中山芝1800mの難しさ

有力馬が皐月賞直行、弥生賞、若葉Sと使い分けられた結果、トライアルレースであるスプリングSはオープン馬4頭、1勝馬4頭、地方馬2頭の10頭立てという寂しいメンバーとなった。2、3歳重賞路線の整備の弊害もあるだろうが、本番まで相手関係の優劣がつけにくいことで皐月賞の予想が格段に難しく楽しいものになった。その皐月賞の予想のためにもスプリングSをきっちり分析していきたい。

レースはスタートから先手を主張するアオイクレアトールがすんなりハナ。内から川崎のエン、シルバーエースが2、3番手へ行き、隊列は静かに決まった。中山芝1800mは初角までの距離が短く、外枠の馬が無理に競りかけにくると、先行争いがコーナーまでもつれることになり、しばしば緩みない流れを生むが、このスプリングSのように初角までに先行争いに決着がつくと、ペースは瞬く間にダウンする。キャリアの浅い若駒同士の一戦だけに展開が読みにくいレースだった。

12.8 - 12.1 - 12.6 - 13.0 - 12.7 - 12.3 - 11.8 - 11.1 - 11.4

向正面は12秒6から13秒0、重賞にしては珍しいほどの遅いラップ構成。1000m1分3秒1で前日の同距離3歳未勝利戦より1秒2も遅いスローペース。勝ち時計1分49秒8は未勝利戦より1分49秒4より0秒4遅い記録で、全体的には?マークがつくレースとなった。しかし土曜日よりさらに強い南風が吹いた日曜日の中山競馬場。向正面は向かい風でペースが上がらなかったのはその影響もあったかもしれない。

残り600mまでペースが上がらないレースは自然と最後の600m勝負となり、3、4角中間から11秒8、4角手前から坂下まで11秒1、坂を上がってから11秒4と中山としては珍しい上がり33秒台の末脚比べとなった。特にヴェルトライゼンデが抜け出しにきた残り400〜200mは11秒1の好記録だった。そしてそれを外から動いてねじ伏せた勝ち馬ガロアクリークは軽さへの適性を見せつけた。

これら記録も当然ながら直線部分が追い風となるこの日の中山競馬場の気象条件によるところもあるだろうが、小回りコースの瞬発力勝負への適性は示した。 中山芝1800mではこうした極端な上がり勝負の競馬はしばしば出現し、たいていは先行馬に有利な結果となるわけだが、中団からタイミングよく動く機動性があれば差し馬も台頭できることを証明した。



皐月賞に向けて

権利をとった3頭(ガロアクリーク、ヴェルトライゼンテ、サクセッション)のなかでは先に動いたヴェルトライゼンテが今後につながるのではないか。内枠からロスなくバラけた5番手につけ、スムーズにコーナーを回り、一旦先頭の場面を作った。目標になった分でもあり、多頭数になる本番ではいい意味でセコく乗れるのは武器になるのではないか。乱戦向きではないが、よもやのスローペースになり、内枠でも引ければ穴で一考したい。

3着サクセッションは昨年の2着ファンタジストとイメージが重なる。ジュニアC勝ちがあるが1800mは未経験。距離延長に疑問だが、今回はその点を控えてためることで相殺できた。皐月賞に出走するか分からないほど距離延長には懐疑的だが、マイル路線に回れば面白い一頭ではないか。

惜しかったのはゴール寸前でサクセッションに捕らえられた4着ファルコニア。スローを見越して、一旦下げてから向正面のペースダウンしたところで外からマクって先頭に立ち、そこでひと息入れるのはここ最近のミルコ・デムーロ騎手がよく使う常套手段。土曜最終ではゲバラで同じような競馬をして快勝している。一旦馬を動かし、止めて、また動かす。ゴー・ストップ・ゴー戦法は今後も飛び出すだろう。後ろから行くであろう馬でもデムーロ騎手が騎乗したときはこの戦法で展開の不利を相殺しにくる可能性がある。もしまたデムーロ騎手がある時には注目したい。

ファルコニアは上位2頭に交わされながらも粘って皐月賞出走へ望みをつないだが、敵わなかった。本賞金900万では皐月賞出走は現時点では厳しい情勢で、全兄は阪神大賞典2着のトーセンカンビーナだけに早々にダービー出走へ仕切り直していきたい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。

スプリングS位置取りインフォグラフィックⒸSPAIA