大量の塵を含む初期宇宙の回転円盤銀河を描いた図。赤色はガス、青色・茶色は塵を示す(Credit: B. Saxton NRAO/AUI/NSF, ESO, NASA/STScI; NAOJ/Subaru)

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構や早稲田大学の研究者らも参加する国際共同プロジェクト「ALPINE(アルパイン)」は、約120億年前の複数の銀河を観測した結果、これらの銀河が予想よりも早く成熟した段階まで進化していたことが明らかになったとする研究成果を発表しました。

発表によると、銀河の多くは約138億年前に始まったとされる宇宙の歴史の早い段階で形成されたと考えられており、渦巻状の構造、数多くの星、塵(星間塵)や重い元素の増加といった現在観測されている銀河の特徴は、宇宙誕生から10億〜15億年後にあたる銀河の急成長期に形作られたとみられています。そのため、私たちが住む天の川銀河をはじめとした銀河の形成史を理解するには、初期宇宙の銀河を観測することが重要だといいます。

そこでALPINEに参加する研究者らは、初期の宇宙で成長しつつある118個の銀河を調べました。ALPINEは初期宇宙の銀河を多波長で調べる初の大規模探索プロジェクトで、チリの電波望遠鏡群「アルマ望遠鏡」をはじめ、ハワイのマウナケア山頂にある「すばる望遠鏡」や「ケック望遠鏡」、ESO(ヨーロッパ南天天文台)の「超大型望遠鏡(VLT)」、それに「ハッブル」や「スピッツァー」といった宇宙望遠鏡の観測データが用いられています

重元素(水素やヘリウムよりも重い元素)や塵は恒星内部の核融合反応や超新星爆発によって生成されてきたとみられており、時代が下るにつれて銀河に存在する重元素や塵の量は増えていきます。重元素や塵が十分に多い銀河は、研究者から成熟した銀河とみなされます。宇宙が誕生してからそれほど時間が経っていない初期宇宙では成熟した銀河は少ないと考えられていたものの、ALPINEが観測した銀河のうち約20パーセントは重元素や塵が豊富な成熟した段階であることが明らかになったといいます。

アルマ望遠鏡が観測した2つの銀河。大量の塵(黄色)がみられることから成熟した段階にあると考えられている。星形成活動や星の動きを調べるためにガス(赤色)も観測された(Credit: B. Saxton NRAO/AUI/NSF, ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), ALPINE team)

また、初期宇宙では銀河どうしが衝突しやすく、不規則な形の銀河が多いとも予想されていたといいます。しかしALPINEによる観測の結果、初期宇宙の銀河の形態は多様で、衝突の影響がみられず整然と回転する円盤銀河も多いことが判明したといいます。

アルマ望遠鏡はこれまでにもビッグバンから10億年ほど経った時代の塵が豊富な銀河「MAMBO-9」や、約124億年前の回転円盤銀河「DLA0817g」(ヴォルフェ円盤とも)を発見しています。こうした銀河が初期宇宙では一般的な存在だったのか、それとも特殊な存在だったのかは明らかではありませんでしたが、初期宇宙の多数の銀河を観測したALPINEによって、銀河はこれまで考えられていたよりも早く進化していた可能性が示されたことになります。

ただ、これらの銀河がいかにして急速な成長を遂げたのか、一部の銀河がどうやって早い段階で回転円盤を持つに至ったのか、その理由はわからなかったといいます。ALPINEの研究グループでは今後、長時間の観測を通してそれぞれの銀河をより詳しく調査したいと考えているとのことです。

初期宇宙の円盤銀河「ヴォルフェ円盤(DLA0817g)」を描いた想像図(Credit: NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello)

 

関連:124億年前に整った円盤銀河が存在していた。アルマ望遠鏡の観測で判明

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: 国立天文台 (1) / 国立天文台 (2)
文/松村武宏