セイバーメトリクスの5つの指標で分析

2019年シーズン、前人未到となる4度目のトリプルスリーは逃したものの、「30本塁打、30盗塁」を見事に達成した山田哲人(ヤクルト)。ベストナインを獲得し、球界において走攻守ともにトップクラスの二塁手であることは言うまでもない。打撃成績について、セイバーメトリクスの指標から分析していく。

142試合出場、打率.271、本塁打35本、打点98、盗塁33。

この成績について、セイバーメトリクスの5つの指標
・OPS(打席での貢献度を表す)
・IsoD(四死球によってどれだけ出塁したかの選球眼を表す)
・IsoP(長打が多い打者かどうかの長打力を表す)
・Spd(走力を表す)
・wOBA(打者の攻撃力。1打席あたりのチームへの得点増加貢献度を表す)
に当てはめてみた。

OPS(打席での貢献度)

1位:鈴木誠也(広島)/1.018
2位:坂本勇人(巨人)/.971
3位:山田哲人/.961

OPSは、「出塁率+長打率」で表す。数値が高いほど、チームの得点増加に貢献する打撃をする打者だと判断できる。山田は打率こそ.2711で、セの打撃成績では19位だが、OPSを見ていくと首位打者を獲得した鈴木、MVPを獲得した坂本と比較的しても、遜色のない数字を残した。また、セでは3位に甘んじたものの、パ・リーグトップの森友哉(西武)の.959を上回っている。それだけに出塁率と長打率の高い打者だとわかる。

IsoD(選球眼)

1位:山田哲人/.130 
2位:鈴木誠也/.118 
3位:筒香嘉智(前DeNA)/.116

IsoDは「出塁率−打率」で算出され、四死球によってどれだけ出塁したかの選球眼を表すものだ。首位打者を獲得したIsoD2位の鈴木は四球103、死球7だが、山田は四球110、死球6と、合わせて116をもぎ取った。打率2割7分台の打者を見ると、IsoD3位の筒香は打率.272で四球88、死球2、神里和毅(DeNA)は打率.279で四球26、死球2。四死球合わせて100を超えるなどそうそうない。この点においても山田の選球眼の高さがうかがえる。



IsoP(長打力)

1位:山田哲人/.288 
2位:ソト(DeNA)/.285 
3位:バレンティン(前ヤクルト)/.273

IsoPは長打が多い打者かどうかの長打力を示す指標であり、算出式は「長打率−打率」。で、これを展開すると「(二塁打+三塁打×2+本塁打×3)÷打数」。計算上、三塁打は二塁打の2倍の評価、本塁打は3倍の評価となる。

本塁打の評価が二塁打より3倍高い。本塁打のタイトルを獲得したソトは43本、山田は35本。すなわち、本塁打で下回っている打者がIsoPで上回るのはどれだけ難しいかということになる。

山田:IsoP.288、打数520、二塁打35、三塁打5、本塁打35
ソト:IsoP.285、打数516、二塁打18、三塁打0、本塁打43

本塁打43本のソトと差はあるものの、山田はそれでもリーグ4位の35本を放ち、さらにソトとのIsoPの差を埋めて余りある二塁打35本(リーグ3位)、三塁打5本(リーグ2位)を記録した。

本塁打数が多い打者は、二塁打数が本塁打数より少なく、二塁打数が多い打者は、本塁打数が二塁打数より少ないケースが多い。その点からすると、山田は本塁打と二塁打が同数。本塁打を一定以上放ち、かつ、二塁打、三塁打も数多く打ったことにより、ソトやバレンティンらホームランバッターを上回り、IsoPで1位になったと言える。



Spd(走力)

1位:近本光司(阪神)/7.034
2位:山田哲人/6.753
3位:大島洋平(中日)/5.769

走力を表すSpdは、盗塁成功率、盗塁企図割合、三塁打割合、得点割合をポイントに変換し、0〜10の数値で評価した指標である。盗塁の成功数だけを見れば、36個で盗塁王のタイトルを獲得した1位の近本が、33個の山田を上回る。だが、盗塁の失敗数については、近本は15個もある一方、山田はわずかに3個しかない。また、盗塁数3位の大島は成功30、失敗7。この点から見ても、山田の成功確率はかなり高い。

三塁打は山田5、近本7、大島3、得点は山田102、近本81、大島89。三塁打数、得点の面からも山田の走力が見てとれる。

wOBA(攻撃力)

1位:鈴木誠也/.444
2位:坂本勇人/.424
3位:山田哲人/.418

wOBAは打者の攻撃力を表す指標だ。四球、単打〜本塁打など項目により得点の比重を変え、1打席あたりのチームへの得点増加貢献度を示す。一般的には.330が平均とされるなか、4割を超えるのは優れた打者の証である。

山田が2019年シーズンで放った141安打のうち、二塁打35本、三塁打5本、本塁打35本と、単打よりも二塁打以上の長打のほうが多い。長打数を見れば、wOBAで1位の鈴木(167安打中、二塁打31、本塁打28)、2位の坂本(173安打中、二塁打26、本塁打40)を上回っている。山田が二塁打以上の長打を高確率で打つことによって、98もの打点につながり、チーム内における得点増加の貢献度が高い選手になっていると言える。

以上のように5つの指標のすべてでリーグベスト3に入った山田。今や球界を代表するスラッガーへ成長したことは、誰もが認めるところだ。

ビル・ジェームズによる「選手のピーク時の年齢」の研究では、ピークを迎えた選手が最も多かったのは27歳という結果が出ている。1992年生まれの山田は、今年28歳を迎える。ジェームズの理論にあてはめると、昨年ピークだったことになるが、はたして20年シーズンも期待通りの成績を残せるか。この先も成長し、4度目のトリプルスリーを達成してもらいたい。

※数字はすべて2019年レギュラーシーズン終了時点。ランキングはセ・リーグ規定打席到達者が対象。