甲府は今季、大きな転換点を迎えている。ベテランから若手へ、堅守最重視からポゼッションを高めたより攻撃的な戦いへ。新型コロナウイルスの影響でリーグが中断し、出鼻をくじかれた形になってはいるが、今年が変革の一年であることに変わりはない。

「選手の保有数を減らし、世代交代を図って若手選手の出場機会を創出する」。佐久間悟GMは1月の新体制発表で明確な指針を示した。新体制発表時の平均年齢は26.6歳。30代の選手も13人から6人へと大幅に減った。

 これまでの甲府は経験豊富で計算ができるベテランを補強、重用し、堅守をベースに前線に強力な外国人アタッカーを置いて戦ってきた。それはJ1というステージにしがみつくためのひとつの選択であり、20億に届かないJ1最低規模の年間予算で2013〜17年の5年間、トップステージに残り続けるという結果を残した。
 一方、佐久間GMが「能力の高い外国人選手は年々、獲得が難しくなっている」と語るように“一点豪華主義”とも言える強力な助っ人に頼った戦いは、J1を戦う間に難しさが増した背景もある。多くのクラブがスカウティング網を張り巡らせ、仲介人が目を光らせているなかでは「昔に比べたら年俸の桁がひとつ多くなっているような状況」(佐久間GM)。

 J1にいる間に甲府の年間予算は10億円台後半で頭打ちとなり、現在はJ2でも中位から下位の間となる14億円前後。限りある予算は必然的に編成への制限という形に表われてくる。つまり、年俸が高いベテランからより費用が抑えられる若手にシフトするのは当然の流れとも言える。

 クラブは世代交代とともに、ピッチでの変革にも乗り出した。17年の吉田達磨監督の就任は堅守速攻からの脱却が大きなテーマにあり、チームが変わろうとしている意思表示でもあった。ただ、その年にJ2降格、18年はシーズン序盤から結果が出ずに吉田監督が退任。結果と改革の両立の難しさが浮き彫りとなったなかで、昨年から伊藤彰監督体制がスタートした。

 伊藤監督は昨年「少しずつ、少しずつ。急激に変えればチームは崩れてしまう」という言葉を何度も口にした。18年にはヘッドコーチを務めていた指揮官は、結果を残すことで変革するための時間が生まれるということを理解していたようだった。

 クラブの編成も19年は内容よりも結果を優先した形になった印象が強く、改革からの揺り戻しの感があった。J1にとどまり続けたチームの形を変えることは簡単ではなく、3歩進んで2歩下がるという地道な積み重ねが続けられている。
 そんななかで迎えた今季は編成も含めて大きく舵を切った一年だ。多くのベテランがチームを去り、若手、中堅が加わって年齢構成は大きく変わった。伊藤監督は「メンバーが大きく変わった。1からのチーム作り」と大きな刷新と捉えている。

 昨年は35歳のピーター・ウタカ(現・京都)がおり、ポゼッションを高めるためにフィールドプレーヤー10人が守備を厭わない戦いを実現するのは難しかった。強烈な個を活かすためには組織に、日本人選手にしわ寄せがいく面も否めなかった。今年は強力な助っ人がいない代わりに、指揮官が求めるサッカーを体現しやすい選手が揃っている。

「ポジティブに捉えれば今は変える時期と捉えられる。ネガティブに捉えれば資金が乏しく、チームの過渡期。限られた予算でなんとか昇格を目指せるチームをアグレッシブに作っていく」

 シーズンイン前の宮崎キャンプで伊藤監督は今年のチームのイメージをこう表現していた。伊藤監督はポゼッションを高め、攻守にアグレッシブなスタイルの構築に取り組んでおり、若手へのシフトは新たなスタイル=伊藤監督が本来目指すスタイルへの転換をするうえでも後押しとなるはずだ。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響でリーグが中断しているが、この変革プランは頓挫することはないだろう。リーグが再開すれば、甲府は“変わる”ための道を歩み始めるはずだ。
 2年目を迎えた伊藤監督の根底にある想いはひとつ。

「楽しいサッカーを選手、サポーター、ファンみんなで共有したいし、我がチームはこういうチームというのが見えればすごくいい」

 勝つことだけに焦点を当てるなら、甲府という地方クラブの価値は薄れる。だが、山梨県民、サポーターが誇りに思えるクラブとなることに焦点を当てるなら大きな存在感を放つ。それは05年の初昇格の熱気が証明している。その熱気を取り戻すためにも、変革はフロントを含めて強い意志を貫けるかが問われるだろう。

構成●サッカーダイジェスト編集部

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