後半戦は別次元

2019年のダルビッシュ有は、前半戦と後半戦でまるで別人だった。前半戦は18試合に先発し防御率5.01と振るわなかった一方で、後半戦は13試合で防御率2.76と快投。後半戦に限れば防御率はナ・リーグの規定投球回を達成した投手のなかで5位の成績だった。米スポーツサイトの12アップが「非現実的」と評するほどの投球内容だった。

顕著だったのは、コントロールの改善だ。後半戦のBB/9(与四球率)は0.77をマーク。9回を投げ切ったとしても、四球を1個出すか出さないかの数字である。しかも、制球力が増しても奪三振力は衰えなかった。

四球と奪三振の割合から投手の総合力を示す、セイバーメトリクス系の指標K/BBは、規定投球回に達したMLBの全投手中1位で16.86。とくに8月には42.0という驚異的な数字を残した。つまり、四球を1個与える間に42個三振を奪う計算である(実際、8月の与四球は1個のみで、奪三振数は42だった。そういう意味で「非現実的」という表現は間違っていると言える)。

変化球投手としてのダルビッシュ、2019年はカット主体の投球に

なぜコントロールが改善したか。その答えはダルビッシュが自身のYouTubeチャンネルで解説しているので、ぜひ参照してほしい。簡単に述べると、調整でのフォーム固めを工夫したのだと言う。

2019年、ダルビッシュは変化球を投げる割合がとても増えた。2015年にトミー・ジョン手術を受けて以降、35%を下回ることがなかったフォーシームの割合が、2019年には26.8%まで減っている。この数字はサイ・ヤング賞投票で2位につけた2013年の27.1%とほとんど同じである。

ただ、投球内容を見ると2019年と2013年は大きく異なる。2013年に最も高い割合で投げていた球種はスライダーだったが、2019年の主体はカットボールだった。MLBではカットボールやツーシームといった「小さく曲がる球」も速球に分類されるが、ダルビッシュに関して言えば90マイル(約144.8キロ)を超える速いカットボールと、82〜85マイル(約132〜136.8キロ)の遅いカットボールを使い分けているため、単なる速球とは言えない。

もっとも、2019年のシーズン序盤はフォーシームが主体だった。4月のフォーシームの割合は40%で、カットボールは21.1%にすぎなかった。ただ、シーズンが進むにつれこの割合は逆転し、9月にはフォーシームが19.8%でカットボールが40.1%となった。カットボールを投球の主体にして得られたメリットは大きい。フォーシームの被打率.275、長打率.594に対し、カットボールは被打率.195、長打率.341だった。打たれにくい球種を軸に投球を組み立てたのだから、後半戦での異次元の活躍もうなずける。

また、シーズン途中にカブスに加わったクレイグ・キンブレルに教わったという、ナックルカーブの存在も大きい。8月下旬に「一週間前にキンブレルから習った」とダルビッシュ。そのナックルカーブは威力も抜群な上、フォーシームにも波及効果を与えているようだ。フォーシームの月別Whiff%(空振り率)は、4月から7月まで15%台〜30%台前半を推移していたが、8月に40.4%、9月に47.6%と上昇。ストレートで空振りが取れるようになったことも、後半戦にかけて四球率が減った要因の一つだろう。

ダルビッシュはカブスファンの希望?

米スポーツサイトのジ・アスレチックは、カブスの2020年シーズンの展望としてこんな記事を書いている。「ダルビッシュ有はサイ・ヤング賞3位以内に入る活躍をするだろう」。もちろん、それは2019年シーズンの後半のような活躍ができれば、の話である。

昨シーズン、カブスは5年ぶりにポストシーズン進出を逃した。一時代を築いたジョー・マドン氏が監督を退任し、チームのスタープレイヤーであるクリス・ブライアントにはトレードの噂が流れている。そんななか、ダルビッシュの存在は2020年シーズンにおけるカブスファンの希望になるかもしれない。

TwitterやYouTubeでも活躍中のダルビッシュ。理不尽な報道や、いわゆる「クソリプ」にも牙を剝く彼が、今度は球場で筋骨たくましいメジャーリーガーを相手にする季節がまもなく始まる。