銀河全体よりも明るく輝く活発な銀河中心核「クエーサー」の中心には、宇宙誕生から数億年の時点ですでに超大質量ブラックホールが存在していたと考えられています。今回、「ハッブル」宇宙望遠鏡を使ったクエーサーの観測によって、クエーサーが放射する強い電磁波が銀河そのものの成長を抑制していた可能性が示されています。

■星の材料となるガスや塵が光速の数パーセントという速さで吹き飛ばされる

中心にクエーサーがある遠方銀河を描いた想像図(Credit: NASA, ESA and J. Olmsted (STScI))

今回、Nahum Arav氏(バージニア工科大学、アメリカ)らの研究チームによってまとめられ、The Astrophysical Journalにて公開された一連の論文では、遠方の宇宙に位置する13個のクエーサーが研究の対象となっています。

研究チームがハッブル宇宙望遠鏡による紫外線の観測データをもとにこれらのクエーサーを分析したところ、クエーサーから放たれた電磁波の放射圧によって、毎年太陽数百個分に相当する星間物質(星々のあいだの空間に存在するガスや塵)が吹き飛ばされている様子が明らかになりました。

何千億個もの恒星が存在する銀河全体のさらに1000倍も明るく輝くこともあるクエーサーがもたらす放射圧は強力で、加速された星間物質の速度は光速の数パーセントに達するようです。また、電磁波が星間物質にぶつかる衝撃波面では温度が数十億度まで急上昇し、X線をはじめ可視光を含むさまざまな波長の電磁波で輝くことになるといい、その様子をArav氏は「銀河のいたるところにクリスマスツリーが飾り付けられたような、壮大な光のショー」と表現しています。

クエーサーによる星間物質の流出は、銀河の大きさに関する謎を解く鍵になるかもしれません。理論上、銀河の大きさはこれまでに観測されたものよりも100倍ほどにまで成長できると予想されていますが、星の材料となる星間物質を吹き飛ばすクエーサーの活動は、銀河の成長にブレーキをかける一つの要因である可能性があります。

宇宙論研究者のJeremiah P. Ostriker氏(コロンビア大学/プリンストン大学、アメリカ)は、今回の研究成果について「巨大な銀河の星形成を停止させるプロセスの存在は数十年に渡り知られてきたが、その詳しい仕組みは謎だった。私たちのシミュレーションにおいては、観測された星間物質の流出を反映させることで、銀河の進化におけるこの問題が解決に導かれている」とコメントを寄せています。

 

Image Credit: NASA, ESA and J. Olmsted (STScI)
Source: NASA
文/松村武宏