大人計画主宰で作家、演出家、俳優、映画監督、小説家、そしてシアターコクーン芸術監督の松尾スズキ初の本格ドキュメンタリー『ノンフィクションW 松尾スズキ 人生、まだ途中也』が、2020年3月28日(土)にWOWOWで放送される。このたび番組のナレーションを多部未華子が務めることが決定した。

2019年夏、松尾が自ら最小限のスタッフで企画・プロデュースした2人芝居『命、ギガ長ス』は、認知症気味の母の年金を当てにして生活する50代ニートでアルコール依存症の男という“8050問題”をテーマにした新作書き下ろし舞台。本番組では、並々ならぬ思いで取り組んだ舞台の稽古場にカメラが入り、初めての長期密着が行なわれた。

収録を終えた多部は「この舞台は本当に取れなくて、私は舞台を観に行けなかったんです。なので今回、少しでも携われたような感じがして嬉しかったです」と笑顔を見せると、「私は松尾さんの人柄が好きで。たぶん、今回の舞台はお母様のことや、いろんな思いがあってできた舞台だと思うんです。だから松尾さんが何を見て、何を思っているんだろうということに興味がありましたね」と付け加えた。

松尾とは、『農業少女』『ふくすけ』『キレイ−神様と待ち合わせした女−』『ニンゲン御破算』といった舞台をはじめ、いろいろな作品で一緒に仕事をしてきた多部だが、今回の『命、ギガ長ス』の稽古風景を見て、「映像を見た感じだと、少し重い空気を感じました。2人芝居の空気って、きっと、大人計画の方達が沢山いる稽古場とは全然違うんだろうなと思います。私が今まで参加してきた舞台は、緊張感がなかったわけではないのですが、いつもワイワイしているような感じだったんです。なので松尾さんにも色んな顔があるのだと思うんですが、これもまた松尾さんの顔のひとつなんだろうなと思いました」という。

番組内でも多くの俳優、クリエーターたちが松尾作品の魅力を語っている。多部にとっての松尾作品の魅力とは何だろうか。「松尾さんの作品はグロかったり、エグかったり、汚い表現の言葉使いも沢山あったりするのですが、松尾さんの根底にあるものがとてもロマンチックだと思うんです。観に行く作品でもいつもそう思いますし、自分が出た作品やキャラクターに関してもそう思います。松尾さんはおじさんだけど、とてもロマンチストなんだろうなという印象がずっとあります」と。

そして実際に松尾作品に参加してみて分かることもあるという。「松尾さんの作品って、1回観ただけだとよく理解できないまま終わることもあるんです。恐らく分かる人はすぐに分かるんだと思うんですけど。でも私は自分が作品に参加して、毎日稽古場にいて、自分が与えられたセリフや、他の人が話しているセリフを毎日聞いているうちに、すごく素敵な言葉が並んでいるんだなということに気付くというか。松尾さんの思いが、時間が経てば経つほど分かるんですよね。稽古場に行って、大人計画の皆さんが楽しいことをいっぱいして、ケラケラと笑う中ですごくジーンとくる瞬間が沢山出てくるんです。それが稽古に参加して楽しいなと思うところです。だけどいつかそれを1回で見て分かるようになればいいなと思っているんですけどね(笑)」と語る多部。

今回の放送では、ドキュメンタリーの他「松尾スズキ大特集!」と題して、『命、ギガ長ス』『キレイ−神様と待ち合わせした女−』といった舞台作品も放送されるが、「テレビは何度でも観ることができますからね。私も『命、ギガ長ス』を観ることができなかったので、録画したいと思います」と笑顔を見せる。

さらに俳優・松尾スズキについても「松尾さんが役者さんとして舞台に立っている時って、本当に単純にお芝居がとっても上手で。あの誰にも真似できない動きを沢山……。なんと表現したらいいか分からないですが、摩訶不思議な動きに目が離せないというか。本当に摩訶不思議な人って感じですね」と笑いながら付け加えた。