11歳以下は禁止、12〜18歳も段階的に制限

子供への指導法が変わってくるのか? サッカー発祥の地、英国でヘディングが「脳にダメージ」を与えるリスクを巡って議論が巻き起こっている。

イングランド・サッカー協会(FA)は2月24日にユース年代の練習でヘディングを制限する驚きのガイドラインを発表した。11歳以下の子供たちは原則禁止とし、12〜18歳の年代でも最小限に抑えて段階的に増やすよう推奨している。試合中のヘディングは従来通り可能で、ルールそのものに変更はないが、サッカーの「母国」に波紋が広がっている形だ。

英BBC放送によると、適用するのはイングランド、スコットランド、北アイルランドの3協会。ウェールズはまだ適応しない。

ヘディングと言えばボールを頭でたたいてシュートしたり、DFが競り合ってクリアしたり、サッカーの醍醐味でもある独特の技術だが、元名選手からボールを軽量化すべきとの意見も出るなど、医科学的な見地から思わぬ危機にさらされようとしている。

最高時速128キロ超の衝撃、パーキンソン病のリスクも

こうした決定の背景には英国グラスゴー大学が昨年10月に発表した調査結果に基づく。サッカーボールの重さは約500グラム。研究者たちは、ヘディングの際、このボールが最高時速128キロで頭にぶつかるとしている。

7600人以上の元プロサッカー選手を対象に調査したところ、認知症やパーキンソン病など脳の病を発症して亡くなる確率が一般の人に比べて3.5倍も高かった。FAは「ヘディングとの因果関係は証明されなかったが、どんなリスクも軽減するためだ」と新ガイドライン導入の理由を説明した。

ユース年代から長期間にわたるヘディング練習が問題を引き起こすとの恐れは確かにあり、欧州連盟(UEFA)も今後ガイドラインを発表して啓発を図る予定だ。

米国は5年前から10歳以下禁止

ヘディングが脳に影響を与える可能性があるという警告は、これまでも繰り返されてきた。特に近年はスポーツ外傷の「脳しんとう」が危険な状態として注意喚起されており、サッカーやラグビー界でも試合中に厳格な対応が取られるようになった。

日本ではヘディングの危険性が話題に上ることがまだ少ないが、米国サッカー協会は2015年から子供のヘディングを制限し、10歳以下は禁止、11〜13歳は練習中のヘディングの回数が制限されている。脳しんとうを起こした子供の保護者らによる訴訟がきっかけで導入され、脳しんとうと後遺症へのリスクを減らすためとしている。

J1神戸・那須大亮の引退理由はヘディング

2004年アテネ五輪で日本代表の主将を務めたJ1神戸のDF那須大亮は昨年12月に引退を表明したが、自身のユーチューブチャンネルで「数年前、ヘディングをした時に脳が揺れるという現象が始まりました。練習の中でもヘディングをする度に脳が揺れるという現象が起こった」との困難な状況に陥っていたことを打ち明けている。

英国のガイドラインの詳細を見ると、ヘディング練習が段階的に制限される年代の12歳以下は月に一度の練習で最大5回まで。13歳以下は週に一度の練習で最大5回まで。14〜16歳の年代は週に一度の練習で最大10回まで、18歳以下は可能な限り減らすとしている。 日本でも近い将来、子供のヘディングを禁止するべきなのか、あるいは安全と考えられる年齢はいつからなのか。

サッカーの指導法や頭を守る用具など具体的な対策を検討する時代が来ている。