1998年のフランス・ワールドカップ(W杯)でのラウンド・オブ・16のアルゼンチン戦は、元イングランド代表のデイビッド・ベッカムの人生に大きな影響を与えた試合として記憶されている。

 開始早々にガブリエル・バティストゥータの先制点を許したイングランドだったが、マイケル・オーウェンが倒されて得たPKをアラン・シアラーが決めて同点に追いつき、さらにベッカムのアシストから、オーウェンが長距離を駆け抜けたドリブルからシュートを叩き込んで逆転に成功していた。

“ワンダーボーイ”の伝説的なゴールで試合をひっくり返したイングランドだが、前半アディショナルタイムにハビエル・サネッティのゴールで再び同点とされ、そして47分に“それ”は起きた。

 ピッチ中央で後方からディエゴ・シメオネに倒されたベッカムが、うつぶせに倒れたまま足を上げて、シメオネに報復。目の前で起きた出来事に、主審は迷わずベッカムにレッドカードを提示した。

 数的不利となったイングランドは、延長戦を含めた120分間をタイスコアのまま終えたが、PK戦で2人が失敗。4人が成功した“宿敵”に屈した。そしてベッカムは、メディアから「10人の勇敢な獅子とひとりの愚かな若者」と批判されるなど、戦犯として大きな非難を浴びたのである。
 

 その後も輝かしいキャリアを送ったベッカムだが、国内外から大きな批判を浴びせられ続けたことは、大会当時23歳だった彼の心に傷を残したことだろう。

 当時のゴールマウスを守っていたデイビッド・シーマンは、英『talkSPORT』で、ベッカムの退場に失望したか問われると「イエス。少しね」と回答。そのうえで、「自分からすればあれは本当に厳しいレッドカードだった。だから、失望の雰囲気はW杯で敗退したからだと思う」と述べている。

「オーウェンが素晴らしい試合をしていたし、ベッカムにはそれほど集中していなかった。我々は正しい判定じゃないと感じていたからだ。あれは絶対にイエローカードだった。レッドカードじゃなかった。我々は不当だと感じたよ」

 はたして、かつての先輩からの“擁護”に、ベッカムは何を思うだろうか。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部