昇格チャンス絶たれたヴォレアス北海道

バレーボールVリーグ男子で、リーグの意義を問う事態が発生している。3月14、15日に大阪で開催予定だったバレーボールVリーグ男子1部(V1)最下位のVC長野トライデンツと2部(V2)2位ヴォレアス北海道の入れ替え戦「V・チャレンジマッチ」が、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に中止となり、VC長野トライデンツの1部残留、ヴォレアス北海道の2部残留が発表された。

この決定で一番のあおりを食ったのがヴォレアス北海道だろう。せっかく、V2で2位と1部昇格への挑戦権をつかんだにも関わらず、いきなりその場が絶たれたのだから。ヴォレアス北海道の肩を持つというわけではなく、このVリーグ機構の決定の流れには疑問を感じるところが多い。「誰のためのリーグか」という点だ。

ヴォレアス北海道は北海道旭川市を拠点とするプロのバレーボールチームで、選手の半分ほどが完全なプロ選手だ(他の選手は会社等で働きながらのプロ契約)。こういったチームは、Vリーグではまだ少ない。

3月14日、本来大阪でチャレンジマッチを行っているはずだった、ヴォレアス北海道の運営母体「株式会社VOREAS」の池田憲士郎社長は、東京都内で取材に応じ、複雑な思いを述べた。

「新型コロナウイルスの影響で中止が決まった当時は、試合を中止してほしくなかったが、中止の流れが出るのもわかっていました。その中で、無理矢理に強行してやるという思いではなかった。もちろん試合をしたいですが、安全の確保、感染の防止を確保した上での開催を望んでいました」

一方的に中止通達、会見もせず

ヴォレアス北海道を巡る状況は、2月下旬から3月上旬で急激に変化していった。

2月26日:V2男子残り全試合中止に。ヴォレアス北海道は2試合中止も19勝1敗55ポイントで2位が確定し、チャレンジマッチの出場が決定
2月28日:Vリーグが理事会を開催
2月29日:Vリーグ男子1部ファイナルが無観客で開催
3月5日:チャレンジマッチを無観客とすることを発表
3月9日:チャレンジマッチの開催中止を発表

わずか短期間でチャレンジマッチの中止が決まったことがわかるだろう。2月26日〜3月9日の間、Vリーグ機構はチャレンジマッチの中止について説明する公の会見は一度も開いていない。

池田社長によると、中止決定の連絡を3月6日金曜日午後5時頃に受けたという。当該チームであるはずのヴォレアス北海道側に特段ヒアリングもない中での突然の決定に、池田社長たちは驚いた。

そこで慌てて、リーグ側に連絡を取り「リリースを出すのを待ってほしい。一度話し合いに応じて欲しい」と要請し、さらにJリーグやBリーグ、また、海外のプロスポーツの対応状況などの代案も紹介したという。ところが、リーグ側からの反応は鈍く、面談に応じる前、翌週9日午後1時頃に中止が公表された。

池田社長は悔しさを押し殺しながら吐露した。

「(Vリーグ機構は)ちゃんと会話してほしい。JリーグやBリーグといったVリーグ以外のリーグは、チームと合意を得てから進む。それに大前提として、Vリーグの緊急時対策規定では原則再試合の考えのはず。にもかかわらず、あまりにも唐突な中止で、さらにその検討のされ方が不透明です」

説明責任果たしているJリーグやBリーグ

池田社長のいうようにJリーグやBリーグは徹底的に議論がなされており、さらにその検討過程を、マスコミ、またはSNSを通じてきちんと説明している。

特にJリーグの村井満チェアマンや、Bリーグの大河正明チェアマンは、会見等を頻繁に行い、その都度、リーグとしての考え、各クラブチームの状況、リーグの代案などを説明している。Vリーグはチャレンジマッチの中止という重大な決定事項について、リリースこそしたものの、Vリーグの嶋岡健治会長(日本バレーボール協会会長も兼任)は、その判断に至る過程を公の場では一切説明してこなかった。

新型コロナウイルス問題は、日本のスポーツ界全体、さらには世界中で駆け巡り、各国のスポーツリーグは苦境に陥っている。しかし、主要なリーグでほぼ共通しているのが、状況が悪い中でも、ギリギリまでできる限りのことを検討し、代案を模索していること。Jリーグ、Bリーグが感染拡大の中、当初、公式戦の延期を選択したのは、無観客試合や中止を避けたいからだった。

Jリーグ村井チェマン、Bリーグ大河チェアマンたちが会見で常にあげていたのが「ファン・サポーター(Bリーグであればブースター)、クラブやチームなどステークホルダーたちがあってのリーグ」という言葉だった。Bリーグはその後、無観客試合を実施し、新型コロナウイルスの影響で再度延期を決めた。

無観客試合では、入場料の収入や会場での物品売買の収益機会を失うが、放映権などの収入は試合中止ではないので受け取れる。Bリーグの各チームは経営基盤がまだ盤石ではないからこそ、大河チェアマンは苦渋の決断ではあったが、一度は無観客での再開を決断した。興行を行うリーグにとって本来、試合中止というのは一番最後の選択なのだ。

最後の選択であるはずの中止に至る経緯も不明

ファン・サポーターのため、そしてリーグに所属するチームたちと一緒になって、リーグ全体を盛り上げるようにまとめるのが、本来リーグを統括する組織の役目。ところが、Vリーグは「中止」という一番最後の選択を早々と決定し、ヴォレアス北海道や試合を楽しみにしたファンたちに説明を行わなかった。

「僕らも、そういうこと(色々模索した上)であれば、機構に対して、一生懸命開催に動いて頂きありがとうございましたとなります。もちろん納得は難しいですが、そこまで動いて出来ないのであれば、受け入れざるを得ないとなったでしょうし」

理事会でどういう議論が行われたのかは不明で、チャレンジマッチの当該チームに対するヒアリングもなく、いきなり結論だけチームに伝えられた。チームあってこそのリーグであるはず。

池田社長はVリーグ機構に対し、理事会の議題に、今回の対応の再考を上げてもらえるように訴えかけている。また、第三者を交えた話し合いも考慮するという。

Vリーグ機構は、3月14、15日の開催はひとまず延期し、再度理事会で慎重な議論をした上で、日程や会場を変更しての再試合、あるいは試合自体の中止を決めれば良かったのではないか。

Jリーグは3月19日、今シーズンの入れ替え戦プレーオフの中止を決め、下部(J1からJ2、J2からJ3)への自動降格なしと決定している。この措置もすぐに決まったわけではない。新型コロナウイルスの感染状況が、刻々と変わる中で判断した形だ。

村井チェアマンは「昇格も降格も封印するのは理論上考えられる。しかし、我々は選手が目標に向かって頑張る姿を推奨していきたいし、そういう結果を残した選手たちに報いていきたいと考えている。だから昇格を残した。降格については選手のパフォーマンス以外にもさまざまな要素がからむこともあるので、今回に限って降格はなしにしました」と説明した。

JリーグやBリーグの議論や決断の過程がわかるのに対し、Vリーグは当該チーム、そしてバレーボールのファンたちに対しての説明があまりに少ない。

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