新型コロナウイルスの世界的な流行によってJリーグにも厳しい風が吹いている。それでも、向きを変えれば逆風も追い風になる。長崎のふたりのトップは見方を変えることでこの困難な局面をクラブの力に変えようとしている。

 現場のトップである手倉森誠監督は選手たちに「人間力」の大切さを説いた。「我々の立場というのは一般市民よりも恵まれている状況。スポーツチームとしてメディカルの体制が整っているし、マスクの提供でも実際に困っていない。いち市民よりも逞しい姿勢や態度、慌てない、パニックにならない人間力を発揮しないといけない」と自分たちの在り方について話す。

 それは監督自身の経験に基づいている。11年に起こった東日本大震災。被災地である仙台を率いていたのが手倉森監督だった。未曾有の大災害に見舞われた中、「復興のシンボル」としてクラブ史上最高位となる4位を記録。その原動力となったのは「サッカーをやりたいという自分たちの気持ちだけではなく心待ちにしている人たちがたくさんいる。その思いをどう汲んでエネルギーにできるか。その思いを汲んだ人間がいかにまとまるか」という思いだった。

 その経験があるからこそ、「ネガティブや逃げの姿勢ではなくてこういったことをしっかりと利用するということが必要」という思いでチームへのアプローチを続けている。
 
 また、クラブのトップである高田春奈社長もそれは同じだ。就任して約3ヶ月という状況ながら難局に直面することとなった。

 再開後、当面はスタジアムのキャパシティの50%ほどに入場者を制限することなどから入場料収入の減収は確実だ。スポンサー収入への影響も懸念されるが「長崎県内で少しずつでも応援していただける企業さんを増やしていこうというところで積極的に営業活動をしています。こういう状況でも賛同して応援してくださる企業さんも多くて、あまり多くない額であっても何かしらというところで力を貸していただけるところが増えているので、そういった意味でも、うちは恵まれている」と危機的状況だからこそ、地域の支えを実感していると話す。困難な状況もネガティブにはとらえていない。

「うちのクラブとしては開幕に向けてやりたかったけど間に合わなかったこともいくつかあったので今、いただいた時間を活用して、ピンチをチャンスに、ではないですがそういった取り組みをしたい」と前向きに取り組んでいる。

「いつか再開ができるという前提で準備しているということで見えないトンネルの中にいるような状況。でも、ただ暗闇の中にいるのではなくて、どうそこに光をもたらすのかを自分たち主体で考えていかないといけない。スタッフにも、とにかく前を向いていこうという話をしています」と新任の女性社長の言葉はポジティブだ。

 前を向く強さを持ったふたりのトップに牽引され、長崎は再開に向けて前進を続けている。

構成●サッカーダイジェスト編集部