いまや英国内で時のひととなってしまったのが、アストン・ビラの元イングランドU-21代表MF、ジャック・グレイリッシュだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な英国にあって、政府は3月中旬から不要不急を除く外出を禁じている。そんななかグレイリッシュは自宅から12キロ離れた元チームメイトの高級マンションを訪れ、複数の友人たちとの夜通しパーティーに参加。これが近隣住民が騒音に苦しむほどのドンチャン騒ぎだったという。

 しかも朝方、白いレンジローバーがマンション敷地内に駐車されていた2台のクルマに衝突。SNS上にはその場から立ち去るグレイリッシュの画像が拡散され、「運転手はヤツじゃなかったのか?」「これでは当て逃げだろ」と非難が集中。バーミンガム警察は運転手の名を明らかにしていないが、グレイリッシュがこの事故についてもなにかしら関与していた可能性が高い。

 そしてなによりも国民が怒り心頭なのは、パーティー&衝突事故の数時間前に、グレイリッシュが自身のツイッターでファンに向けて「外出自粛」を呼び掛けていた事実だ。24歳MFは「みんな、命を守るために家にいよう。食べ物を買う、薬を買う、運動をするため以外はね。そして2メートル離れることを忘れないで。とても大事なことだ。NHS(英国の国営医療サービス)を救おう。家にいて、命を助けよう」と語りかけていたのである。

 当然、コメント欄には批判が殺到。「俺たちに家にいろと言っておいてなんてザマだ!」「酷い偽善者」「もう応援したくない!」とバッシングが止まらない。

 
 現地月曜日も朝から晩まで英国メディアはこの一件を報じ、英民放『ITV』の人気コメンテーターであるピアース・モーガン氏は「模範となるべきイングランドの星がなんたる体たらく。恥を知れ!」と激怒。同席した元トッテナム監督のハリー・レドナップ氏も「ずっと高く評価してきたのに情けない。大バカ者だ!」と容赦ない。

 その夜にグレイッシュは謝罪動画を投稿。「週末に起こしてしまったことに対して、本当に恥ずかしい気持ちでいっぱいだ。屋内にいてタフな時間を過ごしている人々への配慮が足りなかったし、友人の誘いを断れなかった自分を恥じている。どうか謝罪を受け入れてほしい」と嘆願したが、事が事なだけに、すんなり終息というわけにはいかない。
 そんななか、火曜日になって英紙『The Times』が明かしたのが、グレイリッシュが所属するアストン・ビラ側の対応だ。

 すでに選手から事情聴取し、深い失望を表明していたクラブは、若きキャプテンにサラリー2週間分の罰金を命じたという。その額は15万ポンド(約2025万円)とされ、コロナウイルス治療を行なっているバーミンガム大学病院に全額寄付する。出場停止などのペナルティーは追って決定するようだ。

 ただ、愚行に対する代償はカネばかりではない。彼のキャリアそのものに暗い影を落としている。

 英紙『Daily Mail』は「マンチェスター・ユナイテッドは今夏にグレイリッシュを8000万ポンド(約108億円)で獲得すべく動いていたが、それもどうなるか分からなくなった」と伝え、かつて同チームのオレ・グンナー・スールシャール監督が語っていた次のコメントを引用している。

「フットボーラーは常に正しい行動を心がけなければならない。次のゲームに向けてまずなすべきは、よく眠り、しっかり回復すること。我々が大切にしている文化でもある」

 
 さらに同紙は「2015年にもグレイリッシュは問題を起こしている。バカンスで訪れたテネリフェ(スペイン)で泥酔し、路上で大の字になっている写真が流出したのだ」と記し、「当時は若気の至りと許されもしたが、同じような過ちを繰り返しているあたりに危うさが感じられる」と断じた。

 もはや言葉でなにを語っても想いは伝わらないだろう。ピッチ内外での行動で、地道に信頼を回復するほかない。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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