久保建英の新天地がビジャレアルに決まった。すでに条件面で合意し、数日中に発表される見通しとなっている。

 レアル・マドリーの首脳陣は当初から1年目のマジョルカに続くステップアップの場としてヨーロッパのコンペティションを戦うクラブを最優先に受け入れ先を探していた。その意味でヨーロッパリーグに出場するビジャレアルはその条件に合致する。契約期間は1年で買い取りオプションは付帯されていない。

 マドリーでは数か月以内にヴィニシウス・ジュニオールがスペイン国籍を取得できる見込みで、この一連の契約条項は2021-22シーズンに久保を呼び戻す思惑があっての処置でもあるが、マジョルカで示した才能をビジャレアルでも引き続き見せることがその前提となるのは言うまでもない。

 ちなみに現在マドリーのEU圏外枠はそのヴィニシウスを含め、ロドリゴ、エデル・ミリトンの3選手ですでに埋まっている。久保にはそもそも空きがなかったわけだが、マドリーはこの問題の如何を問わず、さらに実戦経験を積ませるために再び武者修行に出す考えだった。
 
 その日本代表MFを巡る争奪戦は、マジョルカでの活躍もあって熾烈を極めた。ラ・リーガだけでも10以上のクラブから獲得の打診があり、海外からもミラン、パリ・サンジェルマン、バイエルン・ミュンヘンといったビッグクラブが名乗りを上げた。

 この中で早くから目をつけ獲得に動いていたミランは、スペイン国内で引き続きプレーすることを希望した久保の明確な意志を前に撤退することを余儀なくされた。パリSGとバイエルンは完全移籍での獲得を目論んだが、もとよりマドリーにそのような考えはなく、あっさり門前払いされるだけだった。

 国内で移籍先として当初から有力視されていたのがレアル・ソシエダだった。それに比べて、ビジャレアルはかなり遅れての参戦となったわけだが、そこでターニングポイントとなったのが、シーズン終了後のハビエル・カジェハからウナイ・エメリへの監督交代だった。
 
 ビジャレアルの新指揮官となったエメリは、就任早々に久保の獲得をリクエスト。その熱の入れようは直接電話でラブコールを送るほどで、自らの起用構想を説明し、ヨーロッパリーグにも参戦する新プロジェクトの中で重要な役割を担うことを約束した。そして年間40試合以上出場できるチームを追い求めていた久保はこの熱意に強く心を動かされたのだった。

 マドリーにとってもエメリの監督就任は好都合だった。このスペイン人指揮官は今シーズン、マドリーが保有権を持つダニ・セバジョスをレンタルで貸し出したアーセナルを率いていた。交渉の場でアーセナル側は出場機会を確約しそれが移籍成立の決め手にもなったのだが、開幕以来、指揮官は公約通りにセバジョスを継続して起用。昨年11月に解任されその関係が長く続くことはなかったが、もともと若手を積極的に抜擢する監督として好印象を抱いていたマドリーの首脳陣の評価がさらに高まる結果となっていた。

 マドリーが要求していたレンタル料約200万ユーロ(約2億5000万円)+年俸の総額約500万ユーロ(約6億2500万円)という条件面についても、健全経営を実践するビジャレアルにとってはさほど高いハードルではなく、とんとん拍子で交渉は進展。そのまま合意に達し、あとは公式発表を待つのみとなったのだ。
 
 このようにビジャレアルが逆転で市場の人気銘柄を手に入れることができたのは、当初ポールポジションにつけていたレアル・ソシエダがもたつきを見せてしまったからでもある。事実、マドリーだけでなく、久保サイドもソシエダを最上位候補に位置付けていた。

 ただその後、久保サイドが二の足を踏む事態が起きた。今シーズン、マドリーからソシエダに貸し出されていたマルティン・ウーデゴーのレンタル期間の延長だ。周囲の関心が高まる中、なかなか去就を明らかにしなかったノルウェーの怪童は結局残留する方向で、入れ替わりで加入する考えだった久保にとっては予想外の状況となった。

 もともとソシエダの攻撃陣はタレントが豊富で、ウーデゴーの残留で継続して出場機会を得られなくなる懸念が増していた。一方、ビジャレアルは攻撃の要だったサンティ・カソルラが退団。かねてからクラブは攻撃を牽引できる代わりの選手を探していて、エメリの後押しもあり久保がそのお眼鏡にかなったのだ。

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 予選ラウンドを勝ち上がることが条件であるが、同じくヨーロッパリーグに出場するグラナダも久保の獲得に強い関心を示していたクラブのひとつだ。ただ1年前に1部に昇格したばかりで、クラブはまだまだ成長期にある。

 実際、今シーズン、最下位で2部に降格したエスパニョールがそうだったように、躍進を遂げて欧州カップ戦の出場権を勝ち取ったチームが選手層の薄さが響き翌シーズン、リーグ戦との二足の草鞋を履きこなすことができずに、一転して低迷に陥るというケースは決して珍しいことではない。

 グラナダは新進気鋭のディエゴ・マルティネス監督がチームを率い魅力的なオプションであったが、ビジャレアルと比べれば、クラブとしての安定感という点で見劣りした。

 その他に最後まで可能性を残していたのがベティスとオサスナの2クラブだ。ベティスはこれまた新監督のマヌエル・ペジェグリーニが強力にプッシュし、欧州カップ戦の出場権を目標に掲げる新プロジェクトの目玉のひとりとして迎え入れる構想だった。

 もともとチームのポテンシャルは高く、欧州カップ戦出場、もしくは狙えるところという条件も満たしていた。一方、オサスナはレギュラーを確約するほどまでの熱意で猛アタックをかけ続けた。しかしともに決め手を欠き、ビジャレアルの攻勢の前に屈する形となった。

 当初からマドリーと久保サイドが移籍先探しにおいてもっとも重要視していたのが、欧州カップ戦の参戦と出場機会の保証の2点だった。それらの条件をすべてクリアし、近年の実績とエメリの監督就任も追い風にラストスパートをかけたビジャレアルが晴れて久保の新天地に選ばれたのだった。

文●セルヒオ・サントス(アス紙レアル・マドリー番)
翻訳●下村正幸