適条件外で善戦の上位馬

12頭立ての少頭数となったが、うち7頭がGⅠ馬とレベル自体は高くなりそうな第162回天皇賞・秋(GⅠ・芝2000m)。無敗の三冠馬が牝牡ともに誕生した現3歳勢が待ち受けていることもあって、古馬の勢力図を再形成するうえでも注目度の高い一戦だ。まずは参考レースから有力馬の地力を確認したい。

【有馬記念】
週中はほとんど雨が降らず乾いた馬場での開催。見た目には野芝が枯れて内側を中心に芝が茶色に映ったが、内目を通った馬の好走も出ており、トラックバイアスは馬場差無しの評価。

レースはアエロリットが後続を大きく離した逃げに出たが、2番手以降も前半1000mを59.6秒程度で通過して前傾1秒以上のハイペース。上がり3F上位馬が上位着順を独占したことからもわかる通り、「後有利」の展開だったといえる。

4着馬フィエールマンはアーモンドアイの真後ろにつけて、4角で捕まえに行く形。リスグラシューやサートゥルナーリアには完敗であったが、超長距離戦以外でも上位争いできることを証明した。ただ、さらに距離を短くしてスタミナが求められにくくなる今回は……。

5着馬キセキはまともに出遅れて後方から。さらに、大飛びの馬らしく小回りのコーナーに苦戦。自身の上がり3Fは11.7-12.0-12.1程度と数字からもコーナーでの加速がうまくいっていないことがわかる。京都や阪神の内回りならこなすが、中山の内回りは合っていない。

9着馬アーモンドアイは終始外々を力み気味に追走。ラスト1F標識の手前で力尽きて馬群に沈んだ。高速馬場の芝中距離がベストの馬。さすがに舞台が向かなかった。

初めて底を見せた絶対女王

安田記念トラックバイアスインフォグラフィックⒸSPAIA




【安田記念】
レース前夜に50mm弱の雨が降ったことで馬場が柔らかくなり、さらに向正面追い風、直線向かい風ながらも34.2‐34.3の引き締まったラップだったことで馬場、展開ともに「後有利」のレースとなった。内外の馬場差はなし。

2着馬アーモンドアイは出遅れて、4角でもゴチャつく形。グランアレグリアは捉えられなかったが、しっかりと格好はつけた。ただ、自身の上がり3Fは11.2-11.1-11.6程度と力を出し切った形であり、ベストの東京競馬場では初めて本馬の底を見た。ベストの東京芝2000mに戻って、どこまで上昇できるか。

7着馬ダノンキングリーは少々行きたがる面を見せ、直線では寄られる場面も。Lyphardをクロスするディープインパクト産駒だけにGⅠではうまく立ち回って勝負したいタイプ。ワンパンチに欠けるが、今回も上位争いに加わって不思議ない一頭だ。

宝塚記念らしい超タフ競馬

【宝塚記念】
レース直前の豪雨により馬場状態が悪化。トラックバイアスも「外有利」に変化し、当日の好走馬直線平均進路は前日から約3頭分外に広がった(土:3.3頭目/日:6.4頭目)。ペースは60.0-61.1の前傾1.1秒。重い馬場状態も相まって「後有利」の競馬であった。

1着馬クロノジェネシスは10キロ増ですばらしい成長力を見せた。終始抑え切れない手応えで、上がり5Fは12.3-11.8-12.0-12.0-12.3程度。上がり1Fだけで2位キセキに0.5秒差をつけており、12.0秒前後の中速持続力勝負では現役馬の中でも頭ひとつ抜けた存在だ。その半面、東京芝2000mに替わる点はマイナスだろう。

2着馬キセキは出遅れて後方からとなったが、折り合いピッタリ。流れが向いたことは間違いないが、1F12.0前後のマイペースで運べればGⅠでも上位の素質馬だ。

負けられない一戦

安田記念で底が見えたアーモンドアイだが、ベスト条件に戻った今回は負けられない。取りこぼしはあっても、馬券圏内を外すことはないだろう。キセキは自身のベストペースで走れればとにかく渋太い。休み明けを使って上積みも大きい。発馬が決まれば、一発まで期待できる。

◎アーモンドアイ
○キセキ

※記事内の個別ラップは筆者が独自に計測したものであり、公式発表の時計ではありません。

ライタープロフィール
坂上明大
元競馬専門紙トラックマン。『YouTubeチャンネル 競馬オタク(チャンネル登録者40000人強)』主宰。著書『血統のトリセツ』。血統や馬体、操法、ラップなどからサラブレッドの本質を追求する。


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