7日から再開したチャンピオンズリーグ(CL)は、8強が出そろった。休む間もなく、12日からは準々決勝がスタートする。


 ここから全てのゲームは、中立地であるポルトガルのリスボンで開催。さらに“一発勝負”で決着をつける。もちろんスタンドに観客の姿はなく、ピッチでプレーする選手たちにとっても、試合を見る側の我々にとっても、未知の世界だ。


 そんな異例の状況だからこそ、クラブや選手の格を比較しただけでは勝負の行方は見えてこない。この先は試合勘やコンディション、さらには“勢い”といった要素がいつも以上に重要になってくるだろう。


◆◆アタランタvsパリ・サンジェルマン

 その点において、アタランタとパリ・サンジェルマンは好対照な状況で大一番を迎える。アタランタは6月のセリエA再開からリーグ戦13試合を消化。最終節のインテル戦こそ完封負けを喫したものの、9勝3分け1敗という好成績で3位フィニッシュを成し遂げた。中断前の勢いを落とすことなく、中10日の休養日を挟んでポルトガルでの決戦に臨む。


 対するパリ・サンジェルマンは、新型コロナウイルスの影響でリーグ・アンが4月末に打ち切りを発表。7月24日にクープ・ドゥ・フランス決勝、同31日にクープ・ドゥ・ラ・リーグ決勝の2試合を戦うまで、4カ月半も公式戦がなかった。2試合連続の“一発勝負”を制して国内3冠を達成したものの、CLベスト8入りを決めたドルトムント戦(3月11日開催/2−0で勝利)以降の5カ月間でアタランタ戦が3試合目となる。「国内戦とは全く別物」と言われるCLで、いきなりトップギアに入れるのかという疑念は拭えない。


 同じフランス勢で、ユヴェントスを退けてベスト8入りを果たしたリヨンのように、パリ・サンジェルマンもこのアタランタ戦に照準を合わせて準備を進めてこれたというメリットはある。ただ誤算だったのが、ケガ人の続出だ。


 クープ・ドゥ・フランス決勝では、FWキリアン・エンバペが右足首をねん挫。続くクープ・ドゥ・ラ・リーグ決勝でも、DFレイヴァン・クルザワがハムストリングを痛めた。さらにDFティロ・ケーラーも、MFマルコ・ヴェラッティも負傷し、7日には、なんとトーマス・トゥヘル監督が左足首のねん挫と第5中足骨の骨折で故障者リスト入りとなった。もはや呪われていると言っても過言ではない。


 エンバペは9日になって練習復帰を果たしたものの、指揮官が「今回の試合はCLの準々決勝で、フレンドリーマッチではない」と話すように、どこまでのパフォーマンスを見せられるかは不透明だ。またアタランタ戦は、MFアンヘル・ディ・マリアが累積警告で出場停止。契約満了で退団したDFトーマス・ムニエやFWエディンソン・カバーニも不在で、先発メンバーやゲームプランの再考を余儀なくされている。準備期間の長さという、パリ・サンジェルマンが持っていた最大のアドバンテージは無くなったも同然だろう。


 そんな危機的状況の中で唯一、ポジティブな材料を挙げるとすれば、FWネイマールの状態か。「パリに来てから最も調子がいい」と本人が認めるほどコンディションが良好で、2つの国内カップ戦決勝ではゴールを挙げるだけでなく、キレ味鋭いプレーを連発した。過去2シーズンのCL決勝ラウンドはケガで棒に振っているため、今大会にかける意気込みも相当強い。“背番号10”への期待感はこれまでにないほど高まっている。


 一方、初出場で8強入りを果たしたアタランタも、チームトップスコアラーのFWヨシップ・イリチッチが「個人的な問題を抱えている」として欠場濃厚だ。それでも、ルイス・ムリエルとドゥバン・サパタの両FWがセリエAで18ゴールを挙げる活躍を披露しており、パリ・サンジェルマンほど致命的なダメージはない。


 何より、彼らにラストパスを供給する“10番”アレハンドロ・ゴメスの存在は心強い。32歳のキャプテンは、今シーズンのリーグ戦36試合で7ゴールを挙げ、アシストはランキング2位の「14」をマーク。セリエAの最優秀MFに輝いた。相手のギャップを突くのが巧みで、守備戦術に優れているとは言い難いパリ・サンジェルマンを攻略するキーマンとなる。


 両チームの特徴を挙げるならば、共に“超”がつくほど攻撃的。どちらも今シーズンのリーグ最多得点を叩き出し、1試合平均得点はアタランタが「2.58」、パリ・サンジェルマンが「2.78」となっている。CLにおいても、ここまで平均2ゴール以上を叩き出している両チームだ。一発勝負となると、負けられない思いが強くなるあまり、堅い試合展開になりがちだが、この試合に限ってはそうした心配は無用かもしれない。どちらかに1点が入ったあとは、“打ち合い”になる可能性も十分にある。


 イタリアの“プロヴィンチャーレ(=地方クラブ)”と、中東資本をバックに持つメガクラブという対照的なクラブ同士が相まみえるこの一戦。“格差対決”としても注目を集めているが、攻撃自慢の両チームだからこそ派手なゲームが期待できそうだ。


◆◆ライプツィヒvsアトレティコ・マドリード

 翻って、13日に行われるライプツィヒ対アトレティコ・マドリード、昨シーズンのファイナリストを下して準々決勝にたどり着いた両チームの試合は、1点を争う緊迫したゲームになりそうだ。


 その理由の一つに挙げられるのが、アトレティコの強固な守備だ。今シーズンのリーグ戦失点数(27)は、欧州4大リーグでレアル・マドリード(25)に次いで2番目に少なかった。6月の再開以降は11試合でわずか6失点。GKヤン・オブラクを中心とする守りは今も鉄壁を誇る。


 前半戦は極度のスランプに陥り、不安定な戦いが続いたものの、3月のCLラウンド16でリヴァプールを撃破。前年度王者を敗退に追いやったことで自信を取り戻した。再び上昇気流に乗ったアトレティコからゴールを奪うのは容易ではない。


 ロースコアのゲームが予想されるのは、ライプツィヒ側にも理由がある。ここまでの快進撃を支えてきたエースがすでにいないからだ。チーム最多の公式戦34ゴールを挙げていたFWティモ・ヴェルナーは、6月末のブンデスリーガ終了後にクラブを退団。すでに新天地のチェルシーに合流し、ライプツィヒのCL登録メンバーからは外れている。


 ラウンド16では、トッテナムを相手にアウェイで1−0、ホームで3−0の“ダブル”を達成。パーフェクトな結果を収めたが、チーム総得点の3割以上を叩き出していたストライカーが不在となった今、得点力の低下は避けられない。


 そこで、ユリアン・ナーゲルスマン監督が考えたアトレティコ対策が“バルサ化”だという。33歳の若き智将は「バルサがここ何年もリーグ戦でアトレティコ相手に見せたようなプレーをするため、テクニックに優れた選手を中盤に多く配置するかもしれない」と語っている。


 ディエゴ・シメオネ監督率いるアトレティコは、リーガ・エスパニョーラでバルセロナに一度も勝ったことがない。その天敵の戦い方を参考にするというのだ。幸い、ライプツィヒの中盤には、ダニ・オルモ(バルセロナの下部組織出身)、ケヴィン・カンプル、マルセル・サビツァー、クリストファー・エンクンク、エミル・フォルスベリと、テクニカルな選手が揃っており、バルセロナの“完コピ”は難しくても、同じようなスタイルのサッカーをすることは不可能ではない。


 無論、付け焼刃の戦術で勝てるほどCLは甘くないが、「リーガ・エスパニョーラの関係者の何人かに連絡を取って情報を貰った」と、ナーゲルスマン監督は明かしている。来るべき本番に向けて、着々と準備を進めているようだ。


 一方、アトレティコには追い風が吹いている。CL決勝で2度にわたって敗れた宿敵レアル・マドリードが、マンチェスター・Cに敗れてラウンド16で敗退。また、FWクリスティアーノ・ロナウド擁するユヴェントスもリヨンを上回れず、大会から姿を消した。シメオネ監督就任以降のアトレティコがCLの決勝ラウンドで敗退に追い込まれたのは、C・ロナウドが所属する上記2チームと対戦した時だけ。それ以外の相手に対しては常に勝ち抜けを達成しており、優勝への可能性がグッと高まっているのだ。


 9日になって、選手2名(FWアンヘル・コレアとDFシメ・ヴルサリコ)に新型コロナウイルスの陽性反応が出たことが明らかになったものの、再検査の結果、新たな感染者は確認されず。ポルトガルへの遠征日程や練習スケジュールの見直しを余儀なくされたが、チームに大きな動揺はないものとみられる。


 相手が何を仕掛けてくるか分からないという怖さこそあるものの、キャプテンのMFコケをはじめ、FWジエゴ・コスタ、MFサウール・ニゲス、DFホセ・ヒメネスなど、アトレティコには大舞台を経験してきた選手が多い。「パルティード・ア・パルティード(=一戦、一戦)」を信条とするシメオネ監督もライプツィヒを侮ることは決してないだろう。“ウノゼロ(1−0)”を得意とするアトレティコにとって、1試合の一発勝負という特異なレギュレーションもむしろ好都合だ。


 いずれにせよ、勝敗のカギを握るのは先制点。アトレティコが先にリードを奪えば、限りなく優位に試合を進めることになるだろうが、ライプツィヒも今シーズンのブンデスリーガで先手を奪った試合は負けがない(14勝3分け)。だからこそ、たった1つのゴールが明暗を分ける――そんなゲームになりそうだ。


(記事/Footmedia)