フレーミングがNPBでも脚光

キャッチャーの技術でまず思いつくものと言えば、スローイングではないだろうか。ソフトバンクの甲斐拓也から始まった〇〇キャノンや〇〇バズーカといった愛称は、肩の強さがキャッチャーの一番の見せ場と考えられている証拠のように思える。

配球もキャッチャーにとって大事な要素だ。先月11日に亡くなった野村克也氏は、配球の重要性を常に説いていた。

近年、それらの技術に劣らないほど重要視されるようになったのが、フレーミングだ。MLBが運営するデータサイト、ベースボール・サーバントによると、フレーミングとは「審判がストライクとコールする確率を上げるような方法で、キャッチャーが投球を受ける技術」と定義されている。

MLBでは数年前から注目されている技術だが、ここにきて日本でも脚光を浴び始めている。今年初めに掲載された、ダルビッシュ有とキャッチャーの技術に詳しいアマチュア分析家・rani氏によるREAL SPORTSの対談記事では、ダルビッシュが阪神・坂本誠志郎のフレーミングを「見ていると気持ちがいい」と称賛していた。

また、DeNAは春季キャンプで、ダイヤモンドバックス傘下のスタッフとともにフレーミングの練習を行ったという。

古くて新しいフレーミングの技術

フレーミングは決して新しい技術ではない。審判にストライクとコールさせるためにミットを動かすという行為は、ずっと前からキャッチャーがやっていることだ。ヤクルトで正捕手として活躍した古田敦也氏はその名手として知られている。

ただ、その技術がデータによって裏付けられたのは最近のことである。MLBが導入したトラッキングシステムにより、昔からキャッチャーがやっていた「務め」が客観的に分析できるようになり、選手によってその技術に差があることがわかってきたのだ。

また、フレーミングの手法が体系化されたのも最近のことである。ミットずらしという似た行為が昔からあるが、フレーミングとの大きな違いは、ストライクと判定してもらおうという目的よりも手法にあるようだ。

ミットずらしという言葉から連想される、ミットを強引に動かす行為はかえってストライクと判定されない。前述のrani氏は、フレーミングの「ダメな例」としてミットずらしを挙げている。

フレーミングの能力は、ストライクゾーンの周辺部である「シャドーゾーン」をいかにストライクと判定してもらうか、が大切になってくる。シャドーゾーンとは、平均47%の確率でストライクと判定されるコースであり、言わばキャッチャーの腕の見せ所(フレーミング・チャンス)だ。

ベースボール・サーバントによると、昨年シャドーゾーンを最もストライクとコールさせたのは、パドレスに所属するオースティン・ヘッジスだった。シャドーゾーンのストライク率は54.1%であり、フレーミングの技術により防いだ失点は20点と算出されている。

不得手な捕手が市場価値を下げるケースも

フレーミングの能力は、そのキャッチャーの市場価値を如実に表すようになっている。MLBにはマット・ウィータースというキャッチャーがいるが、彼はフレーミングが上手くなかったが故に、市場価値を下げてしまった代表格として知られている。

2016年オフ、オリオールズからFAとなったウィータースは、なかなか所属先が決まらなかった。彼は強打かつスイッチヒッターの捕手として有名で、肩も強く、ブロッキングの技術に長けていたにもかかわらず、である。

米記者のケン・ローゼンタル氏は、ウィータースがなかなか契約に至らなかった理由をこう推察している。

「彼はあるキャッチングスキルの評判が悪い。それはフレーミングである」。

続けてローゼンタル氏は、米データサイト・スタッツコーナーの数字を参照し、ウィータースがフレーミングにおいて68位という下位に甘んじていることを指摘した。

結局、ウィータースはナショナルズと2年2100万ドルという契約を結んだ。平均年俸1050万ドルという計算になるが、オリオールズから前年にもらっていた年俸は1580万ドルだった。その差は530万ドル。日本円にして、約5億6000万円である。この数字だけ見ても、キャッチャーにとってフレーミングがどれだけ価値があるかわかるだろう。