上位独占の外枠、その要因とは

桜花賞、そしてオークスへの道を目指す牝馬14頭が集結したフラワーCは例年に違わぬ大混戦だった。オープン馬4頭、1勝馬10頭、戦歴比較がしにくい難解な一戦を勝ったのは12番人気の伏兵アブレイズ、1勝馬だった。2着は同じく1勝馬のレッドルレーヴ、3着は1番人気のオープン馬シーズンズギフトだった。

上位3頭はすべて有利とはいえない外枠に入った馬たちで、騎手の戦略性がその不利を跳ねのけた競馬でもあった。

アブレイズの勝因のひとつはスタートにあった。最後の枠入りから抜群のスタートを切り、外から内の馬たちの出方をうかがう余裕があった。最初のコーナーまでの距離が短い中山芝1800m戦でこの余裕を作れたのは大きい。藤井勘一郎騎手は内からナリノクリスティーが先手を主張するのを見るや、素早くその外に併せてから馬をなだめて番手に収めた。先週の中山牝馬Sのように先行有利な傾向があるなか、このポジション取りは大きかった。

フラワーCレースラップ

12.6 - 11.5 - 11.7 - 11.8 - 11.6 - 12.1 - 12.5 - 11.8 - 12.6

ナリノクリスティーが作ったペースは1000m通過59秒2、過去10年では阪神施行の11年を除くと最速。1000m通過までずっと11秒台後半が続くという息が入りにくい締まった流れは経験が少ない牝馬のなかには堪える馬も多かったようで徐々に脱落していく厳しいレースとなった。

3角付近でラップが落ちたことで追い上げる差し馬勢より息を入れて待っていられる先行勢に有利となった。まくってきた組はすべて4角で外を回るなか、アブレイズは最短距離から抜け出してきた。その後ろでインを狙ったショウナンハレルヤ、ポレンティアが接触する場面もあり、アブレイズの位置こそがヴィクトリーロードだった。

今後も惑星となりうるアブレイズ

移籍当初は若干競馬が消極的に見えた藤井騎手だが、ジャンダルムのニューイヤーSなど今年に入って中山で結果を出すところからも積極的な競馬が目立つようになった。オーストラリアでキャリアをスタート、世界13カ国を渡り歩いた国際派がいよいよ日本で大輪の花を咲かせるのではないだろうか。

アブレイズは異次元の状態だった京都の芝で新馬勝ち、そしてこのフラワーCとタフなレースで強さを発揮している。逃げたナリノクリスティーが10着、近くにいたクリスティが5着と伸びを欠く状況でしっかり伸びた点は評価すべきだろう。持ち前の持続力を十分に活かせるようなレースさえできれば、今後のクラシック戦線でもあっと言わせるシーンがあるかもしれない。

冷静だった名手・横山典弘

3着シーズンズベストについて触れておきたい。

外枠でアブレイズの背後から初角で好位につけるも4頭外を回るロスは痛かった。敗因はここにあるだろうが、馬を前に置けない状況で横山典騎手は馬が行きたがるのをなだめ、向正面で納得させると、そこから一歩引いたところを見逃がしてはならない。

先に触れたように全体的に息が入らないタフな流れ、それを察知した横山典騎手は馬を納得させて引いている。勝負所で外から差し馬勢が押し寄せる場面でもその動きに釣られずに仕掛けを待って動いている。一緒に動けば道中で一歩引いた意味がなくなる。

前半のロス、中盤の戦略を計算した上での仕掛け、戦略力では現役屈指のベテランの手綱が冴えていた。当然、1番人気だったのでもっと勝ちに行ってほしいという声もあるかもしれない。しかし、将来のある馬に無茶はしない、必要以上にダメージを与えるような競馬をしない、その流儀を分かれば、もっと競馬の奥深さを理解できるのではないだろうか。先行勢を深追いしていれば3着もなかったかもしれないじゃないかと。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。

フラワーC位置取りインフォグラフィックⒸSPAIA