[チャンピオンズ・リーグ準々決勝展望]
RBライプツィヒvsアトレティコ・マドリー
●日時:8月13日20時(日本時間28時)キックオフ
●会場:ジョゼ・アルバラージ
●欠場者
・出場停止:RBライプツィヒ=なし アトレティコ=なし
・負傷などで欠場濃厚:RBライプツィヒ=コナテ(DF) アトレティコ=コレア(FW)、ヴィルサリコ(DF)

 RBライプツィヒとアトレティコは、ある意味で似通ったチームだ。どちらもボール支配にあまり執着しないし、また自分たちのスタイルを強引に押し通そうとせず、むしろ相手に合わせて戦い方を柔軟に変え、相対的な優位に立とうというアプローチを取る。主導権を握るよりも相手に握らせる方が自分たちのペースで戦えるところも共通している。

 あえて言えばアトレティコの方がより受動的で、積極的に相手に主導権を渡しつつ、相手のサッカーを壊すことに専念しながら逆襲の機会を虎視眈々とうかがう姿勢が強い。

 RBライプツィヒの問題は、シーズンを通して攻撃の中核を担ってきたヴェルナーが6月末でチームを離れてチェルシーに移籍し、最も重要なプレーヤーを失ったこと。やはりシーズン終了後の退団が濃厚なシックは、CL終了までレンタル期間を延長してチームに残ることになったものの、こうした通常とは異なる内部事情がチームの士気にネガティブな影響を与えないという保証はない。

 それ以前に何よりも、シーズン通算34得点という数字が示す通り、フィニッシュを一手に担ってきたヴェルナーの不在は、戦力的/戦術的にきわめて大きな損失だ。その爆発的なスピード、裏のスペースをアタックする優れたタイミングの感覚、そして正確なシュートといったCFとしてのクオリティーは、RBライプツィヒにとって最大の武器であるポジティブトランジション(守→攻への切り替え)からの速攻に絶対不可欠なものだった。代役となるシックにそれを期待することは不可能だ。
 
 中立地での無観客試合、しかも1試合のみの一発勝負というのは、過去に例がない特殊な状況だ。しかし、シメオネ体制が9年目を迎え、その間に決勝を二度も戦うなどCL決勝トーナメントでほぼ毎年主役を演じてきたアトレティコは、大舞台を戦う経験値において、RBライプツィヒを比較にならないレベルで凌駕している。

 アンフィールドという最も敵意に満ちたスタジアムの空気をものともせず、リバプールの猛攻を守り倒して延長戦で勝利をもぎ取ったラウンド・オブ16の戦いぶりは、このチームのメンタル的な成熟ぶりの証明だ。経験値ゼロのRBライプツィヒに対し、明らかな心理的優位に立って試合を戦うことは間違いないだろう。
 
 アトレティコは、リバプール戦でもそうだったように、RBライプツィヒにボールと主導権を委ねて受けに回り、自陣に築いた堅固なブロックが奪ったボールを、間髪入れず前線に送り込んで、そのセカンドボールからの速攻を狙うという得意のスタイルを徹底するだろう。

 RBライプツィヒはポゼッションによるビルドアップもこなすチームだが、個々のプレーヤーの能力に限界があり、がっちり守備を固めたアトレティコを遅攻で崩せるほどのクオリティーはない。彼らの狙い目はむしろ、敵陣でのボールロスト直後にゲーゲンプレッシングで即時奪回し、そこからのショートカウンターで一気にフィニッシュを狙う形だろう。
 
 しかしもちろん、アトレティコもそれは十分承知の上だ。ボールを奪っても無理につなごうとはせず、安全なところに動かしてそこから素早く前線に送り込むという、「アンチフットボール」を、彼らは平然と繰り返すだろう。

 アトレティコは前線にモラタ、D・コスタという、スピードとフィジカル的な強靭さを併せ持ち、それほど精度が高くないロングボールでも一定の確率でどうにかしてしまう能力を備えたアタッカーを擁している。1試合に一度か二度、うまくロングボールをつないでカウンターで決定機を作り出すだけで、アトレティコが勝利を収めるには十分だ。

 さらに言えば、アトレティコはセットプレーの強さにも定評があり、ゴールを奪うために相手の守備を崩し切ったりカウンターを決めたりする必要すらない。もし延長にもつれ込むことになっても、その時にはベンチからジョレンテやカラスコといった、ワンプレーで違いを作り出すタレントが出てきて決定的な仕事をする余地が残っている。

 絶対的なクオリティーで上回るトップレベルのスーパーメガクラブが相手だと十分とは言えないが、RBライプツィヒのクラスであれば、相手に思い通りのプレーをほとんどさせずに勝利を奪い取るのも、それほど難しいことではないだろう。

分析●ロベルト・ロッシ
翻訳・構成●片野道郎
※『ワールドサッカーダイジェスト8月6日発売号』より転載。同号では、一発勝負の短期決戦となるチャンピオンズ・リーグを大展望している。

【分析者プロフィール】
1962年3月16日生まれのイタリア人監督。MFだった選手時代は名将サッキや元日本代表監督のザッケローニに師事し、99年に引退。01〜08年はインテルなどでザッケローニのコーチ兼スカウト。その後はイタリアの下部リーグで監督を務め、19年1月からチェゼーナ女子(セリエB)を率いる。