左からダイネティクス、スペースX、ブルー・オリジンが提案した月着陸船を描いた想像図(Credit: NASA)

2024年の有人月面探査再開を目指す「アルテミス計画」を進めているNASAは、アルテミス計画で用いられる「有人着陸システム(HLS:Human Landing System)」を開発する民間企業として3社を選定・契約したことを発表しました。今回の契約総額は9億6700万ドルで、期間は2021年2月まで。選ばれた3社は各々が提案した有人着陸システムの検討・開発をさらに進めていくことになります。

■ブルー・オリジンのチームは3モジュール構成の着陸船を提案

ブルー・オリジン主導で開発中の「ILV(統合型着陸機)」を描いた想像図(Credit: Blue Origin)

1社目はジェフ・ベゾス氏が率いるブルー・オリジンです。ブルー・オリジンはロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、ドレイパーの3社と協力して「ILV(Integrated Lander Vehicle、統合型着陸機)」を開発しています。

ILVは3つのモジュールから構成されます。宇宙飛行士の搭乗と月面からの離陸に用いられる「上昇モジュール」は、ロッキード・マーティンが「オリオン」宇宙船のシステムを利用して開発。上昇モジュールを乗せて月に着陸する「下降モジュール」は、ブルー・オリジンが開発中の月着陸船「ブルー・ムーン」が元になります。上昇モジュールと下降モジュールを着陸に備えた軌道に乗せるための「トランスファーモジュール」は、ノースロップ・グラマンが国際宇宙ステーションの補給用に運用している「シグナス」補給船のシステムを元に開発されます。

■ダイネティクスの月着陸船は単体で離着陸、将来の再使用も視野に

ダイネティクス主導で開発中の「Dynetics HLS」を描いた想像図(Credit: Dynetics)

2社目はダイネティクスです。ダイネティクスはアルテミス計画のSLS(スペース・ローンチ・システム)や国際宇宙ステーションなどにハードウェアを供給している企業で、25社以上が参加する大規模なチームを結成しています。

ダイネティクスが提案する「Dynetics HLS」は単体で離着陸を行う着陸船が中核で、公開されているコンセプト動画では使い捨てのドロップタンクを最初から装着した状態で一度に打ち上げることが想定されています。エンジンがクルーキャビンの左右に配置されているため月面との高低差が低く、乗り降りの負担が少ないことも特徴としてあげられています。また、将来的には燃料の再補給による機体の再使用も検討されています。

■スペースXはスターシップをベースにした月着陸船を提案

スペースXが開発中の月着陸用「スターシップ」を描いた想像図(Credit: SpaceX)

3社目はスペースXです。スペースXは「ドラゴン」補給船の運用をはじめ、今月下旬に有人テスト飛行が近づいている有人宇宙船「クルー・ドラゴン」や完全再使用を目指す大型宇宙船「スターシップ」を開発するおなじみの企業です。

スペースXが提案した着陸船はスターシップです。これまでに公開されている情報からは、スターシップを使えばオリオン宇宙船で月に向かうことなく直接月面に降りられるようにも思えますが、スペースXによるとHLSとして提案されたものは翼や耐熱システムを省略した月着陸用の機体となるようです。広いキャビンや貨物搭載量の多さをもとに、持続的な月面基地の運用も可能としています。

A lunar optimized Starship can fly many times between the surface of the Moon and lunar orbit without flaps or heat shielding required for Earth return pic.twitter.com/Zpkldayy85

— SpaceX (@SpaceX) April 30, 2020

なお、3社が提案した着陸船は、いずれもオリオン宇宙船との直接ドッキングや月周回有人拠点(ゲートウェイ)へのドッキングの双方に対応するとされています。仮に2024年に実施予定の有人月面探査ミッション「アルテミス3」までにゲートウェイの準備が間に合わなかったとしても、ミッションはスケジュール通り実施されることになると思われます。

 

Image Credit: NASA
Source: NASA(1) / NASA(2)
文/松村武宏