打ち上げられる長征5号Bロケット(Credit: Tu Haichao/Xinhua)

中国は5月5日に次世代宇宙船の試験機を長征5号Bロケットによって打ち上げましたが、そのコアステージが間もなく大気圏に再突入する見込みです。海外メディアのSpaceflight Nowは、天文学者のJonathan McDowell氏(ハーバード・スミソニアン天体物理学センター)の発言を引用する形で「1991年に落下した旧ソ連の宇宙ステーション『サリュート7』以来、制御されずに落下する物体としてはここ何十年かで最大」と報じています。

■大半は燃え尽きるとみられるものの、一部が地上に落下する可能性も

落下するコアステージは全長約30m、直径5mで、2基のYF-77ロケットエンジンを搭載しています。構造の大部分を占めている液体水素と液体酸素が充填されていたタンクは再突入時に燃え尽きるとみられるものの、密度が高いロケットエンジンのような部分は燃え尽きずに地上へ落下する可能性も指摘されています。

再突入が予想される範囲は北緯41.1度から南緯41.1度に渡る地域で、多くは海域ですが、日本の本州以南や中国の沿岸部を含む陸域も含まれています。米企業のエアロスペース・コーポレーションによると、コアステージが再突入するのは日本時間で5月12日1時38分の前後7時間(5月11日18時38分〜翌12日8時38分)とみられています。

米エアロスペース社による落下地点予想。日本時間5月12日1時38分の予想地点は北アメリカ西方の太平洋上(円で囲まれた範囲)だが、誤差により早まった場合は青い線の場所、遅くなった場合は黄色い線の場所のどこかに落下する可能性があるとされている(Credit: Aerospace Corporation)。

ロケットの一部が大気圏に再突入するのはめずらしいことではなく、エアロスペース社が公開している落下予報の一覧を見ると、世界各国で打ち上げられているロケットの名前が並んでいます。ただ、多くのロケットの場合、サイズが大きな第1段やロケットブースターなどは打ち上げの早い段階で切り離されて落下するため、地球を周回する軌道に乗るのはサイズが小さな第2段以降のステージとなります。

いっぽう、新華社通信が「多段式のロケットよりもシンプルな構造で信頼性が高い」と報じる長征5号Bは、コアステージと4本のロケットブースターのみで構成されています。衛星や宇宙船はコアステージが軌道まで運ぶため、今回のように大きなロケットステージが大気圏に再突入することになります。

The CZ-5B-Y1 core stage is in a 155 x 366 km orbit, and is expected to reenter around May 11. At 17.8 tonnes, it is the most massive object to make an uncontrolled reentry since the 39-tonne Salyut-7 in 1991, unless you count OV-102 Columbia in 2003.

— Jonathan McDowell (@planet4589) May 7, 2020

▲長征5号Bのコアステージの落下について触れたJonathan McDowell氏のツイート▲

なお、近年ではスペースデブリ(宇宙ゴミ)の増加が懸念されていることから、宇宙航空研究開発機構(JAXA)では宇宙ステーション補給機「こうのとり」の打ち上げに用いたH-IIBロケットの第2段を制御落下する実験を続けています。また、軌道に乗るロケットステージではないものの、米スペースXではファルコン9ロケットにおいて第1段の回収・再使用を確立させています。

制御されない落下というと、2018年に制御不能のまま大気圏へ再突入し、南太平洋に落下した中国の宇宙ステーション「天宮1号」が思い出されます。今回のコアステージが人口の密集する地域に向かって再突入する確率は低く、大半が燃え尽きると予想されていることから過剰に心配する必要はありませんが、落下が確認され次第続報をお伝えしたいと思います。

 

Image Credit: Tu Haichao/Xinhua
Source: Spaceflight Now / Aerospace Corporation / 新華社通信
文/松村武宏