4月26日に史上初のインターハイ中止が発表され、大きな衝撃が走った高校スポーツ界。サッカー界においてもインターハイの中止の他、高円宮杯プレミアリーグ、プリンスリーグ、都道府県リーグの開催も延期続きで選手権予選への影響が懸念され、先行き不透明で非常に難しい状況にある。

 その中で全国の高校はこの状況をどう受け止め、どう日々の活動をしているのか。幾つかの高校の指導者たちに話を伺った。(取材・文●安藤隆人/サッカージャーナリスト)

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 昨年のインターハイでベスト8に進出した新潟の北越高。全国レベルでの戦いの楽しさを味わうことができた彼らは、今年のインターハイも大きなターゲットとしていた。

「インターハイ中止はネット記事で知りました。『クラスルーム』というグーグルのアプリがあって、そこでサッカー部の全員に僕が文章で『中止決定があったのですが、選手権があることを信じて頑張りましょう』と伝えました」

 そう語った荒瀬陽介監督にとって、この決定を伝えるのはかなり苦しいことだった。
「3年生数人とズームで話をしたのですが、『インターハイに進路を懸けていた』『昨年を見ていたので、余計に出たかった』と言う選手が多くいて、そのチャンスが失われたことに大きなショックを受けていた。特に昨年我々は素晴らしい経験をさせてもらったから、3年生はなおさら思いが強かった。ここに懸けていた選手もいて、みんな困惑していました」

 北越高は3月頭から休校になり、そこからサッカー部の活動も休止した。そのまま春休みに突入すると、新潟県は緊急事態宣言の対象外だったこともあり、4月6日には一斉に学校が始まったことで、いったんは部活動も可能になった。しかし、4月16日に首都圏と大阪・兵庫、福岡などに限定されていた緊急事態宣言の対象が全都道府県に拡大をされたことで、再び休校となったことにより、部活動もまた自粛せざるを得なくなってしまった。
「6日から4日間だけ活動がOKとなったのですが、10日から先に部活動が禁止となって、16日に一斉休校になったことで、ずっと活動をできない状況にあります。県外出身の寮生で神奈川県などの先に緊急事態宣言が出た地域の子はそのまま寮に残り、寮で自粛を続けています。県内の寮生は実家に帰しています」(荒瀬監督)

 チームメイトとすら満足に会えない状況が続いているが、北越ではオンラインを積極的に駆使している。コンディション管理として『ワンタップ』というコンディションアプリを去年から取り入れており、各自の体調と運動時間、トレーニング強度を入力して管理していた。そこに動画も載せられるため、家の中でできるトレーニングの動画を載せたり、走りのメニューを載せたりして各自で取り組めるようにしている。さらにズームを使って家の中で30〜40分間、トレーナーの指導のもとで一斉トレーニングを随時行なっている。

「学校の勉強面でもクラスなどにこちらから課題を出して提出するシステムが導入されているので、それをサッカー部としても活用して、去年のインターハイの映像に僕の分析を載せて参考程度に見てもらうようにするなど、やれることはどんどんやっていきたいと思います」

 こうした荒瀬監督の積極的なアプローチもあり、選手たちも折れそうな心を必死でこらえながら前向きに取り組む姿勢を見せている。

 北越高のキャプテンを務めるMF加藤雅久は、「素直な心境は表舞台で活躍できるチャンスが1つ失われたことは残念だけど、選手権に思いをぶつけられると思っています。本音を言えば戦いたかったし、その気持ちは隠せないけど、僕は受け入れるしかないと思っていますし、ここで折れたらいけないと思っています」と必死で前に進もうとしている。

「最初のうちはやっぱりショックを隠せなかった選手もいましたが、その後の3年生のオンライントレーニングにもしっかりと取り組んでいるし、コンディション管理の報告もしっかりしてくるので、次に向けて頑張ろうとしてくれている。そこはもう僕ら大人が彼らのために頑張るしかない」(荒瀬監督)
 
 トレーニングの工夫と言えば、岡山県の作陽高も独自の取り組みをしている。
「もちろん今は未曾有の状態にあることは間違いありませんが、そこで『サッカーができない』ということのみを考えるだけでなく、選手たちに広い視野を持たせることが大事だと思っています。日本が、世界がこういう状態になっている中で、何が生きていく中で必要かなど、違う視点を持たせた上で、『やっぱり俺はサッカーが好きだ』と思うことが、彼らの5年後、10年後に活きてくると思っています」

 作陽高の校長でもあるサッカー部の野村雅之総監督は動画を駆使して、選手たちに視覚の刺激と自らの工夫を通じて、周りに『見せる』という行動を促している。

「マーカー2つを使ってドリブルのトレーニングという至ってシンプルなものなのですが、やりようによってはいくらでもやり方があるんです。そのやり方を選手たちが独自で考え出して、実践してみんなに動画として発信をする。それを見て『これは役に立つ』と思ったら取り入れたり、逆にその発想をヒントにオリジナルの発想を創出したりする。それを繰り返すことで、シンプルなことがいろんな可能性を示すきっかけになるんです」

 この動画は作陽高のホームページで見ることが出来る。最近は酒井貴政監督やコーチ、同校OBである櫻内渚(ジュビロ磐田)、山本義道(横浜F・マリノス)が披露するなど、この2マーカードリブルのサイクルを盛り上げている。

 一方で、やはり全国トップレベルの強豪である女子サッカー部もオンライントレーニングをする傍ら、自らの得意料理を披露したりするなど、サッカーだけではなくステイホームをしながらもチームメイトと活発に交流できる場を設けている。

「学校がある津山市は4月24日まで感染者が1人もいない状況でしたので、比較的他の地域よりは休校期間は少ない方かもしれません。ですが、3月1日〜23日まで休校し、それ以降は、いったん学校は再開しましたが、部活動は人数限定や時間をずらして行なうなど、全体での練習は一切できませんでした。その後全国への緊急事態宣言を受けて休校を再決定し、徐々に寮生を実家に帰して全ての部活動も休止しています。心の準備はできていましたし、選手たちもオンラインでグループミーティングを行なったり、現状を受け入れながら前を向いてくれています。だからこそ、我々指導者がその気持ちに応えないといけないし、工夫しないといけない。ある意味、問われている時期だと思います」
 最後に首都圏である埼玉県。今冬の選手権で8強入りした昌平高は、「もう選手とも顔すら合わせられない状況で、進路面を含めて今の高3にとっては本当に深刻な状況だと思います。だからこそ、面談を多くしたり、いろんなケアをしていかないといけない」と藤島崇之監督が語ったように、最初に緊急事態宣言が出た地域は丸々2か月以上、活動が一切できていない状況にある。3月2日から休校となり、そこから今まで一度も学校再開は出来ていない。

「選手たちもサッカーをやりたい気持ちが強いし、進路への不安もどんどん大きくなるのは現実です。だからこそ、今スタッフが海外の選手の映像を編集して、それぞれの選手に見せるなど、指導者がその思いを汲んで工夫をしていかないといけない」(藤島監督)

 世界的に見ても多くのスポーツイベントが中止に追い込まれている状況ゆえに、どうしても『仕方がない』という言葉が出てしまう。だが、高校生にとっては一生に幾度とあるものではなく、単純に『仕方がない』という言葉で流せない部分もある。それでも彼らは必死で今を受け止め、前に進もうとしているからこそ、指導者をはじめ大人が彼らの力を後押しできるように工夫をしていかないといけない。

 今回、現状を話していただいた3つの高校も苦悩を抱えながら、それでも選手たちに向けてアプローチを工夫していた。こうした両者の想いがより前に進む力を生み出しているのは、重要な事実だろう。苦境の中にあっても、ただ下を向くことなく、創意工夫で乗り越えようとする力を、このコラムで発信できたらと思う。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)