無観客試合は、音を楽しめばいいらしい。確かにベンチからの声の大きさには驚かされるし、打球音を聞くのも悪くはない。

 静かな試合は、投手にも音があることを教えてくれる。広島・一岡竜司投手(29)が投球の度にあげる「ウッ!」などのうなり声は、普段かき消されるはずの球場に響いている。「試合になったら力が入るので(ブルペンよりも)声は出ているかもしれない」。

 スタイルは、新人時代から変わらない。「(巨人時代の)静かなジャイアンツ球場からやっているので、声が響いても投げにくさはない。当時から打者に聞いて“(声の大きさの違いで)球種は分からないよ”と確認しているので、癖とかも大丈夫」。無観客のおかげで、声にまで注意を払う繊細さにたどり着いた。

 剛腕が思い切り声を上げて腕を振る姿は想像できるが、切れ重視の直球で勝負するタイプだから少し意外である。「声が出ること自体は悪いことではない」と前置きした上で、力感への反省があった。「(11日の)ハマスタで150キロ出てから勘違いした。150キロ出ても質が悪かったな…と。142、3キロでも質の高い方がいい」。11日DeNA戦後の登板となった14日のソフトバンク戦では1回2失点。屋内のペイペイドームに響いていたうなり声は、普段よりも、力みの分だけ大きくなっていたかもしれない。

 一岡自身も無観客試合に気付くことがあった。「移籍してから満員のマツダを経験してきた。やっぱり気持ちの高ぶりをシーズン中と一緒にはできない難しさはある。一つ一つの拍手が僕の力になっていたのだな…と思った」。いまは、静寂ゆえの発見に我慢するしかない。(記者コラム・河合 洋介)