数々の舞台や映画、ドラマに出演し、幅広い役柄で常に新しい一面を魅せる女優・佐津川愛美。彼女が2020年最初に挑む舞台は、朗読教室を舞台にした大人のラブストーリーだ。

2017年に放送されたNHKドラマ10「この声をきみに」をもとに、スピンオフストーリーとして綴られる本作。NHK連続テレビ小説「あさが来た」(15年)の大森美香がドラマ版に続き脚本を手掛け、ドラマ版とは一味違った物語になりそうだ。

「頂いたご縁を大切にしているので」と飾らずに話す佐津川が、本作に掛ける意気込みを語ってくれた。

このプロデューサーさんとやりたいと思った

――本作への出演が決まった時の心境を教えてください。

この舞台はプロデューサーさんがすごく熱心にお声掛けくださったんです。とてもご丁寧に、私とやりたいと仰ってくださったのがとにかくうれしくて。愛の告白のようなオファーをいただいて、このプロデューサーさんと一緒にやりたいって心から思いました。

佐津川愛美

佐津川愛美

役者が「こういうキャラクターを演じていきたい」と考えて、向上心を持つことは大事だと思うんですけど、どちらかというと私はいただくご縁を大事にしているタイプで。今回もこのご縁を大切にしたいと思って、ぜひやらせていただきたいです、とお受けしました。

――小劇場を中心に活躍する艶∞ポリスの岸本鮎佳さんが演出を担うことも注目です。岸本さんとはすでに何かお話をされましたか?

今回の舞台出演が決まる前に、岸本さんが主宰されている艶∞ポリスの公演を偶然観に行っていたんです。その時は艶∞ポリスのことを存じ上げなかったんですが、出演していたお友達から岸本さんは面白い方だよって聞いていて。実際に作品を観に行ったらすごく面白くて。岸本さんにご挨拶させてもらって、「いつかご一緒したいですね」って話をしたばかりのところに、この舞台の話を頂いてびっくりしました。「これは何かのご縁だ!絶対やらないと!」と思いましたね。

佐津川愛美

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私が観た艶∞ポリスの『PARTY PEOPLE』(19年)は出演者が多い群像劇だったんです。登場人数がすごく多いにも関わらず、全員のキャラクターが立っていて。ありがちな言い方になってしまいますけど、いなくていい登場人物が一人もいなかった。その登場人物たちの掛け合いの演出が面白くて、いいなと思いました。

職場、家庭、学校以外の居場所に集う面白さ

――「この声をきみに」ドラマ版をご覧になったと伺いました。とある朗読教室に集う様々な人々が、朗読を通して交流していく様子を描いた物語にどんな感想を持ちましたか。

純粋に面白いなと思いましたし、毎話必ずどこかに優しさがあるドラマだなと感じました。例えば、ドラマだと竹野内豊さんが演じられている、朗読教室に通う偏屈な主人公を嫌っている人もいるし、でもそういう人もいるよねって認めている人もいる。そのバランスがすごくいいんですよね。大森(美香)さんが描く、優しい世界に私自身も入れるのが今から楽しみです。​ドラマ版の設定やメインの登場人物はそのままに、舞台ではちょっと違う世界を描くようで。私は今この舞台版の世界のことを“パラレルワールド”って呼んでいるんですけど(笑)。私が演じる朗読教室の先生も役の設定は変わらないけど、名前の漢字が変わる予定と聞いています。

佐津川愛美

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――ズバリ、この物語の魅力は?

映画やドラマ、舞台では、職場や家庭、学校での出来事が描かれることが多いと思うんですが、この物語は自分の好きなものをやっている人たちの集まりを描いているのが面白いですよね。ドラマ版に「あまりプライベートに関わらないようにするのが鉄則なんです。だけど好きなものっていう共通点で絆を築いていけるでしょ」っていう感じのセリフがあって。それがすごくいいなって思ったんです。私はそういうコミュニティに入った経験があまりなかったので、このドラマを見て、そういうところに行ってみたいなって考えるようになりました。習い事って毎週通わなきゃいけなかったりして難しいじゃないですか。でも、それで諦めるのももったいないな、1回だけでも習えるものを何か探して行ってみようかなって。友達が楽器を教えてくれると言っていたので、ウクレレとかいいんじゃないかなって考えているところです。

――佐津川さんご自身、朗読がお好きなんだそうですね。

そうなんです。読書はあまり得意じゃなくて、歌も苦手なんですけど、朗読は好きなんです。一人きりでじっと本に向き合うのがあまり好みではないからか、朗読がちょうどいいんです。そう考えると、私映画が好きなんですけど、家では一切見なくて、映画館でしか見ないんです。周りからは「全部映画館で見るなんてすごいね」って言われるけれど、家で一人だとなんだか見られなくて。映画館の空間で、みんなで一緒のものを見て、同じものを感じるのが好きなんです。隣の席の人の反応を見るのも楽しいです。私は何も思わなかったところで隣の人は笑ったり泣いたりするから。この前は、隣の席の女性が私と全く同じタイミングで泣き始めたんです。そういう映画館の空気が好きなんです。私は一人が好きなんですけど、でも一人で読書や映画鑑賞は好きじゃないっていう(笑)。旅行もそうで、一人旅に行って現地で知り合った方と友達になることが多いんです。

佐津川愛美

佐津川愛美

自然と繋がったものが、今の自分に必要なもの

――映画、ドラマ、舞台と垣根なくご出演されていますが、お芝居をする上で特に心掛けていることは?

割とドラマの撮影だと、普段の会話のテンションのまま芝居をしている方が好きです。「よし、芝居するぞ!」っていうより、フラットにいられる方がいいと思っていて。でもこの前まで出演していた舞台『掬う』(19年​)の時はそうはいかなかった。激しく重たい物語だったので、毎回気持ちを上げて入らないと最後まで行けなかったんです。本番前に全部セリフを確認しながら、体を起こして、テンションを上げて、自分の気持ちをちょっと違うモードに入れてから、毎日本番に挑んでいました。今までとは少し違う経験でしたね。

――幅広く活躍をされている中で、佐津川さんが大切にしていることを教えてください。

色々なお仕事をさせていただく中で、ご縁を一番大事にしています。それでここまでお仕事をさせてもらっているので。頂いたお仕事はなるべくやりたいと思っていますが、スケジュールが合わなかったらできないですし。私は不思議と引きが強い方で、偶然空いていた日にピンポイントでお仕事を頂くことが多くて。そういう自然と繋がったものが今の自分に必要なもの、必然なのかなって30歳を過ぎてから思うようになったんです。これからもそういうつながりを大切にしていきたいと思っています。

佐津川愛美

佐津川愛美

取材・文=永瀬夏海 撮影=池上夢貢