外国産馬から父内国産の時代へ

2000年の皐月賞で競走中止となったラガーレグルスという馬がいた。前扉が開いた後もゲート内で暴れ続けて競走中止。当然ながらゲート再審査となったのだが、最終審査はトレセン内ではなく、ダービーが行われる東京競馬場。しかもレース開催日に行われ、結果は駐立不良で不合格。

その後はターフへ戻ることなく引退してしまった。観客が立てた音に激しく反応したのが不合格の要因といわれているが、もし無観客で試験が行われていたら、この馬のその後も変わっていたかもしれない。

競走馬は音に敏感な生き物。先日、やたらと単勝万馬券が出た日があったが、もしかすると、これまで音を気にして力を出し切れなかった馬が、ストレスフリーな環境によって久しぶりに全力を出し切れた結果なのかもしれない。とはいえ、お金がかかっている以上、ゴール前で平静を保てというのは無理な注文である(少なくとも筆者は)。「競馬」と「歓声」は切っても切れない関係といえるだろう。

今週始めに緊急事態宣言の延長が発表されたが、ダービー以降もコロナウイルスが収束する気配を見せなければ、観客を入れての開催は難しくなる。

そこで気になったのは新馬戦。実際のところ、地方競馬ではすでに新馬戦が始まっている。ファンがたくさんいる状態で、無観客でのレースしか知らない2歳馬がレースをすれとなれば、物見をして力を出し切れないこともあるだろう。また、ゴール前の歓声に驚いて予期せぬ事態が起こる可能性も否定できない。こればかりはやってみないと分からないが、この不安が杞憂に終わることを祈るのみである。

本題に入って、令和2年5月10日(日)に東京で行われるNHKマイルCの話に移る。今年で25回目を迎えるこのレースは3歳マイル王決定戦なのはもちろん、設立当時はクラシック出走権が与えられていなかった外国産馬の救済レースという意味合いが強かったように思う。

当時は外国産馬全盛の時代でもあり、第1回から6年連続で外国産馬が勝利。21世紀に入ってからは内国産が盛り返し、最近では父内国産の馬の活躍が目立っている。

注目は毎日杯組

NHKマイルC出走馬の前走ⒸSPAIA NHKマイルC出走馬の前走距離ⒸSPAIA

今回も2010年〜2019年までの過去10年のデータを中心に調べていきたい。まずは前哨戦から。

ぶっつけでGIというローテーションが流行っているとはいえ、このGIは時期的なものもあってほとんど見られない。NHKマイルCの王道は最多4頭の勝ち馬を出しているニュージーランドトロフィー(NZT)。ただ、勝率や連対率で見ると皐月賞、桜花賞、そして毎日杯の方が数字はいい。特に毎日杯組は連対率40%を誇る好相性のレースで、今年でいえばサトノインプレッサ、ストーンリッジがそれに該当する。

逆に相性が良くないのはファルコンS。13頭が出走して連対したのは1頭だけ。もともとこのレース自体が同距離、あるいはそれ以上の距離を使っていた馬の方が、1400m以下を使っていた馬より断然成績がいい。今年もファルコンS組の1、2着が直行しているが、厳しい戦いになるかもしれない。

NHKマイルC出走馬の前走人気ⒸSPAIA

このレースは1番人気が5勝しているが、着外も同じく5回ある。さらに、10番人気以下が7頭馬券に絡んでいることを考えると、荒れる可能性が高いレースといえる。

数字で見ると、当日人気より前走人気の方が使えそうなデータが出ている。前走が1番人気だと【5-2-1-15】で勝率20%、連対率は30%を超えている。前走1、2番人気で括ると、半分以上の13頭が連対。今回は当日人気より前走人気を重視したい。

NHKマイルC出走馬の性別/NHKマイルC出走馬の牝馬+条件別ⒸSPAIA

今年は桜花賞2着馬レシステンシアの参戦が盛り上げにひと役買っている。このレースは牡馬8勝に対して牝馬が2勝だが、これは牡馬の方が圧倒的に出走頭数が多いため。勝率、連対率では牝馬の方が若干上となる。

その牝馬を詳しく見ていくと、連対したのは前走で1600m以上を使っていた馬ばかり。ファルコンS勝ちのシャインガーネットはここでもデータ的に厳しくなっている。

桜花賞組は【2-0-0-12】。物足りない数字にも思えるが、大半が8番人気以下での出走。当日、2番人気以内に推された桜花賞組は【2-0-0-2】。ある程度の人気が予想されるレシステンシアにとっては悪くないデータといえる。

NHKマイルC出走馬の生まれた月ⒸSPAIA

1週前データの文章でも触れていたが、このレースは1月生まれが【0-0-0-14】とさっぱり。成長力の問題だとすればあながち無視できないデータ。

素直にこの数字を信用するとなると、1月生まれのサトノインプレッサ、ニシノストーム、ルフトシュトロームの3頭はかなり厳しい立場に追いやられる。特にサトノインプレッサ、ルフトシュトロームの2頭は人気が予想されるだけに、もう荒れる予感しかしない。

皐月賞回避は自信の裏返し?

プラス要素である「前走1、2番人気」を満たして、なおかつ減点がないのはオーロラフラッシュ(抽選)、サクセッション、タイセイビジョン、そしてレシステンシアの4頭。この中で注目したいのはサクセッション。スプリングSで3着に入って皐月賞の出走権利を獲得したにもかかわらず、回避してここに照準を合わせてきた。

スプリングS組は【0-1-1-3】と可もなく、不可もなくという数字だが、この5頭は全てスプリングSで出走権利を得られなかった馬ばかり(賞金的に出走可能な馬はいた)。これを全24回に広げてみると【1-3-1-8】。数字的には大きく変わらないが、スプリングSで3着以内に入って皐月賞の出走権利を得た馬に限れば【1-2-0-0】。

前走スプリングSで3着以内に入った馬の成績



3頭全てが予定通りの皐月賞回避というわけではなかったようだが、クラシックトライアルで勝ち負けできる馬なら、NHKマイルCでも好走できる力があるということだろう。

軸はこの馬で決まりだ。先週に行われた青葉賞を勝ったオーソリティも、皐月賞出走の権利がありながら出走を見送ったのが、結果的に吉と出た。今年は「適材適所」がキーワードになるかもしれない。

相手は減点のないタイセイビジョン、レシステンシア。特にレシステンシアは当日2番人気以内に推されれば厚めに買いたい。あと好走率の高い毎日杯組のストーンリッジ、皐月賞組のラインベックを加える。毎日杯組のサトノインプレッサは1月生まれということで消し。

◎サクセッション
〇レシステンシア
▲タイセイビジョン
×ストーンリッジ
×ラインベック

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。思い出深いのが、1994年にこのレースの前身であるNHK杯を勝ったナムラコクオー。キンググローリアス産駒とは思えない決め手を持っていたのが印象的。いわゆる二刀流の馬で、故障さえなければダートの頂点も狙えたと思っている。