日頃から心身のコンディショニングに気を配っているサッカー選手は“おうち”でどのように過ごし、どのようなことを考えているのか。緊急事態宣言下で迎えるゴールデンウィークに合わせて、選手たちの日々の生活におけるちょっとした工夫やアイデアを紹介します。第6回はセレッソ大阪に所属する都倉賢選手が登場。“おうち”での過ごし方、新型コロナウイルスのこと、SNSの活用術などについて語っていただきました。


取材・構成=山本剛央

写真提供=都倉賢



◆■ラジオ体操のインスタライブ(8:00〜8:30)



毎朝8時にインスタグラムで、僕がラジオ体操している様子を配信しています。やり始めてからまだ1週間くらいですが、思っていた以上に見てくれる方、一緒に参加してくれる方が多くてやりがいを感じています。この状況下だからこそ、たくさんの選手がインスタライブをやっていますが、そのほとんどが夜に行われていて、少し飽和状態だなと感じたこと、加えて、親子で参加してもらえることをやりたいと思い始めてみました。参加してくれる方からは、「スッキリして、すごく気持ち良くなった」とか、「自分の体が硬くなっていることに気づいた」とかポジティブな声をもらっています。朝に何かを能動的にやることが有意義な一日を過ごすきっかけになるはずです。ぜひ皆さんも一緒に体を動かしてみませんか?




◆■チームトレーニング(10:00〜11:30)



有酸素運動などの自主トレーニングを終えた後にチームトレーニングに臨んでいます。セレッソはオンラインミーティングアプリZoomを使って、コーチ陣と選手全員をつなぎながらやっています。フィジカルトレーニングが多い中、少し前に記事にもなったので知っている方もいると思いますが、このZoomを使って映像を駆使したクイズ形式の戦術トレーニングも行いました。ただ、本格的に戦術理解を深めるというよりは、「みんなで同じ時間を共有して楽しもう」という意図があったのかなと。問題を作ったイバン(パランコ)ヘッドコーチはユーモアのあるスペイン人。5問に1問くらいは面白いのがあって、例えば「この選手は誰?」という問題の答えに、若い頃のキヨ(清武弘嗣)が出てきたり(笑)。1問を終えるごとに正解率の高い上位5選手がリアルタイムで表示されるから、より一層盛り上がりました。僕はその5人に入れず悔しかった……。




◆■自由時間/YouTube収録など(14:00〜17:00)



実は3月下旬にYouTubeチャンネルを開設しました! 昨年5月に前十字靭帯損傷の大ケガを負い、そこから「プレーできないサッカー選手の価値って何だろう」と考え続けてきました。ピッチ外でもチームに貢献したいという思いがあり、かつ「価値の創造」をテーマとして考えた結果、YouTubeにチャレンジしてみよう、と。少しずつ準備を進めてきた甲斐があって動画の素材はある程度たまっていたため、このタイミングでスタートしました。始めてからまだ1ヶ月強ですが、周囲の反応は思っていた以上にいいです。取材依頼があったり、話題にしてもらったり、YouTubeをやるということはプラスアルファの肩書きになるんだな、と感じています。すでに15本以上動画を公開していて、これからも随時アップしていくので、ぜひ一度チェックしてみてください!



──今回は「おうちWEEK」の企画の一環として、家での過ごし方などについて聞かせてもらえればと思います。自粛期間は1ヶ月を過ぎましたが、現在の心境はいかがですか?


都倉賢(以下、都倉) 言い方は悪いんですが、サッカーができないことに対して、さすがにちょっと飽きてきています。もちろん、新型コロナウイルスが世の中にとって大変な問題であることは間違いありませんが、「やっぱりサッカーがしたい」という思いが一番強いですね。


──自宅でのトレーニングにも限界がありますよね。


都倉 はい。サッカーは広いグラウンドでやるスポーツですからね。自宅でのトレーニングはインテンシティーが上がってきていますが、サッカーができない状況が続くと、せっかくのトレーニングもあまり意味を持たないので。体はどんどん仕上がってきているけど、ノッキングを起こしてしまう。この状況はリハビリ生活と似ているなと感じます。精神と肉体のギャップというか。リハビリ中も、もう一つ上の段階(の練習やトレーニング)にいけそうでいけない時があって、すごくストレスを感じてしまう。「早くボールを蹴りたい!」と。そういった意味で僕は昨年5月にひざの大ケガをしただけに、今のこの自粛にも他の人より免疫があるのかもしれませんが、言い換えれば、だからこそ「サッカーがしたい」と強く思うのかもしれません。しっかりとコロナウイルスの問題が解決されて、早く2020シーズンを戦いたいです。


──セレッソ大阪は4月1日に永石拓海選手が新型コロナウイルスのPCR検査で陽性反応が出たことを発表しました。身近な存在が感染したことでコロナウイルスに対する意識が変わるきっかけになったのではないでしょうか?


都倉 それは間違いないです。2月、3月頃はおそらくほとんどの人が「自分は感染しない」と思っていたはずです。僕もそう思っていました。気をつけてはいたものの、チーム練習も行われていたし、今ほど徹底した対策はできていなかった。そういった中で選手から感染者が出て「健康的なアスリートも感染するんだ」と驚きました。それで真剣にコロナウイルスと向き合うようになったし、自分事としていろいろ考えるようになりました。


──その後は、濃厚接触の疑いがあるということで選手の皆さんは保健所の健康管理下のもと自宅待機となりました。


都倉 12日間ずっと家にいましたね。やはり今回のコロナウイルスは誰かに感染させてしまうことが怖いので、散歩や買い物も自粛していました。そういった経緯があってコロナウイルスに対する自分のスタンスを作ることができた。もちろん永石はつらかったと思うし、コロナにかかったこと自体が悪いわけではないけど、やっぱりそういう目で見られてしまうから、精神的に彼が一番つらい思いをしている。ただ、彼がしっかり健康になって戻ってきたことでセレッソ内での問題は解決しました。彼が感染したことにより、選手それぞれが、チームが、コロナウイルスという問題に真剣に向き合うようになれたし、それが今、クラブや選手の感染拡大防止に対する積極的な活動につながっていると思います。


──感染拡大防止のため、ゴールデンウィークも多くの人が自宅で過ごしています。そんな人たちに向けてストレスを溜めないコツや、メンタル面で心がけるべきことをアドバイスしてもらえますか?


都倉 やっぱり自宅であっても体を動かすことですね。先に紹介した朝のInstagramでのラジオ体操は気晴らしにもなるし、体が温まってスッキリするはずです。何か問題や課題があったとして、それを解決しようとする際、どんよりとした暗い気持ちで取り組むのと、ある程度スッキリした気持ちで取り組むのとでは、たぶん解決に向けた方法や改善策、思考が変わるんじゃないかと僕は思っていて。サッカーに置き換えても何か課題が出てきたとき、僕はそれを嘆くのではなく、どうすれば一番いい方法で解決できるかという思考を持つようにしています。ちょっとした運動やストレッチでもいいと思うので、体を動かすことがメンタル面の健康にもつながっていくはずです。


──Instagramの話が出ましたが、Twitter、Instagramに加えて、TikTokとYouTubeも開始した都倉選手の発信力はJリーガー屈指だと思います。発信に力を入れようと思った、そもそもの動機やきっかけは何だったのでしょうか?


都倉 きっかけは妻ですね。妻は若い頃に起業していてセルフブランディングなどをすごくうまくやっています。SNSを通じて自分の価値を高めていく、というテクニックに長けている。すぐそばでその姿を見ていて感化されたというか。「サッカー選手」は子供たちに夢を与えられる素晴らしい職業ですが、肩書自体が大きくなり過ぎているとも思っていて。つまり、サッカー選手じゃなくなった途端に価値が下がってしまう、と。もちろん、ずっと現役でい続けることは不可能ですし、それだったら現役のうちからいろいろなことを始めておいたほうが、引退後もうまくいく可能性が高まるはず。そういう考えのもとSNSにも力を入れています。


──自粛期間はSNSを楽しむ人も増えています。都倉選手はどんなふうに楽しんでいますか?


都倉 Twitter、Instagram、TikTok、YouTube、全部楽しみ方が違いますからね。TikTokは僕にとってYouTubeの練習版のような感じで、いかにインパクトのある面白い動画を作れるかが大事。YouTubeはそれだけではないですが、そういう感覚をTikTokを通じて知ることができたなと思っています。Twitterは文字どおり自分の心のうちをつぶやいたり、自分の考えを言語化する練習にもなっている。自分のツイートについて、みんなの反応を見たり、アンケート機能を使っていろいろな人の考えを知ることもできます。「ああ、そういうふうに思う人もいるんだな」とか。あと、Instagramは……今、自分の中でどういう方針でやっていくのか少し迷っていますが(苦笑)、それでもインスタライブをすると一定の方が見てくれるし、ライブ配信の中では一番気軽に見られるプラットフォームになっていると思うので、写真を投稿して一方的に情報を届けるというよりは、インスタライブでの双方向コミュニケーションと、ストーリーズのスワイプ機能を使って他のところへの導線として機能させたいな、と。今、軸としているYouTubeに流れてきてくれるような仕組みを少しずつ作っていければいいなと考えています。


──YouTubeを続けるのは、大変なことも多いのでは?


都倉 やっぱり動画コンテンツは、最初にしっかり企画の軸を決めないといけない。その上で構成を考える必要があります。ただ淡々とやっていてもダメですしね。自粛期間になる前はカメラマンとディレクターと僕の3人で撮影していたのですが、今は僕一人でiPhoneを駆使して撮っています。だから、「テンションの上げ方」が一番大変なんですよ。カメラマン、ディレクターがいるときは、その人たちに向かってしゃべれるじゃないですか。Instagramのライブ配信も、ライブだからしゃべっている先に誰かがいると思えますが、YouTubeの一人での収録は最初、「あれ? 俺、何やってんだろう」と。それで映像を見返すとやっぱり表情が暗かったりして、「これは大変だな〜」と(笑)。


──それは確かに虚しさを感じるし、難しそうですね(笑)。サッカーの話題に戻りますが、現時点で2020シーズンはどんなふうになると予測しますか?


都倉 まだまだ不透明な状況ですが、普通に考えると日程が少なくなるぶん、過密スケジュールになりますよね。そうなってくると、よりチームの総力が問われることになる。その点において、セレッソは昨シーズンからロティーナ監督のサッカーを積み上げてきてベースはできていますから、今シーズンがイレギュラーなリーグ戦になったとしてもあまり心配はないのかなと。選手みんなの頭の中には、ロティーナ監督のサッカーが浸透していますから。


──過密日程になるとチームや選手への負担が増します。その過密日程を見越して今のうちからできることは何かありますか?


都倉 いや、さすがにそんな秘策は思いつきませんが、連戦を戦い抜くポイントは試合翌日になるべく疲労を残さないようにすること。そこに尽きると思います。なので、リーグ再開後は選手一人ひとりのケアがすごく重要になる。僕自身も今年34歳ですし、疲労回復はいろいろと工夫しながらやっていかないといけないなと思っています。


──Jリーグの再開を待ち望んでいるのはファン、サポーターの方も同じです。皆さんに向けたメッセージをお願いします。


都倉 自粛が続いていますが、家の中でもできることはたくさんありますし、僕自身、家の中にいたからこそ新たな発見や成長がありました。今まで外の世界に向けていた目を自分に向けることで、成長するきっかけになると思います。また、サッカー選手は今、自分たちの新たな価値を証明するためにSNSで発信したり、ライブ配信を行ったりしています。ファンの皆さんにとっては、選手たちのパーソナリティーに迫れるいい時間になるはずです。今は思う存分、選手たちの新たな一面を感じてもらって、いざシーズンが始まったときに応援する一つのモチベーションにしてもらえたらいいなと思っています。Jリーグのスタジアムで会える日を楽しみにしています!