土星探査機カッシーニが撮影したタイタン(中央)と土星(左上)(Credit: NASA/JPL/Space Science Institute)

2017年9月まで観測を行っていた土星探査機「カッシーニ」によって、土星の衛星タイタンの両極付近には湖が存在することが明らかになっていますが、カッシーニ到着前に行われた地球上からのレーダー観測では、赤道に近い低緯度地域にも湖が存在するとみられていました。今回、レーダーによって観測されたのは、干上がった湖の湖底だったのではないかとする研究成果が発表されています。

■南緯30度付近にある「ホテイ弧状の地形」はかつて湖だった可能性

Jason Hofgartner氏(JPL:ジェット推進研究所、NASA)らの研究グループは、カッシーニのレーダー高度計のデータと地球上からのレーダー観測によるデータを分析した結果、タイタンの赤道付近にある「ホテイ弧状の地形」や「トゥイ地域」がかつての湖底だった可能性が高いとしています。

2000年代、プエルトリコのアレシボ天文台とアメリカのグリーンバンク天文台によってタイタンのレーダー観測が実施されました。研究グループによると、このときタイタンの赤道付近にはレーダー波を鏡のように反射する領域が確認されており、液体のメタンとエタンに満たされた湖や海からの反射と解釈されてきたといいます。しかし、土星に到着したカッシーニによる観測では、該当する地域にそのような湖は見当たりませんでした。

いっぽう、タイタンの低緯度地域には、氷の火山もしくは干上がった湖と考えられているホテイとトゥイの2つの地域が見つかっています。そこで研究グループは、地球からのレーダー観測と同様に地表に対して垂直にレーダー波を照射するカッシーニのレーダー高度計による観測データを利用して、高度計のデータが存在するホテイの特徴を分析。その結果、ホテイからのレーダー反射波は両極域にある干上がった湖と考えられている地形からのものに似ており、湖の湖面ほどではないものの、ホテイの周囲に比べれば鏡面反射のように観測されることが明らかになったといいます。

湖が干上がるとその湖底はとてもなめらかになる場合があり、地球では米空軍のエドワーズ空軍基地のように滑走路として利用されている例もあります。これらのことから、ホテイとこれに似たトゥイにはかつて湖が存在しており、現在は干上がってなめらかになった湖底が見えているのではないかと研究グループでは考えています。

また、研究グループはタイタンでの事例を踏まえた上で、太陽系外惑星の海を探す上で鏡面反射がすなわち海洋の存在を示すとは限らないと指摘。系外惑星の場合はタイタンのように探査機で確認することができないため、慎重に検討しなければならないとしています。

 

Image Credit: NASA/JPL/Space Science Institute
Source: USRA / Nature Research Astronomy Community
文/松村武宏