2020年2月12日(水)、東京・PARCO劇場にて『ラヴ・レターズ 〜こけら落としスペシャル〜』が開幕した。一組の男女の往復書簡で綴る朗読劇を豪華キャストで上演する本企画、開幕に先駆けて初日に出演する大竹しのぶと松重豊が芝居の一部を披露した。

本作は1990年に初演、その後2019年までの29年間、495回の上演を重ねてきた。2020年は初演から30周年となり、公演回数が500回を迎える、まさに記念ずくめの公演となる。初演から26年間『ラヴ・レターズ』の翻訳・演出家として作品を支えてきた故・青井陽治から演出のバトンを受け継いだ藤田俊太郎が今回も演出を務める。


ステージの上には二脚の色違いの椅子と、真ん中にテーブルだけがあるシンプルな世界。この場に現れた大竹と松重はそれぞれ手にした台本を読んでいく。台本から目をそらさず作品世界にのめり込むように読みふける松重。そして松重とは対照的に台本を読みながら時々視線を外し、演じている女性の世界の中を漂っているかのような大竹。対照的な朗読スタイルで物語は進んでいくが、時に二人が手紙で交わす言葉のやり取りが面白く、思わずクスリと笑わされてしまう事もあった。


芝居披露後、ステージ上で大竹と松重、そして藤田も加わって会見が行われた。

大竹しのぶ

大竹しのぶ

大竹は90年の初演の舞台に立ち(相手役は役所広司)、以降本作の常連となっている。「PARCO劇場には25歳のとき初めて立ちましたが(今回のリニューアルで)あまりに綺麗になったのでびっくりしています。立派な楽屋ができていて! 前は楽屋らしい楽屋ではなかったので」と笑いながら語る。そして改めて「綺麗になったPARCO劇場で30年前にやった作品に出演出来るのもとても感慨深いですね。時間は流れるんだなあ。やっぱり年はとるんだなあ」とやや恥ずかしそうに微笑んだ。「歳を重ねてくると、悲しみや開き直りなどいろいろ分かってくることも増えてきたので、読む人の年代によって随分と内容が違ってくるんだろうなと、自分もこの歳になって分かりました」と感じ入るように述べていた。

松重豊

松重豊

松重は「僕も22、23歳くらいの頃に蜷川幸雄演出の舞台で立ったのが最初。ステージの後ろから蒸気機関車を暴走させて突っ込む話でした。その頃からおしゃれな場所で既成概念をぶっ壊すというラジカルな風潮がこの劇場にありました」と振り返る。そして本作について「この作品は1回しか稽古をやらずに舞台に立つんですけど、役者にとってどんなに不安なものかと」と思わず笑みをこぼしていた。また「蜷川幸雄の作品だと稽古初日から台本を置いて立ち稽古をするというスタイルを叩きこまれた人間としては、お客さんの前で台本を読むという行為がどれだけ恥ずかしいものか。でも逆にそのような気持ち悪く恥ずかしい状況にさらされることが残酷でおもしろいのかも」と持論を展開していた。

藤田俊太郎

藤田俊太郎

演出の藤田は「80年代のPARCO劇場は渋谷の中でも革新的な挑戦をし続けてきた劇場でした」と語りつつ、「しのぶさんは第1回に出演、松重さんは第293回目で出演。その時は300回を迎える節目の公演でした。今回は500回の節目を迎える時に自分が演出を務めさせていただくことを光栄に思います」とコメント。「独りよがりになりがちな時代に相手に想いを伝えるという、演劇の真髄が詰まった作品です」と本作の魅力を語りつつ「今日この日しか起こらない、大竹さんと松重さんという二人が作る“ドキュメンタリー”だと思って観に来ていただければ」とアピールした。

(左から)松重豊、大竹しのぶ、藤田俊太郎

(左から)松重豊、大竹しのぶ、藤田俊太郎

なお、本公演は初日に松重&大竹が出演した後、16日(日)には、井上芳雄&坂本真綾、21日(金)は市村正親&草笛光子、23日(日・祝)は、リリー・フランキー&橋本愛。そして500回目のステージとなる25日(火)は加藤和樹&愛加あゆが出演する。

取材・文・撮影=こむらさき