試合の取材に行くと、どうしても目に留まってしまう選手はいる。概ねそのゲームで最も活躍している選手で、あとは筆者の場合は学生時代にサッカーをしていた背景から、同じポジションのボランチを追ってしまう傾向がある。

「クリスティアーノにも全然負けていない。凄いな」

 珍しくCBに目を奪われた。2018年4月の柏戦、4−4−2のCBで先発した広島の野上結貴は、主にクリスティアーノとマッチアップ。クリスティアーノと言えば、パワフルなドリブル突破や豪快なシュートが売りのパワー系ストライカーで、前年の17年にはリーグ12得点を決めた柏のキーマンである。そのブラジル人に対して、野上が地上戦でも空中戦でも対人でほぼ勝り、広島は1−0の勝利を収めた。

 18年に広島担当となり、徐々に選手やチームの特徴を掴んでいくなか、野上が優れたCBだと確信したのは5月の神戸戦だった。

「野上が空中戦で、本当によくウェリントンと対峙してくれて、頼もしかった」

 試合後の城福浩監督の言葉がすべてを物語るだろう。大型FWのウェリントンにも空中戦でほぼ勝ち、しかも取材後に話を聞けば「手応えはありますね。ウェリントンに関しては、やりがいがありました」と言う。生粋のエアバトラーだ。
 19年になると、チームのシステムが本格的に3−4−2−1に移行。野上は主に3バックの右を任された。そして新たに発見した野上の良さは、DF間の連係だ。3バックの中央を務める荒木隼人のコメントを紹介したい。

「横にいる(佐々木)翔くんやガミくん(野上)が助けてくれるおかげで自分も良いプレーができているんです。3バック間でも、誰かが出ればその穴を埋める。良い信頼関係ができていて、阿吽の呼吸に近いものができてきたかなと思います」

 CBの鉄則とも言えるチャレンジ&カバーを維持するうえで、荒木が気兼ねなくチャレンジできるように、野上が適材適所でカバーしているのが窺える(もちろん佐々木もカバーリングをしている)。18年も水本裕貴と組んだCBコンビは好連係を見せていたが、主に野上がチャレンジで、水本がカバー。ゆえに、野上を見れば空中戦の強さばかりに目が行くようになっていた。
 8月、2−0の勝利を収めた磐田戦で、好セーブを連発したGK大迫敬介の話も聞いてもらいたい。

「前半も何本か僕のところに(シュートが)飛んできて、結果的に僕が止めた場面もありましたけど、味方の選手がしっかりと寄せてくれて相手にプレッシャーを与えてくれたからこそ、自分の身体の近くに飛んできていると思います。そこは練習のところから味方の選手とすり合わせている部分なので、それが今は上手く結果として出ているのはすごくポジティブなことだと思います」

 大迫の言う「すり合わせ」について、野上に詳しく説明してもらった。

「ある程度、シュートコースを切りながら、打たれてもサコ(大迫)がいる。一人ひとりのやるべき役割もしっかりできています。僕らがファーを切って、サコがニア。あとは股を通されないようにというのも話しています」

 シューターに対して、GKと協力しながらコースを切る。野上が守備陣との連係にも優れていると感心させられた。
 野上は今季で広島在籍5年目になる。特に18年からの城福体制では重用され、最終ラインで重要な戦力になった。空中戦の強さに目を奪われた18年、守備陣との好連係に感心させられた19年、そして今季はどんな進化を見られるのか。リーグ再開後も生粋のエアバトラーに注目し続けたい。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)

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