舞台『カレイドスコープ-私を殺した人は無罪のまま-』が2020年2月20日(木)〜3月1日(日)、新宿FACEにて上演される。開幕を間近に控え、主演の山本裕典と桑野晃輔、君沢ユウキにインタビュー。オリジナルのサスペンス密室劇に挑む覚悟や、役者として切磋琢磨する稽古の様子、互いへのリスペクトを垣間見ることができた。

ーー稽古もいよいよ佳境に入ったところですが、手応えはいかがですか?

君沢:はい。もう一言に尽きます。「勝ちました」と。

山本:(笑)。顔合わせからずっと言ってますよね。

(左から)山本裕典、君沢ユウキ

(左から)山本裕典、君沢ユウキ

桑野:しかも、第一声からですよ。

君沢:だってこれほどまでのキャスト、脚本、演出が揃っていいものができないはずがない。今も座長の裕典くんをはじめ演出の吉谷(光太郎)さんや谷(碧仁)さんたちとさらに物語を高めようと話し合ってるところなんです。お客さんに披露する前から「カレイドスコープ2」に入ってしまったような状態ですね。

山本:えっと、グレードアップしていってるってことですよね(笑)?

桑野:気持ちの上でね。すごいいいこと言ってるのに、「〜2」って言うと途端にダサくなっちゃいますよ(笑)

ーー(笑)。ある一人の少女の死をめぐり心理戦が展開されるストーリーですが、脚本の印象を教えてください。

山本:サスペンスは過去に経験のあるジャンルではあるはずなのに、まるで初めて出会ったような感覚でした。1年前に役者業に戻ってきてから出演してきたのがコメディやミュージカルだったので、久しぶりということもあるとは思いますが……とてもテンションや勢い任せにはできない内容ですね。劇場が360度客席に囲まれたステージになるということにも緊張しています。

桑野:会場の新宿FACEは格闘技の試合にも使われている場所なんですけど、この作品もそれに近いですよね?

桑野晃輔

桑野晃輔

君沢:まさに“演劇プロレス”状態。全方位、それも相当近い位置にお客さんが座っている場合もあるので一瞬たりとも気が抜けない。キャスト10人だけで演じるという内容に覚悟を感じました。密室劇は劇団にいたころからずっと憧れていたシチュエーションでもあるので、念願叶って嬉しいです。

桑野:一筋縄ではいかないけど、このメンバーならできるだろうと思っています。ホン(脚本)を超える何かを残せるキャストが揃っているなと。不安よりもむしろ楽しみの方が大きいです。

ーー演出を手掛ける吉谷さんの「培ってきた演出の手法を一度捨てる」というコメントが印象的でしたが、その点で何か感じることは?

桑野:僕、初舞台が吉谷さんの演出だったんです。今回で3作目になるんですけど、最近多く手掛けられていた2.5次元作品ではご一緒していないこともあって、今までの演出を取っ払うという感じはしなかったんです。「こういうことをするんだ!」っていう発見はありましたが、昔と変わらぬ“芝居大好き小僧”のままでした。

君沢:僕は近年の作品でご一緒することが多かったんですけど、2.5次元作品ならではの見せ方があるなかにも“芝居大好き小僧”の一面はいっぱい見せてもらってきた。むちゃくちゃ楽しいんです。裕典くんはどう?

山本:僕は初めて演出を受けたんですけど、日々、目まぐるしくてどんどん新しいアイデアが提示されてくる現場ですよね。みなさん器用で経験豊富なのですぐに対応されてるんですけど、僕はついていくことに必死です。

桑野:全然そんなことないのに。

山本:いやぁ、稽古始まってからおいしくお酒を飲めてないんですよ。

君沢:え!? そうだったの?

君沢ユウキ

君沢ユウキ

山本:はい。こういうときに楽しい時間を過ごしてしまったら罰が当たってしまうんじゃないかって不安になるんです。稽古が始まってからずっと凹みっぱなしです。

ーー現在の心境としては、壁にぶつかっている最中?

山本:例えるなら、テストが近づいている中学生、もしくはマラソン大会を控えた小学生。やりたいし、やらなきゃいけないんだけど、まだどうしていいかわからない。楽しいことを我慢したところで結果が左右されるわけではないのに、自分に制限をかけてみないと気が済まないんです。

君沢:たぶん、今回の役がそうさせるんだと思う。ほかのキャラクター……例えば僕が演じる浅井幸助は「スクープを取る」という絶対的な柱があるし、晃ちゃんが演じる夏樹陸も容疑者でありながらも信じている自分の正義がある。裕典くんが演じる伊藤は事件の関係者を集めるっていう役どころだから、他の人からのリアクションを全部受けなきゃいけない。今の裕典くんは台本からさらに良くなろうとする作業をしているから、余計にすっきりしない毎日なんじゃないかな。もし伊藤を演じたら、僕も苦しむと思います。

桑野:うん。僕、稽古を外側から全体を見る機会が多いんですけど、伊藤は裕典さんがこれまでの人生で経験してきたことが出ていると思う。役者さんから溢れ出る人間味が加わると、役の魅力も増しますよね。個人的にも、伊藤は愛すべきキャラクターです。

山本:(君沢を見て)稽古中、ずーっと「楽しい」って言ってるじゃないですか。「僕はこんなに苦しいのに、何言ってるんだろう?」って思います。

君沢:あっはっは!

桑野:それ、わかるな〜(笑)

君沢:だって苦しいのも楽しいじゃん。わざわざ全方位からお客さんに見られる厳しい状況を選んで、原作もない状態で、作品自体のファンの方がいらっしゃらない未知数な状況で、オリジナル作品をやるなんて。生きてるって感じしない?

山本:……すごい。

(左から)桑野晃輔、山本裕典、君沢ユウキ

(左から)桑野晃輔、山本裕典、君沢ユウキ

ーーそれぞれ役者としての印象や稽古場のエピソードもお伺いしたいんですが、ムードメーカーは間違いなく……

桑野:君沢さんですね。カンパニーの太陽ですよ。

山本:ずっとニコニコしてる。昨日はMCみたいなことしてましたね。

ーー稽古場の和気あいあいとした雰囲気は作品とのギャップがあって驚きました。

君沢:むしろギャップがあるからこそ、作品のシリアス度が上がる効果があると思っています。意識しているつもりはないですけど、こういう作風だからこそ楽しい現場になるといいなと。昨日はみんなでご飯食べに行ったもんね?

山本:帰り際に誘ってくれたとき、僕は断ったんですよ。稽古で悩んでたし、それどころじゃないのにずっと「ダメだ。帰さない」って離してくれなくて。

桑野:アハハ、やってたね(笑)

君沢:あのね、一連の流れが裕典くんなりのボケ方だと思ってたの(笑)。すごい積極的に来てくれるなって嬉しくなっちゃってた。

山本:も〜(笑)!

山本裕典

山本裕典

ーー意思疎通がうまくいってなかったんですね(笑)

桑野:ほんと、ハッピーですよね(笑)

君沢:ごめん! 裕典くんはイメージと全然違ったな。今時こんなに体育会系なのも珍しいくらいストイック。年齢や芸歴が一個でも上なら絶対に敬語は崩さないし。

桑野:僕にとっては、テレビでずっと見ていた憧れの存在。と同時に、さっきも取材前に二人で話していて感じたんですけど、ものすごい芝居が好きな方。好きだからこそこんなに苦しんで悩むんだろうし、“芝居馬鹿”なんだなって。僕、そういう人が本当に大好きなんですよ。

君沢:座組としてはそれぞれ共演経験がある人が多かったので、最初はちょっと転校生みたいな雰囲気あったよね?

山本:そうなんです。心境的にまさにそんな感じでした。

君沢:でも、一緒の作品をやったら絶対通じ合えるものある。みんな絶対、裕典くんが座長でよかったって思ってるよ。

ーー続いて、桑野さんの印象はいかがでしょうか?

山本:実際にお会いする前から、いろんな方から「“普通”の役をやらせたらピカイチな役者だ」というお話は聞いていました。

桑野:……ちょっと、ザワッとしちゃった(笑)

君沢:あと、苦しんでる姿が本当によく似合う。

桑野:(笑)。前に共演させてもらったときも言われました。

山本:それわかります。終盤以降のあるシーンで、僕と向き合う芝居の時に見せる目がすごく好きなんですよ。ずっと誰からも愛を受けてこなかった、「人間なんて!」て思って生きてきた捨て犬みたいな苦しみ方をするんですよ。

君沢:「どこからそんなボリュームの葛藤を拾ってくるの?」っていつも思うよ。その分、普段は笑ってくれてると安心する。ニコニコ笑ってくれてるとホッとしちゃう。

桑野:いやいや、プライベートでも苦しみを抱えてるわけないでしょ(笑)

桑野晃輔

桑野晃輔

ーー稽古期間中のルーティーンやマイルールがあれば教えてください。

桑野:僕はおにぎりを必ず2個買ってきてました。そういえば明太子は固定で絶対入ってましたね。お気に入りでした。

君沢:食べてたね。えー、何かあるかな?

桑野:間違いなくしゃべることでしょ(笑)。全員のボケを100%拾うこと。

君沢:そうだね。ボケて、楽しんで、笑って、真剣に芝居をする。稽古の醍醐味は全部味わいたいんです。欲張りなんでね。

山本:直前まで最高潮にふざけてるのに、芝居に入ると急に真面目な顔するからホントすごいですよね。僕、逆にほかの現場にはあってこの作品ではできていないことでもいいですか?

桑野:おっ、何?

山本:今まで年下の子がいる現場が多かったので、後輩の面倒を見ること。10歳以上離れているとすごく可愛いく思えちゃうんですよね。

桑野:兄貴肌なんだね。

山本:慕ってくれる子が2人いると風神・雷神って呼んだりしてました。

君沢:いいじゃん。僕たちのこともそう呼んでよ。ちょうど2人いるんだから。

君沢ユウキ

君沢ユウキ

山本:(笑)。先輩に対してそんなことできるわけないじゃないですか!

ーー最後に、見どころとメッセージをお願いします。

君沢:この作品の最高の魅力は、ドキュメンタリーとして体感できること。10人が持ち寄った真実を360度、あるいは近距離でモニタリングできる舞台。会場全体が密室だと思って演じますし、毎日変わっていく作品をドキドキしながら味わってほしいです。

桑野:役者全員が思いを込めて、背負って、挑む覚悟を持っています。圧倒的なものを残したいって気持ちで、新宿FACEから世の中をひっくり返したい。演劇を語るならこの作品を観てほしいし、後世に残るならこういう作品だと思っています。「演劇って面白いな」と感じてくれる人が増えれば嬉しいです。

山本:正解の感じ方、答えが人それぞれ違うでしょうし、視覚的にもいろんな角度から見ることができる作品。今まで僕が演じたことのない新鮮さを僕のファンの方にも、他の役者のファンの方にも感じてもらいたいという思いもあります。周りの方々から力を借りつつ、自分なりの良さを見つけていきたいです。公演期間中はぜひ、ぜひ! 予定を合わせて来ていただけたら嬉しいです。

(左から)桑野晃輔、山本裕典、君沢ユウキ

(左から)桑野晃輔、山本裕典、君沢ユウキ

取材・文=潮田茗 撮影=安西美樹