新型コロナの感染拡大の影響はまだまだ止まるところを知らないね。ベルギーに続き、オランダやフランスでもリーグ戦が打ち切りになったし、Jリーグも緊急事態宣言が延長される見込みとなって、6月中の再開が怪しくなってきた。

 そんななかで、メディアのスポーツ記事も新型コロナ関連以外では過去を振り返る企画が多くなってきた。前回のコラムでは、『サッカーダイジェスト』で行なったJリーグ歴代ベストイレブンの企画で、僕が選出できなかった日本サッカーの功労者たちにスポットを当てて語ったんだけど、あの記事にはけっこうな反響があったようだ。

 というのも、僕は日本代表の監督をやっていた当時のジーコをかなり辛辣に批判していたんだけど、それなのにJリーグ発足にあたり土の上でサッカーをやってくれたことに「感謝している」という話が意外だったというんだ。

 ひとつ言っておきたいのは、僕は“プロ”の評論家であるということ。プロフェッショナルの選手、監督、チーム、あるいは組織に対して、良いものには良いと言うし、ダメなものには遠慮なくダメと言わせてもらう。その基準がどこにあるのかといえば、やはり結果でしかない。だから、僕はジーコだけじゃなく、ザックやハリルの時だって、結果を出せなかった時には厳しい論調で批判していたはずだ。

 そこには個人的な感情なんかは存在しない。別にジーコが嫌いだったから批判をしていたわけじゃないし、当時の結果や選手の起用法などを見て、これではダメだと思ったから厳しいことを言ったまでだ。それがプロとしての僕の仕事だし、当のジーコだって分かっているはずだよ。

 余談になるけど、10年ほど前に日本人ブラジル移住100周年の記念イベントがブラジルで行なわれた時、その前日の夜にJリーグで活躍したドゥンガやビスマルク、アルシンドといった懐かしい顔ぶれが集まったんだ。そこにはもちろん、ジーコもいた。なんのわだかまりもなくて、みんなで遅くまでワイワイやっていたよ。

 結局、お互いにプロという立場で仕事をしているわけで、だからこそ厳しいことを言ったから言われたからといって、それを引きずるということはないんだ。とくにプロサッカーへの目が厳しいブラジルでは当然のことだよ。
 
 僕は93年のJリーグ開幕以来、『サッカーダイジェスト』誌で「天国と地獄」というコラムをずっと継続してきたんだけど、いろんな人から「セルジオさん、本当にいつも辛口ですね」って言われてきた。さっきも言った通り、何も恨みがあって厳しいことを言っているわけじゃない。別に自分では辛口とも思っていないし、僕の言葉が「辛口」っていうなら、それは本当のことを言うってこと。

 長年日本に住んで思うのは、日本人ってあまり本音を出したがらないよね。その場の空気を読んでうまくまとめようとする。でも、僕はうまくいっていないのに、うまくいっている“フリ”をするのは違うと思うし、もっと良くなるためにも厳しいことを言ったり、求めたりしなくちゃいけないと思っている。

 さっきのコラムのタイトル「天国と地獄」は、プロとして良いことは良いと讃えて、“天国”のように持ち上げて、ダメな事にはダメとハッキリ言って、まさに“地獄”に落とすという意味で付けたんだ(笑)。日本にプロリーグができてもうすぐ丸27年になるけど、まだまだ日本のメディアは“プロ”の仕事ができていないね。日本のサッカーをもっと良くしたいと思うなら、ダメだと思うものには愛情をもって厳しい言葉をぶつけていかなくてはいけないよ。