「非常にナーバスだった」現役時代、福田正博はメンタルをコントロールする術を身に着けていなかった。

「自分の気持ちと向き合い、どう調整していくか、そういう経験値が足りなかった」

 昔の自分に、今の自分がアドバイスするなら──。福田は「自分にプレッシャーをかけるな」という言葉をおくりたいという。

「プレッシャーは外部からのものだけで十分。自分自身にプレッシャーをかけたらパンクしてしまう。まあ、選手時代はそんなことも分かっていなかったけどね(笑)。振り返ると、本当に余裕がなかった。Jリーグが始まってガラリと環境も変わっていく。そうなると分からないことばかりで、ストレスが溜まっていった」

 プロサッカー選手として成功するために何が必要か。浦和のJ2降格、日本人初のJリーグ得点王など自身の経験を踏まえて福田が辿り着いた答は、「逃げ道を作っておく必要がある」だった。

「逃げ道を作るためには100パーセントの幅を広くする。これが大事だ。何が言いたいかというと、毎試合100パーセントの力を発揮するなんて無理だということ。いつもアップアップの状態でやっていたら苦しいだけでしょ。120パーセントの力を出せっていうのは、力めって言っているようなもの。70、80パーセントくらいの力で及第点以上のパフォーマンを出せるのがいい。見た印象だけど、(リオネル・)メッシなんていつも60パーセントくらいの力でやっていて、大切なゲームになるとギアを上げてくる。そういうことができるのは、100パーセントの幅がとても大きいから」
 
 100パーセントの幅が狭ければ、すぐ限界値に達してアップアップな状態になってしまう。逆に、100パーセントの幅が広ければ広いほど余裕が生まれてくる。その余裕こそ、「逃げ道」なのだろう。

「ドーハの時(アメリカ・ワールドカップのアジア最終予選)、俺は自分自身に期待をかけていて120パーセントの力を出そうとしていた。今考えれば、そんなの無理だよね。実際、(その最終予選で)チームに何も貢献できなかったし。『80パーセントの力でやればいい』。当時そう思ってプレーできたら、また違っていただろう」

 “ドーハの悲劇“の当事者の言葉には確かな重みがある。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)