◇第91期棋聖戦5番勝負第2局(2020年6月28日 東京・将棋会館)

 将棋好きで知られるプロ野球阪神の矢野燿大監督(51)が、28日に東京都渋谷区の将棋会館で第91期棋聖戦5番勝負第2局に臨む藤井聡太七段(17)にエールを送った。先勝した藤井とは今年の本紙元日付紙面で対談。あと2勝で樹立するタイトル獲得最年少記録(屋敷伸之九段の18歳6カ月14日)の攻略法にも言及した。

 5番勝負はポストシーズンの短期決戦に通じる。阪神での選手時代、2003年と05年に日本シリーズに出場。監督としては前年最下位から就任1年目で3位へ導いた昨年、2位DeNAとのCSファーストステージを2勝1敗で制した。

 先勝の価値に同意しつつ「3つ勝つことは大事だけど、それも断ち切っていると思う」と藤井の心境を推察。「“自分の将棋をミスなく、どんどん攻める”というのが1勝につながったと思う。目の前にシンプルに集中すべきだし、実際にされている感じ。それが3回できれば棋聖が獲れる」。阪神はスタートダッシュにつまずき最下位に沈むが、野球の1球と同様、将棋の次の一手を追求したその先に栄冠が待つと激励した。

 藤井は今回、タイトル戦出場の最年少記録17歳10カ月24日を4日更新した。さらに獲得すれば、同じく屋敷が持つ記録を7月21日の第5局までもつれ込んだとしても半年以上、18歳0カ月2日で更新する。「表面に見えない気持ちの強さ、準備、思いがあればこそ」と分析し「確率が小さい部分を乗り越えてやってくるのがスーパースターの条件。だから注目される」と読み解いた。

 藤井との対談は昨年12月。その直前、挑戦者決定リーグ最終局に勝てば挑戦権獲得だった広瀬章人八段戦を落とし、王将戦での記録更新はならなかった。最年少挑戦権の記録更新の可能性があったのは今回の棋聖戦のみだった。

 ラストチャンスをつかんだのは勝負強さの証。思えば14歳2カ月でのプロ入りもそうだった。奨励会三段リーグは年2回のため参入1期目、16年10月1日付の昇段を逃せば加藤一二三・九段が持つ14歳7カ月は更新できず史上最年少棋士の称号もなかった。今回王位戦とのダブルタイトル挑戦が決まったこともあり「今は“自分のために”とおっしゃるかもしれないけれど、多分、後々はそうはならない」と推測。「藤井さんに憧れる子供、将棋界全体の盛り上がりを考えるならスケールがデカい(人になっていく)」。17歳の戦いを見守っている。

 《王将戦観戦に前向き》人気球団の監督は多忙な日々を送る。まとまったオフが取れるのは例年12月から1月ぐらい。「勝手に応援させてもらっている」と語る矢野監督は、年明けからの第70期王将戦7番勝負(本社主催)の観戦についても「ぜひぜひ、いい経験ですし」と前向き。計7人で構成する挑戦者決定リーグ残留を決めている藤井にとっては棋聖戦、王位戦に続く挑戦が懸かっている。

 ▽棋聖戦第1局VTR 8日、東京・将棋会館で渡辺明棋聖(36)=王将、棋王の3冠=と対局した。戦型は矢倉。終盤に渡辺が16回連続王手の大逆襲を見せるが、自王の不詰みを見切っていた藤井が逆王手で渡辺を157手の投了へ追い込んだ。