◇センバツあの日の記憶〜高校野球ファンに贈る〜

 名将同士の意地を懸けた対決はサヨナラ決着となった。2014年の第86回大会。甲子園通算63勝(当時)を誇る高嶋仁監督率いる智弁和歌山と、通算42勝(同)の馬淵史郎監督率いる明徳義塾が初戦で激突した。引き分け再試合直前の15回1死満塁、智弁和歌山・東妻勇輔(現ロッテ)の暴投で明徳義塾が勝利を収めたが、12回の攻防が明暗を分けた。

 明徳義塾が1点を勝ち越された直後の1死一、三塁。カウント2―1から、1番・尾崎湧斗が同点スクイズを成功させた。バント練習は全てスクイズを想定。1ボールから真ん中の絶好球を見逃すことで、智弁和歌山バッテリーの警戒心を緩めさせた。さらに「高嶋先生は“同点でも仕方がない”雰囲気だった」と馬淵監督は振り返る。尾崎の準備を信じ、勝負手を打った。02年夏の甲子園決勝に続き馬淵監督に敗れた高嶋監督は「いつかは借りを返さないと」と雪辱を誓った。

 15回188球を投げ抜いた明徳義塾・岸潤一郎(現西武外野手)は3年連続の甲子園勝利となった。「1週間で1人の投手が500球以内」の球数制限ルールが導入された現在なら、展開は違っていた。

 ☆第86回大会(14年) 履正社・溝田が都小山台戦で9回1死までノーヒット投球。智弁学園・岡本(現巨人)は三重との1回戦で史上19人目の1試合2本塁打をマークした。27年ぶり出場の池田は海南に9回逆転サヨナラ勝ち。92年夏以来22年ぶりに白星を挙げた。決勝は龍谷大平安と履正社の京阪対決。高橋(現ヤクルト)ら4投手の継投で6―2と逃げ切った龍谷大平安がセンバツ初優勝。出場38度目での頂点は天理(16度目=97年)を大幅に上回るスロー記録となった。