恒星がハイペースで形成されているスターバースト銀河の一例として知られる「NGC 6240」は、銀河どうしが合体した合体銀河としても知られています。今回、チリに建設された「アルマ望遠鏡」によって、NGC 6240にある超大質量ブラックホール周囲の様子が詳細に観測されました。

■混沌とする銀河の中心付近を高解像度で観測

合体銀河「NGC 6240」の中心に存在するとみられる2つの超大質量ブラックホール(左上、右下)周辺の想像図(Credit: NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello)

へびつかい座の方向およそ4億光年先にあるNGC 6240は、銀河の合体によって崩れた形をしています。その中心部分には合体した銀河がそれぞれ持っていた超大質量ブラックホールが接近して存在するとみられており、いずれは合体して1つの巨大なブラックホールになると予想されています。

合体の影響を詳しく観測できるNGC 6240は研究者の注目を集める銀河のひとつですが、従来の観測手段ではブラックホール周辺の様子を探るには解像度が不足していました。今回、Ezequiel Treister(エゼキエル・トライスター)氏らの研究チームは高解像度が特徴のアルマ望遠鏡を使うことで、NGC 6240の超大質量ブラックホール周辺の様子を従来の10倍の解像度で観測することに成功しました。

従来の研究ではブラックホールがガスの円盤を伴っている可能性が指摘されていましたが、今回の観測の結果、予想されたような円盤は確認されませんでした。そのかわりに、ブラックホールのあいだには糸状や泡状の混沌としたガスの流れが存在していることが明らかになりました。

研究に参加したAnne Medling(アン・メドリング)氏によると、これらのガスはいずれブラックホールに取り込まれるか、外部に高速で放出されることになるようです。今回の観測でも、ガスの一部が秒速およそ500kmで外部に放出されていることが確認されています。

また、NGC 6240の超大質量ブラックホールの質量は、過去の研究において最大で太陽の10億倍に達するとも推定されていました。今回の観測によってブラックホールの周辺に広がるガスの総質量が割り出されたことで、ブラックホールの質量は過去の推定値よりも5%〜90%軽かった(※推定値による)ことも判明しています。

■3つ目のブラックホール、アルマ望遠鏡では確認できず

右上:アルマ望遠鏡が捉えたガス(青)とブラックホール(赤)の様子。左:アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡の観測データを合成したもの。右下:左の合成画像からブラックホール周辺を拡大したもの(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), E. Treister; NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello; NASA/ESA Hubble)

NGC 6240については昨年、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)を使った観測によって、その中心部分に3つ目の超大質量ブラックホールを発見したとする研究成果がWolfram Kollatschny氏らの研究チームによって発表されています。

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しかし、アルマ望遠鏡を使った今回の研究では、3つ目のブラックホールは確認されませんでした。Treister氏は「ブラックホールではなく星団の可能性もあるが、判断するにはさらなる研究が必要になる」とコメントしています。

数億年後にはまったく違った姿に進化していると予想されるNGC 6240。今回の研究成果によって、銀河の合体の最終段階についての理解がより深まることが期待されています。

 

Image Credit: NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello
Source: ALMA / 国立天文台
文/松村武宏