U-19日本代表合宿でも、鹿島アントラーズでも同年代との熾烈な競争がある。

 9月14日から3日間に渡って行なわれたU-19日本代表合宿において、鹿島のMF松村優太は、精悍な顔つきで自分の持ち味であるドリブルをアピールした。

 本来、この合宿は1か月後の10月に開催予定だったU-19アジア選手権の直前合宿に相当するものだった。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で来年の初旬へ大会延期が決定したことで、「もう一度プランを練り直さないといけない」と影山雅永監督も頭を抱えるほど、イレギュラーな出来事が起こった中での合宿だった。

 ただ、裏を返せば大会が先延ばしになった分、これまでコアメンバーに入っていなかった選手たちにとっては、再アピールのチャンスがやってきたと言える。不動の存在とは言えない松村はそれを深く理解し、明確な目標と確固たる意思を持って臨んでいた。

「個人のレベルアップもそうだし、自分の良さをチームメイトに分かってもらうことが大事。今、(U-19日本代表は)攻撃、守備の連係部分を合わせている段階でもあるので、そこを要求どおりに着実にこなしながら自分の良さを出すという2つのテーマを持ってやっています」

 前述したように表情が違った。それはプロ1年目だが、彼が鹿島で味わった大きな葛藤に起因していた。今季、松村は選手権優勝の看板を引っ提げて、FW染野唯月、MF荒木遼太郎、GK山田大樹と共に加入。プレシーズンに行なわれた水戸ホーリーホックとの試合では、荒木とともに途中出場し、右サイドからドリブルで仕掛け、積極的なシュートを放つなど上々のスタートを切った。

 しかし、そこから開幕戦でリーグデビューを飾り、中断明けもコンスタントに出場機会を掴んでいった荒木に対し、松村はベンチ入りもままならない。染野も怪我から復帰すると、2節の川崎フロンターレ戦でリーグデビューし、翌節にはスタメン出場。荒木もスタメン出場の機会を着実に増やし、山田も2試合でスタメンを経験した。一方の松村は10節のヴィッセル神戸戦でリーグデビューを飾ったが、翌11節の横浜FC戦で数分出場したのちは、ベンチ外が続いている。
 
 この現実を悔しいと思わないわけがない。葛藤しないはずがない。1年目にして彼はプロの世界のリアルな厳しさを痛感しているだろう。だが、裏を返せば1年目からここまでの経験ができること自体が松村にとって大きな財産である。

 強い危機感を抱きながら日々サッカーに打ち込めているのが、その証拠だ。それは鹿島でもしかり、U-19日本代表でもしかりだ。印象的だったのが、初日に行なわれたリモートインタビューで、同年代である久保建英について聞かれた時の彼の答えだった。

「やはり僕たちの年代のトップの選手ですし、日本サッカー界のトップ。まだまだ足もとにも及ばないと思いますし、僕は(久保のことを)知っていても、向こうは僕のことを全く知らないと思います。でも、同年代には負けたなくない。同じ鹿島でも(フィールドプレーヤーで言うと)荒木がスタメンで出たり、唯月がコンスタントに出て、僕はちょっとしか出ていないので、まずは身近な競争に勝っていかないといけない。じゃないと到底そのレベルにたどり着けない。久保選手はトップトップですが、まずはチーム(鹿島)内の競争に勝たなければいけないと思っています」

 合宿最終日の紅白戦でも彼はドリブルに加え、スペースを作るフリーランニングや、ドリブルすると見せかけて裏へパスを出したりと、自分のプレーとU-19日本代表の約束事をきちんとリンクさせながらプレーしていた。

「このチームの中でもスピードは負けていないと思う。トップスピードに乗った状態のドリブルが自分の武器。それを出すために味方との連係を高めていかないといけないので、この3日間でコミュニケーションをとって、自分の武器を出していけるようにしたいと思います」

 初日のこの宣言をしっかりと表現をした松村。今は悔しい思いの方が強いのかもしれないが、サッカーに対する真摯な姿勢がある限り、必ずやこの経験は今後に生きてくるはずだ。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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