プロ野球の近鉄、日本ハム、楽天の3球団で監督を務めた梨田昌孝氏がSPAIAの単独インタビューに応じた。新型コロナウイルスに感染し、一時はICU(集中治療室)に入るなど生命の危機に瀕したが、5月に無事に退院。闘病生活や今年のプロ野球、高校野球についてなど大いに語った。3回連載の第2回は、今季好調の楽天を元監督としてどう見ているか。

広角に打ち分ける浅村栄斗の凄さ

梨田氏が2018年まで監督を務めた楽天が好調だ。開幕前、最下位と予想した評論家もいた中で、梨田氏はパ・リーグ1位と予想していた。破壊力満点の打線において、特に浅村栄斗のフルスイングが目を引く。

「去年は移籍1年目で遠慮があったけど、今年は三振かホームランでいいと認められた。だから自分を貫いてますね。2ストライクからでもヤマを張って打ったり。ライトでもレフトでも広角にホームランを打てるのが凄いですよ」

SPAIAの打球方向データ(8月14日現在)ではライトが19%、右中間19%、センター16%、左中間26%、レフト20%と、ほぼ均等に打ち分けている。引っ張り専門なら穴もありそうだが、これだけ広角に打ち分けられると相手投手も投げるコースに困るだろう。

「中村ノリ(紀洋)のフルスイングを間近で見てきたけど、浅村の方が振るかも知れませんね」

近鉄監督時代にリーグ優勝した時の主砲の名前を出して浅村の凄さを強調した。

「鈴木大地が入ったのも大きいですね。小深田(大翔)も大きい。浅村をDHで休ませて、セカンドを守らせたりできるから。パ・リーグはDHがあるから、休ませながらうまく選手を使えるんです」

浅村の活躍が目立つが、他の選手とうまく融合しているのが要因のひとつだろう。

三木監督は「よく勉強してる」

また、就任1年目の三木肇監督の采配や起用法も見逃せないという。

「外国人のシャギワ、ブセニッツ、宋家豪を同じ日に投げさせたりとか、ウィーラー、ブラッシュ、ロメロを同じ日に使ったりして、競い合わせたのがよかった。誰を使うかは俺が決めると」

実は三木監督が現役時代、梨田氏が監督を務めていた日本ハムにトレードで移籍してきた経緯がある。日本ハムが押本健彦、川島慶三、橋本義隆、ヤクルトが三木と藤井秀悟、坂元弥太郎の3対3の交換トレードだった。

「日本ハムに来た時は足も手首も悪くて活躍できなかったけど、真面目なタイプでしたね。レギュラーじゃない選手の方が癖を見たり、野球をよく勉強しますね」

現役時代の実績と監督としての力量は必ずしも比例しないが、三木監督はその好例かも知れない。

岸孝之は「体の開きが早すぎる」

課題はやはり投手陣だろう。

「松井裕樹をクローザーから先発にしたけど、5回で100球くらい投げるから難しいんじゃないかな。長い目で見ると、毎日肩をつくらないでいいから先発の方が長生きはできるけど。それと、岸(孝之)は体の開きが早すぎますね。ボールが走らないから体を開いて投げてるので、打者は見やすいでしょう」

楽天が優勝争いで勝ち残るには、通算126勝を挙げている岸の復調は欠かせないだけに気がかりだ。今季は楽天に限らず、クローザーに苦労している球団が多い。新型コロナの感染拡大で開幕が延期された影響は投手の方が大きいと梨田氏は語る。

「今年は投手の調整が難しかった。練習試合もあったけど、先発は2回しか登板してない。普通はキャンプが終わって、オープン戦で最低でも4回は投げますよ。6月は湿気でボールが手になじまないとか、いろんな問題があるし」

楽天はシーズン開幕後に巨人との交換トレードを2件成立させた。6月25日にウィーラーを放出して池田駿を獲得、7月14日には高梨雄平を放出して高田萌生を獲得した。

「高梨は必要だと思うなあ。巨人はいい補強ができたでしょう。ああいうところは原監督はうまいですね」

トレードが吉と出るか凶と出るか、今後の両チームの成績に影響する可能性も小さくない。

采配で勝っている原巨人

セ・リーグはどうだろうか。

「原監督はうまいですよ。投手交代は早いし、いいところで代打を出して成功したり、さすがですね」

8月6日の阪神戦では11点をリードされた8回一死から野手の増田大輝を6番手投手として登板させ、巨人OBらを巻き込んだ論争を呼んだ。

「賛否両論ありますが、私は原監督の采配、増田の起用は支持します。原監督の実績、経験、チーム力、長いシーズンを考えての選択肢だと思います」

独走もあり得るのだろうか。梨田氏が1位と予想したDeNAも追撃している。

「原監督の采配で勝ってる感じがあるんで、起用した選手が当たらなくなるとそこまでじゃないでしょう。DeNAはクローザーの山﨑康晃が失敗したのは痛いですね。今は外国人もあまり良くないけど、佐野(恵太)もそれなりにやってるし、宮﨑(敏郎)もいいから期待はできますよ」

野球を語る時の梨田氏は表情が引き締まり、口調が熱を帯びる。やはり根っからの野球人だ。

《プロフィール》
梨田昌孝(なしだ・まさたか)1953年8月4日、島根県出身。浜田高3年時に春夏連続で甲子園出場。強肩強打の捕手として1971年ドラフト2位で近鉄に入団し、現役17年間で通算1323試合出場、打率.254、113本塁打、439打点。2000年から近鉄、2008年から日本ハム、2016年から楽天で計12年間監督を務め、通算805勝776敗31分け。

・梨田昌孝氏に聞く①新型コロナとの闘病を経て感じたこと