新型コロナの影響により、3月下旬から公演を中止していた東宝演劇が、7月から状況を鑑みながら再開される事となった。その第一弾として新たなプロジェクト「TOHO MUSICAL LAB.」が、2020年7月11日(土)ライブ映像配信にて始動する。 

振り返れば、『風と共に去りぬ』を世界で初めてミュージカル化した『スカーレット』(1970)以来、1998年に初演し今秋も再演が予定される『ローマの休日』、韓国・ドイツでも上演した『マリー・アントワネット』、上演1760回を数える『SHOCK』、シェイクスピア最後の作品をミュージカル化した『ナイツ・テイル』(2018)に至るまで、台本・楽曲をゼロから創造するオリジナル・ミュージカル制作を興行の大きな柱としてきた東宝演劇。
その東宝が3月以降、コロナ禍で休演を余儀なくされた直営劇場「シアタークリエ」を「LAB.」(実験室)に見立てて、最旬の劇作家・キャストと共に、新たなオリジナル・ミュージカルを生み出し、お客様にお届けする、劇場に再び灯をともすためのプロジェクトを始動させる。

今回上演する2作品を紹介しよう。まずは根本宗子が脚本・演出を務める『Happily Ever After』。根本は2019年に上演された舞台『クラッシャー女中』(主演:麻生久美子、中村倫也)で第64回岸田國士戯曲賞の最終候補作に3度目の選出をされた若き実力派。 本作に出演するのは生田絵梨花と海宝直人。劇中曲の作詞・作曲、音楽監督は清 竜人が、踊り子をrikoが務める。

そして二本目は三浦直之(ロロ)が作詞・脚本・演出を務める『CALL』。三浦は、2019年脚本を提供したNHKよるドラ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』で第16回コンフィデンスアワード・ドラマ賞脚本賞を受賞している。出演は木村達成、田村芽実、妃海 風、森本 華(ロロ)。作曲は夏目知幸が務める。

通常オリジナル・ミュージカルは1年以上かけて制作するものであり、作・演出家へのオファーから1カ月弱、稽古2週間での制作は異例であり、東宝ミュージカルでは初めてのこと。クリエイティブスタッフと俳優の力量と熱意、瞬発力が問われる大きなトライアルだろう。
初回となる今回は、無観客・ライブ映像配信で、劇場から新作ミュージカルをお届けする、東宝ミュージカル初の試みとなる。

なお、本作はイープラス「Streaming+」でのLIVE映像配信のみで上演される。視聴券料金、視聴券販売期間などは本記事の文末にてご確認いただきたい。

以下、それぞれの作品に関わるキャスト、スタッフからのコメントを紹介しよう。

『Happily Ever After』

■生田絵梨花
劇場がなかなか通常通り再開できない中で、このようなプロジェクトに参加させていただけることを、本当に嬉しく思います。 
無観客だけれど、配信の画面を通しても生の緊張感やエネルギーやトキメキが皆さんと共有できるよう、丁寧に作っていきたいです。 
何よりまた舞台に立ちお芝居や歌でストーリーをお届けできるのが嬉しいので、いつかぜひご一緒したいと思っていた根本さんにビシバシご指導いただきながら、楽しみたいです! 

■海宝直人 
今回、劇場からの配信という新たな演劇の形への挑戦の場に参加できること、とても光栄に思います。 
短い時間ではありますが、濃密な演劇体験をご自宅で味わっていただけるように、作品、役と真摯に向き合ってまいります。どうぞお楽しみに。 

■根本宗子
「新作のミュージカルを1ヶ月で0から創作」 
とんでもない企画をいただいてしまいました。 
シアタークリエが息を吹き返す今回、「願い」をテーマに言葉を紡ぎました。 
「画面の向こう」のお一人おひとりへ、素晴らしいキャストと共に、 
新しい肌触りのミュージカルをお届けできたらと思っています。 
演劇はお客様がいて初めて完成するので、離れた場所にいても「今」は今なりのお互いのイマジネーションを重ね合いましょう。 
本番が一晩だなんて、夢のように儚いですね。

■清 竜人 
根本宗子さんにお声掛けいただき、本作品に携わる運びとなりました。やったね。 
未曾有の感染症の影響で不安な日々が続く中、僅かでも、皆様の日常に華を添えられるような作品を、と考えております。
乞うご期待。それでは。

『CALL』

■木村達成 
僕自身、二つの舞台がコロナの影響で公演中止となってしまい残念な気持ちではありましたが、今回新たな演劇の作品に挑戦出来ること本当に嬉しく思います!
まだ未知の世界なのでどの様になるか自分も楽しみです。 
今回の様な予測できない事態を経験し、劇場で演じる事は当たり前ではないと感じました。
なので久しぶりに舞台に立つ事は、今まで以上に緊張すると思います。 
今回の作品は生中継でお客様に届けるとの事なので、新しい演劇になると思います。 
ワクワクが止まらないと言ったところでしょうか(笑)。 
形が違っても演じる事には変わりないので、いつも通り楽しみたいと思います。 

■田村芽実 
当たり前のことが当たり前でなくなってしまった今、またこのような形で舞台の上に立てることができ、夢を見ているかのようです。
身体いっぱいに広がる感謝の気持ちを込めて、精一杯努めさせていただきます! 

■妃海 風 
出演が決まり、久々に舞台に立てることを知った時、嬉しくて鳥肌が立ちました。 
同時に、劇場の香りや、舞台特有の張り詰めた空気感などが一気に蘇ってきて、興奮しました。 
この喜びや興奮を、自宅で観て下さる皆様にも鮮明にお届けしたい。 
画面を通じてお伝えするという難しさはあると思いますが、逆にこの状況だからこそ楽しめるミュージカルを、この環境だからこそできる表現を研究しつつ、舞台の空気を目一杯吸い込みながら、誠心誠意演じたいと思います。

■森本 華(ロロ) 
少し着飾って、グッズを買って、美味しいものを食べて帰る、帰宅までの思い出づくりがないのがちょっと寂しいですが、家でご覧いただける醍醐味は何をしたってokということです!
裸でアイスクリームを食べたりしながら、今しかできない観劇体験を楽しんでもらえたら嬉しいです!

■三浦直之 
予定していた公演の延期や中止が続いていたので、無観客とはいえ劇場で作品をつくる機会をいただけのはとてもありがたいです。
演劇は劇場に観客が集まらなければ完成しません。だから、この上演は未完成の演劇なのかもしれません。
未完成の演劇ならではの余白を豊かにつくりたいとおもいます。 

■夏目知幸 
コロナ禍における演劇とバンドが立ち向かうべき課題は重なる部分が多いと感じています。こういったタイミングで一緒に仕事ができて光栄です。 
 

最後に主催の東宝から今回の企画についてのメッセージを紹介しよう。

TOHO MUSICAL LAB.上演について 

劇場で、演劇を上演する。 
そんな当たり前だと思っていたことが突如に当たり前でなくなり、早くも数ヶ月が経とうとしております。 未だ劇場の灯は消えたままです。またお客様に劇場で演劇を楽しんでいただきたい。
この企画では劇場で演劇を見ることの楽しみを思い出していただけるような、そして初めて演劇をご覧いただくお客様にも楽しんでいただけるような前向きな“実験”をたくさんしていきたいと思っています。
こんな時だからこそ、演劇で遊んでみたい。劇場で遊んでみたい。自由な発想で現実を”枷”としてではなく逆手に取りたい。
最初の作品はご自宅のパソコンやテレビにお届けします。お客様に“劇場で起こる演劇”をお楽しみいただきたい。
劇場で楽しむ演劇をぜひ思い出していただきたい。 そしてそう遠くない日に、劇場に足をお運びいただきたい。
それがこの TOHO MUSICAL LAB.にこめた願いです。

取材・文=こむらさき