野球の音を聴け 今宮健太の守備は音速を超える

野球の音を聴け 今宮健太の守備は音速を超える

 【君島圭介のスポーツと人間】今、遊撃手は群雄割拠する状況だ。ここ数年で最も人材が育ったポジションだろう。後世に語り継がれる名手になる可能性を秘めた、ハイレベルな争い。その先陣を切ったのが、驚異の守備範囲を誇るソフトバンク・今宮健太だ。

 守備に就いているとき、今宮に音は聞こえないという。

 「音を意識したことはない。バットの芯を外しても詰まった音は聞こえない。打球は目で見て判断している」

 正確にいえば、音が聞こえてからでは遅いのだ。打席から遊撃の守備位置までおよそ40メートル。音は1秒で約340メートル伝わるというから、バットが発した音が遊撃手の耳に届くまで約0・12秒かかる。0・12秒あれば1メートルは移動できる。内野手の1メートルはとてつもない距離だ。だから今宮は音より速く反応する。

 今宮は言う。「小さいときから、横や後ろへの動きが人より優れているのは感じていた。中学、高校と進むにつれて守備範囲というものに興味を持って、極めてみたいと思うようになった」。大分・明豊では投手として全国に名前を広めたが、根っこには遊撃手としての自分がいた。

 「一、三塁は動いてはいけない守備もある。二塁と遊撃は動いていいポジションだと思っている」

 守備範囲を極めてみたい、という野心を秘める今宮にとって遊撃手というポジションは天職だった。13年からは4年連続でゴールデングラブ賞にも輝いた。

 早熟の26歳は、8年目で追われる立場になった。楽天・茂木栄五郎、中日・京田陽太ら可能性を秘め、今宮より若い遊撃手がそれぞれのチームでレギュラーを獲得した。その中で、今宮には気になる選手がいる。「源田は同じ大分出身だし、ずっと興味のある選手だった」。西武の源田壮亮だ。

 「あれだけプレーできるとは想像していなかった。僕よりはるかにうまい。現時点で僕は源田に負けている。だから、どんどんうまくなりたい」

 8月2日現在、今宮の捕殺数257に対し、源田は327と上回る。守備機会が今宮の374に対し、源田は488。出場試合数は今宮の方が1試合多い。投手の球質差もあるが、数字だけなら源田の方が多くの打球を処理している。だが、失策数は今宮の4に対し、源田は14。守備率は今宮に軍配が上がる。

 オリックスに安達了一という名手がいる。同じソフトバンクには、ゴロ捕球の天才・高田知季もいるが、やはり現時点でリーグ最高の遊撃手は今宮だろう。当代きっての名遊撃手はどれほど凄いのか。球場観戦の際に打球音と守備の動きだしを比べてみれば分かる。きっと、今宮の守備は音より速いはずだ。 (専門委員)

 ◆君島 圭介(きみしま・けいすけ)1968年6月29日、福島県生まれ。東京五輪男子マラソン銅メダリストの円谷幸吉は高校の大先輩。学生時代からスポーツ紙で原稿運びのアルバイトを始め、スポーツ報道との関わりは四半世紀を超える。現在はプロ野球遊軍記者。サッカー、ボクシング、マリンスポーツなど広い取材経験が宝。

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