「サポーターが望んでいるのは僕のゴールでチームが勝つこと。それが今日は叶わなかったので、皆さんには申し訳ない気持ちでいっぱいです。でも連戦なので、できるだけ早く気持ちを切り替えないといけない。落ち込んでる暇はないし、次にどうやって勝つかを最大限考えてやっていきたいです」


 東京五輪世代の絶対的FW小川航基が悔しさをにじませた通り、27日のJ2再開初戦でジュビロ磐田は京都サンガに0−2の完敗。1年でのJ1復帰に向けて、手痛い黒星発進を強いられた。


 2月23日の今季開幕戦ではモンテディオ山形相手に2ゴールと最高のスタートを切った背番号9も、この日ばかりはシュートゼロ。チャンスらしいチャンスも作れず、苛立ちを募らせたまま72分でベンチに退いた。


「ジュビロが幅を広く使った攻めを仕掛けてくるのは分かっていた。『ボールを持たせている』というイメージでチームとしては戦えましたし、相手が危険なエリアでプレーする回数が少なかったので、僕らからしたら怖いプレーの数は少なかったです」と京都のキャプテンで3バックの一角を占める安藤淳がしてやったりの表情を浮かべたように、小川とルキアンの2トップは動きを封じられる結果となった。


 フェルナンド・フベロ監督が昨季から浸透させている最終ラインからの丁寧なビルドアップはできていても、人数をかけて守ってくる相手DF陣を打開する迫力や創造性がなければ、ゴールは奪えない。ルキアン、三木直土らFW陣との連携面を含めて、もう一工夫が必要であることを、小川は痛感させられたことだろう。


「引いてくる相手にどうシュートを打って得点を奪っていくのか。それはこの1週間で取り組む必要がある。チームとしての共通意識を持って次戦への準備をしていきたい」と22歳のエースFWは気を引き締めた。


 その点取り屋を生かすためにも、後方からのボール供給回数増は重要テーマと言っていい。京都戦でボランチとしてリーグ初先発を果たし、途中からはアンカー役も担った伊藤洋輝には、より攻撃のお膳立てへの意識を強めてもらう必要があるだろう。


「チームとしてやろうと準備していた戦術の部分が課題として残った。泥臭いサッカーになっても3ポイントをつかまなきゃいけないので、そういうところをもっと貪欲にやっていきたいです」と21歳の若き大型ボランチは自覚を強めたが、持ち前のボール奪取力や球際の強さ、寄せの激しさに加えて、パス出しの部分を研ぎ澄ませることがより求められてくる。チームとしてボール支配率では上回っていたのに、小川らFW陣に決定機が生まれなかったのも、中盤から相手の背後を突くような勝負パスが少なかったから。その課題を改善し、前線での推進力と迫力を高めることができれば、磐田はもっと得点を奪えるに違いない。


 2019年の柏レイソルのような頭抜けた存在のいない今季J2はまさに実力伯仲のリーグ。磐田も確実にゴールを積み上げ、一つひとつの勝負をモノにしていかなければ、最高峰リーグへの返り咲きは叶わない。小川と伊藤の東京五輪世代コンビが力強くチームをけん引しなければ、フェルナンド・フベロ監督の思惑通りに物事は運ばない。この日、開業したばかりの亀岡市・サンガスタジアムにわざわざ視察に訪れた森保一監督にとっても、2人の覚醒は待ち望まれることだろう。


 25日の国際サッカー連盟審議会で東京五輪出場資格が「97年1月1日以降生まれ」と正式決定したのを受け、彼らはここから1年後の大舞台に向けて再スタートを切ることになる。これまで軸に据えられてきた小川、実績の少ない伊藤もフラットな競争を強いられるため、今季J2での一挙手一投足が極めて重要になってくる。今回の京都戦では森保監督の目前でのアピールは成功しなかったものの、まだまだチャンスは残されている。7月だけでもファジアーノ岡山、レノファ山口、徳島ヴォルティスといった昇格を狙うチームとの対戦が目白押しだけに、足踏み状態は許されない。2人が「磐田を勝たせられる存在」にならなければいけないのだ。


「ジュビロで活躍して、森保一監督の目に留まって、本大会メンバーに選ばれて、東京五輪を迎える。それが理想的な形。ジュビロがJ1で勝ち続けて優勝する。1年でJ1に昇格できれば、そうなる可能性も高まってくると分かっています」と小川は前々から何度も繰り返しているが、J2でスーパーな働きを見せてこそ、初めて認められる。7月4日に再開されるJ1では上田綺世(鹿島)や田川亨介(FC東京)らも奮起するだろうし、欧州組の前田大然(マリティモ)らも虎視眈々とポジションを伺っている。決してウカウカしていられないのは事実だろう。伊藤のボランチにしても田中碧(川崎)や田中駿汰(札幌)、中山雄太(ズウォレ)らライバルがひしめくだけに、より強烈なインパクトを残さなければ生き残れない。


 厳しい現実を今回のJ2再開ゲームで再認識させられたことは、今後への大きな糧になるはず。名門・磐田を担う東京五輪世代コンビがここからどう変貌を遂げるのか。攻守両面でいかにしてチームをリードしていくのか。2人の覚悟のほどを見せてもらいたい。


文=元川悦子