元イタリア代表FWのフィリッポ・インザーギ(46歳)が、旧知の仲であるパオロ・フォルコリン記者の電話による独占インタビューに応じた。

 現役時代はユベントスやミランでストライカーとして活躍し、現在はセリエBで首位を独走するベネベントの監督を務めるピッポ(インザーギの愛称)は、パンデミックに世界が振り回される今、どんな思いを抱いているのか。

『ワールドサッカーダイジェスト2020年5月7日号』に掲載された独占インタビューを、3回に分けて公開する。最終回の後編は、新旧のイタリア代表、そしてミランで指導した本田圭佑に関する話だ。

―――◆―――◆―――

フォルコリン記者:新型コロナウイルス拡大の影響で、今夏に予定されていたユーロも1年延期されてしまった。イタリア代表のロベルト・マンチーニ監督にとって、これはポジティブとネガティブのどちらかな?

インザーギ:あまり良いことではないと思うな。アッズーリはユーロ予選で10試合すべてに勝利した。記録的な快挙だよ。

 チームはモチベーションに溢れ、自信もかなり深めていたはずだ。エースのインモービレはラツィオでゴールを量産していたし(今シーズンはここまで26試合で27ゴール)、この勢いのまま今夏に大会があれば、1968年以来の優勝も不可能ではなかったと思う。

 でもまあ、決まったことを嘆いていても仕方がない。来年になってポジティブになることに目を向けるべきだね。例えば怪我人の復帰だ。すでに復帰したけどキエッリーニのコンディションはもっと上がるだろうし、21年夏ならザニオーロ(膝十字靭帯断裂で戦線離脱中)も十分に間に合う。
 
フォルコリン記者:現役時代のピッポは、アッズーリでのプレーも大好きだった。いつか監督としてイタリア代表に戻りたいって気持ちはある?

インザーギ:その答は簡単だ。SI(YES)! もちろん! 最大級の「SI」だよ! すべての監督にとって自国の代表監督の座は、憧れであり目標だ。いつかアッズーリを率いてみたいよ。でも今の私はまだまだ経験不足。クラブチームでたくさん挑戦をした後に、そんな話が舞い込んできたら、喜んで引き受けるよ。
フォルコリン記者:2006年ワールドカップの優勝メンバーの中で、今も唯一現役なのが、ジジ・ブッフォンだ。もう42歳になったけど、来シーズンも現役を続けるようだね。

インザーギ:正直、ちょっと羨ましいね。現役引退を決断する時に私は本当に色々なことを考えて、何日も眠れない夜が続いた。プレーするのが大好きで、ゴールのために生きてきたから、スパイクを脱ぐのはまさに苦渋の選択だった。

 引退は本当に本当に辛かった。今でも、「あともう1年はプレーできたんじゃないか」って自問自答することがある。コンディションは良かったし、カルチャトーレはIDカードに書かれた年齢がすべてじゃない。

 とにかくジジは本当に偉大なキーパーだし、まだまだ十分に戦えるはずだ。自分の状態は、彼自身が一番よく分かっていると思う。誰にだって衰えはくるし、永遠にはピッチに立てないけど、ジジがまだ戦えるって思うならこのまま現役を続けるべきさ。

 私はもう1、2年はいけると思うよ。何よりもジジにはチャンピオンズ・リーグ優勝という悲願が残っているしね。ビッグイヤーを二度も手に入れていた私とは、ちょっと状況が違うのさ。
 
フォルコリン記者:2006年の優勝メンバーでもう1つ興味深いのが、引退後に指導者になった選手の多さだ。

 ピッポ、カンナバーロ(広州恒大)、ネスタ(フロジノーネ=セリエB)、ガットゥーゾ(ナポリ)、オッド(元ペルージャ=セリエB)、グロッソ(元ブレッシャ)、ジラルディーノ(プロ・ヴェルチェッリ=セリエC)、カモラネージ(ターボル・セジャーナ=スロベニア)、バローネ(サッスオーロU−17)、アメーリア(元ヴァステーゼ=セリエD)がすでに監督になっていて、来シーズンからはついにピルロもユベントスB(セリエC)で指揮官キャリアをスタートすると言われている。これは単なる偶然かな?

インザーギ:たしかに多いね。でも、偶然なんかじゃないと思うよ。あのグループは特別な何かを持っていて、だからこそ世界制覇という偉業を成し遂げることができた。現役を退いた後に多くの者が、「若い世代に私たちが持っていたものを伝えたい」と思ったんじゃないかな。

 だからみんな監督になったんだ。実はあの時のメンバーで作られたチャットグループがあってね、よくそこで色んなことを話したり、意見を交換したりするんだ。もちろん馬鹿げた話もね(笑)。私たちは今も、よくまとまったチームなんだ。
フォルコリン記者:そのようだね。今回のパンデミックにおいても君たちは、『BE CHAMPION against COVID19』というキャンペーンで寄付を募っている。「君もチームの一員になって、この戦いに勝とう。2006年の世界チャンピオンたちは、この挑戦に勝つために再びピッチに降り立った」というスローガンは、本当に素晴らしい。

インザーギ:難しい状況に陥ったイタリアのために自分たちに何ができるか、みんなで話し合った。それで寄付を呼び掛けて、赤十字に渡すことにしたんだ。多くの国民は私たちの偉業をしっかり覚えていてくれて、気前よく寄付してくれたよ。
フォルコリン記者:さっきブッフォンの話が出たけど、もうひとり不死身の選手がいる。ピッポがミラン監督時代に指導した本田圭佑だ。彼が今どこでプレーしているか知っているかい?

インザーギ:もちろん! ブラジルのリオデジャネイロだろ。ボタフォゴと契約したんだよね。でも、ケイスケはまだ、不死身って呼ばれるほどの年齢じゃない。次の誕生日で34歳だろ? 私もその年齢の頃はまだ十分にプレーできたよ。二度目のチャンピオンズ・リーグ優勝とクラブワールドカップ制覇を果たした2007年が、34歳だったからね。

 それにしてもケイスケは、世界で唯一の記録を成し遂げたらしいね。5大陸(アジア、ヨーロッパ、北中米、オセアニア、南米)のすべてのクラブでゴールを決めたんだろ? まだアフリカだけが足りないけど、ケイスケの性格を考えると、そのうちそれも制覇しに行くかもしれないな(笑)。この記録だけは私も真似したくてもできなかったね。

インタビュー●パオロ・フォルコリン
翻訳●利根川晶子

【インタビュアー】
Paolo FORCOLIN(パオロ・フォルコリン)/ヴェネツィア生まれ。いくつかの新聞や雑誌を経て、1979年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙の記者に。まずは北部エリアを担当し、その後はユベントスの番記者を約30年に渡って務める。デル・ピエロやブッフォン、インザーギなどと親交を深めた。現在はフリーランスとして活躍する。著書にデル・ピエロの伝記、ユーベの近代史を描いた『飛翔』など。