京都芸術大学舞台芸術研究センター/KYOTO EXPERIMENTが、2020年6月26日(金)より期間限定で太田省吾作/シャンカル・ヴェンカテーシュワラン演出『水の駅』舞台映像の無料公開を開始した。配信は、Vimeoにて、7月5日(日)まで。

『水の駅』は、インド人演出家シャンカル・ヴェンカテーシュワランによる演出で、2016年度KYOTO EXPERIMENT京都国際舞台芸術祭にて上演された作品(2016年11月12日(土)・13日(日)京都芸術劇場 春秋座にて上演)。ヴェンカテーシュワランの、「コロナ禍である現在の状況だからこそ、多くの人に観ていただきたい」という想いから今回の配信に至ったという。

太田省吾作/シャンカル・ヴェンカテーシュワラン演出『水の駅』  撮影:守屋友樹

太田省吾作/シャンカル・ヴェンカテーシュワラン演出『水の駅』  撮影:守屋友樹

『水の駅』映像公開に寄せて/シャンカル・ヴェンカテーシュワラン

太田省吾が『水の駅』を発表してから35年が経った2016年、私が演出し、インド各地とスリランカの俳優が出演する『水の駅』を京都で上演する機会に恵まれました。
私の『水の駅』が転形劇場の『水の駅』と違うのは、その沈黙が生まれる出所です。
太田省吾の沈黙は、歴史、言語を共有するがゆえに登場人物は言葉を交わす必要がない、人々は共通の言語、生きられた歴史の集合的経験を持っているところから来ていると考えられます。
他方、私たち南アジアの文脈における沈黙は、カースト、階級、肌の色、文化の違いから生まれています。
私たちの沈黙は、私たちが全く違った文化、言語背景を持っており、言葉を交わすことができないところから来ています。

太田省吾作/シャンカル・ヴェンカテーシュワラン演出『水の駅』  撮影:守屋友樹

太田省吾作/シャンカル・ヴェンカテーシュワラン演出『水の駅』  撮影:守屋友樹

『水の駅』で私たちは、社会が種レベルにまで剥ぎ取られた時の人間の状態を目の当たりにします。
そこでは私たちは一個人ではなく、死に囲まれた薄暗いランドスケープを横断する、特有の文化や言語、個性をはぎ取られた単なるヒトのサンプルです。
このパンデミック、進行中の社会不安、新たに展開される国境紛争、それらが私にある感覚を生み出しています。つまり、私たちは薄暗がりのなか危険な山の斜面を突き進む長い旅路にあるということを。
『水の駅』は、私たちの抱える課題に取り組む方法、周りそして先々を見渡すために速度を落とし、暗闇のなかで私たちがもっと鮮明に物事を見るための手段を示してくれます。
上演時間は2時間弱、ペースはゆっくりとした、沈黙劇です。
ぜひ静かな時間と場所を見つけてください。スクリーンの明るさを落とし、スピーカーの音量は下げてみてください。
この作品のペースにじっくりと浸り、目、耳、心を開いて、あなたの想像のなかで作品を完成させてください。

太田省吾作/シャンカル・ヴェンカテーシュワラン演出『水の駅』  撮影:守屋友樹

太田省吾作/シャンカル・ヴェンカテーシュワラン演出『水の駅』  撮影:守屋友樹