのR・マドリー移籍を画策(結果的には実現せず)。昨年11月には、ジョゼ・モウリーニョのトッテナム行きでもファリ・ラマダーニと連携して重要な役割を果たした。
 
 ここ1年はネイマールのバルセロナ復帰に向けて動き続けるなど、ビッグディールに絡んでその名前は頻繁に登場する。
 
●主な顧客(仲介を含む)
ネイマール(パリSG)
ロベルト・レバンドフスキ(バイエルン)
ウィルフリード・ザハ(クリスタル・パレス)
アレックス・テレス(ポルト)
クシシュトフ・ピョンテク(ヘルタ・ベルリン)
ピエール=ミエル・ホイビュア(サウサンプトン)
ケビン・トラップ(フランクフルト)
カルロス・テベス(ボカ)
ハビエル・マスチェラーノ(エストゥディアンテス)
ジョルジュ・ジェズス(フラメンゴ監督)
 
文:片野道郎
※『ワールドサッカーダイジェスト』2020年3月19日号より転載